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これまでのあらすじ 第五章編

第百二十一話で、何とか第五章の終わりを迎える事が出来ました。

これまでの話を再確認したい方などのために、

五章のあらすじを大まかにまとめました。


まだ読んでくださった事のない方も、

ぜひ、この機会にご一読下さいませ。

魔道議会より派遣された二人の魔道師。

セリッタとアミルが、シュバイクの仲間へと加わる事となった。

三人はハドゥン族を味方へと引き入れるべく、

山奥の集落へと目指してラミナント城を出発した。


その頃。

城を脱出した第二王子のナセテムと第四王子のデュオは、

隣国へと繋がる山道を進んでいた。

その途中には幾つもの町や村が点在しており、

木こりの町と言われるアンタルトンへ辿り着いていたのだ。

本来なら更に東へと山道を進み、国境近くの村で味方と合流する手筈だったのである。

しかし町は一時的に封鎖され、追っ手が迫っていた。


ナセテムはアンタルトンの町で、

シュバイクの放った追撃部隊と一戦を交える覚悟をする。


町へと到着した追撃部隊の二百名は、

ナセテムとデュオが雇い入れた者達の待ち伏せ攻撃を受けた。

そして守護騎士であるヴァルヴァロス・ヴァルダートが奮戦し、

スウィフランドの援軍が到着するまでの時間稼ぎに成功したのである。


空を舞う邪悪な影が突如として現れると、次々と木造の家々を焼き払っていった。

それは水中都市国家スウィフランドの元首ガルバゼン・ハイドラが送り出した、

最強の生物を従える部隊であったのだ。

そしてその背からは禍々しい魔力ハールを放つ暗黒騎士達が、

大地向けて次々に飛び降りていったのである。


業火に包まれていく町。

逃げ惑う人々を容赦なく、竜の背から降りてきた暗黒騎士が斬り殺していく。


町の広場では迎えを待つ二人の王子と、

守護騎士であるコーエルに数人の部下が待機していた。

彼らの前に降り立ったのは、

十三騎士団を取りまとめるセルシディオン・オーリュターブである。


オーリュターブが現れた事で、ナセテム遂に本性を露にしたのである。

それは脱出できる状況となった今は、

城から付き従ってきた騎士達を全員この場で始末すると言うものであった。

これに激怒したのは、デュオの守護騎士であるコーエルである。


コーエルは剣を抜き去りナセテムへと向かって斬りかかっていったが、

逆に殺されてしまった。

配下である騎士達は、目にも留まらぬ速さで動いたオーリュターブによって、

始末されたのである。


守護騎士のヴァルヴァロス・ヴァルダートは、

追撃部隊の隊長であるバウザナックスと一戦を交えた後、

広場へと戻ってきた。

だがそこで見たものは、無残な姿で大地に転がる味方の姿だったのである。


ナセテムはオーリュターブへ、自分の守護騎士を殺するようにと命令を下した。

ヴァルヴァロスは全力で抵抗するが、

最後は相手の剣によって命を落としてしまったのである。


こうして燃え盛る業火に包まれた町から、ナセテムとデュオを乗せた黒竜は飛び立った。

広場へと辿り着いたバウザナックスは、

先ほどまで一戦を交えていたヴァルヴァロスの無残な姿を発見する。

友であった男のの魂を、死者の楽園へと送り出したのである。


遅れて城を脱出した第一王子のレンデスと第二王子のサイリス達は、

何とか東の山のふもとへと辿り着いていた。

グレフォード家の血を引くこの二人は、

遠い親戚に当たるディキッシュ家の領地へと逃げ込もうとしていたのである。

しかしこの二人にも、シュバイクの放った追撃部隊の魔の手が迫っていた。


使役魔法で周囲を偵察させた守護騎士のハギャン・オルガナウスは、

このままでは追いつかれてしまうと確信する。

そのため自身が自ら足止め役となり、二人の王子を逃がす事にしたのだ。


ハギャンは獣人族の末裔であった。

二メートル近く巨体も、人間離れした体つきにも理由があったのだ。

魔力を高めて真の姿を解放したハギャンは、

追っ手へと向かって駆け出した。

生きて戻る事は出来ないと解かった上で、自らが犠牲になる決断をしたのである。


東の森では、二百名の追撃部隊が馬を駆けさせていた。

しかし彼らを闇夜の中から襲ったのは、

巨大な獣となったハギャンである。

次々と兵士や騎士を噛殺し、隊列を崩壊させていった。

だが相手もやられるがままでは無かったのである。

反撃へと転じると、獣の体へと剣を突き刺していった。


追撃部隊を壊滅状態に追いやった獣は、

体中に無数の剣を突きたてられたまま血だらけで夜の闇の中へと消えていった。


ハドゥン族を仲間にするために、平原を進んでいたシュバイク達は、

城下町から追いかけてくる者の気配に気がついた。

周囲を警戒し、臨戦態勢をとったシュバイク。

その前へとやって来たのは、

城で貴族達の相手をしているはずのウィリシスであった。


ウィリシスが言うには、

事情を聞いたレリアンが貴族達の説得を引継いでくれたのだと言う。

しかしそれを聞いたシュバイクは、怒りを露にした。

セリッタとラミルの援護もあり、何とかウィリシスが加わり、

四人でハドゥン族の集落へと向かう事になる。

だがこの一件を気に、シュバイクとウィリシスの関係は悪化し始めるのだった。


朝日が昇った頃。

焼け落ちた廃墟となった町で、異国からの来訪者達が足を止めていた。

それは島国アンリカリウスから長い道のりを経てやってきた、

ロッソ・零・リューと二人の仲間である。

彼らが町の中へと入ると、生存者を救うべく町中を捜索した。

そこでとある家屋の下敷きになっていた男を、

救出したのである。それが鉱石商人のアウルス・ベクトゥムだった。


平原を抜け、クレムナント王国の南になる森へと辿り着いた一行。

馬に水を与えるために小川の側で休憩を取る事にした。

しかし、ここでもシュバイクとウィリシスは揉める事となる。

だがそのいさかいをとめたのは、魔道議会から派遣された導師のセリッタだった。

根っからの明るい気質と大雑把な性格が幸いしたのか、

無駄な争いをやめて協力し合う姿勢を互いに見せた。


休憩していると、シュバイクは木々の隙間で、何やら草が動いたのに気づいた。

よく目を凝らすと、そこから現れ出たのは白い毛の小鹿だったのである。

不思議な雰囲気に包まれる鹿を見ていると、

頭の中に響く声が聞こえた。

その声につられるまま、小鹿を追いかける。

すると小さな湖に囲まれる大樹へと、辿り着いたのあった。


そこで小鹿は足を止めると、人間の姿へと変わっていった。

それは美しい長い金髪の少女だった。

人間ではない。シェルフ族の少女である。

名前をミレーナ・アイ・リューネと名乗った少女は、

自分が精霊国の最後の王だとシュバイクに告げる。


それがにわかには信じられなかったシュバイクは、

何故、そのような者がクレムナント王国の領地に居るのかと問いかけた。

するとリューネは言った。

ガウル・アヴァン・ハルムートの手引きによって、

逃げてきたのだと、と。


それは自分が正しく殺した者の名前だったのである。

水中都市国家スウィフランドに攻められた精霊国は、

密かに裏でクレムナント王国へと助けを求めていたのである。

だがスウィフランドの軍事力の巨大さを知っていたハルムートは、

リューネの逃亡を助けて、かくまっていたのだ。


そしてそのリューネは、シュバイクと同じ、未来を視て来た者の一人だったのである。

何度も繰り返し力を使用してやっとの思いで、

シュバイクと出会う未来を切り開いたのだと言う。


だがそんな少女をシュバイクは何処まで信用してよいのか、

解からなかったのである。

するとリューネは、シュバイクの抱えている問題を解決するのに、

手を貸すと言い出した。

その結果によって、自分と手を組むのかを決めればいいと、

そう言ったのである。

リューネは見た目は十代前半の女の子であったが、

実際の年齢は遥かにシュバイクよりも年上であった。

シェルフ族は人間の寿命よりも、遥かに長生きするが故に、

肉体の歳のとりかたも遅いのだ。


こうしてシュバイクは、ハドゥン族を仲間に引き入れるのに、

シェルフ族の少女の手を借りる事となる。


その頃。

小川で休憩していたウィリシス達は、消えたシュバイクを探して、

森の奥へと足を進めていた。

だがその途中で、ハドゥン族の強襲に合い、三人共々捕らえられてしまったのである。


ハドゥン族の集落は、森に囲まれた谷間にある。

大きな川が流れており、その川を挟むように家々が建っているのだ。

家と言っても筒状の変わった形の家屋で、地面から伸びているようなものである。


集落の広場へと連れてこられた三人は、

族長と対面した。

ハドゥン族と敵対するクレムナント王国の民だと知られると、

神への生贄いけにえにすると言い出したのだ。


しかしこれにウィリシスは全力で抵抗した。

後ろでに縄で手を縛られた状態で、目の前の男へと体当たりしたのである。

ハドゥン族の族長ともみ合いになったウィリシスは、

何とか武器を奪い取り、縄を解くことに成功した。

この光景を、広場を取り囲むように並んでいたハドゥン族達は歓声を上げながら見守っていた。

族長に加勢する事無く、

雄たけびを上げながら二人をあおっているようだった。


ウィリシスは奪い取った斧で、相手を殺した。

間一髪の所だったのだ。やらなくては自分がやられていた。

誰が見てもそう思えるほどの戦いだった。

しかしこの光景に、セリッタの弟子であるラミルは恐怖を抱いた。

ウィリスが縄を解こうとしても、近寄る事さえ出来ないほどに怯えてしまったのである。


族長が死ぬと、ハドゥン族の中から一人の女が姿を現した。

次は自分の番だと言いたげに、武器を構えたのである。

ウィリシスは仕方なく斧を握り締めると、

襲い掛かってくる女と交戦状態に入った。

相手は魔力ハールの使い手であった。

女の武器は何かしらの魔鉱石で出来ており、

唯の鉄の斧で対抗するウィリシスは次第に押されていったのである。


二人が戦っていると、突如として広場を影が覆いつくした。

ふと見上げると、そこには樹木の巨人が居たのである。

そして地面からツタが這い出たと思うと、

広場を囲むハドゥン族達を次々に絡め取っていった。


ウィリシスへと振り下ろされた刃を止めたのは、地面から出てきたツタである。

ハドゥン族の女は雁字搦がんじがらめになり、

身動きが取れなくなっていた。


そこに姿を現したのは、巨人から降りてきたシュバイクと一人の少女である。

リューネが仲介役となり、シュバイクはハドゥン族の女へと己の気持ちを伝えた。

同盟を結ぶために、過去の過ちを認めて頭を下げたのである。

そんなシュバイクに、女はモルナと名乗った。

モルナはシュバイクに協力する条件として、戦いに勝利したならば、

奪われた土地を返せと言ってきたのである。

その奪われた土地というのは、ラミナント城が建っている平原そのものであった。


これにシュバイクは同意する。

だが、ウィリシスは黙っていなかった。

城が建造されている平原を渡すのは、

幾らなんでも簡単に一人で決めてよい事ではないと言ったのである。

だが本心はまた別の所にあった。

結局また二人は衝突した後に、シュバイクが意見を突き通す事となった。

そしてハドゥン族を味方につけた事で、

シュバイクはリューネとも同盟を結ぶ事となったのである。


シュバイクとリューネが血の契約を結ぶと、突然、大きな光に二人の体は包まれた。

そしてその意識は、見たことも無いような異空間へと引き込まれたのである。


その異空間は、数え切れないほどの書籍が壁に並んでいた。

書庫のようであった。

そしてシュバイクとリューネの前に、一人の女性が現れたのである。

自らを書庫の管理人で、名前をハルと名乗ったのだ。

その女の顔をリューネが見たとき、思いもよらぬ事を口にした。

それはクレムナント王国の礎を築いた大魔道師のハル・エルドワールなのではないか、

と言う事である。

リューネの問いに、ハルは静かに頷いた。


エルドワールが残した遺産。魔法の書庫。

彼女の記憶の断片が、今のハルの姿を形作っているのだと言う。

そしてシュバイクとリューネは、互いに未来を視て来た特別な者。

その二人が血の契約を交わした事で、よからぬ拒絶反応が出たのだと教えてくれたのである。

そこでハルは、それぞれの肉体に入りこんだ互いの記憶を切り分ける事を提案したきた。

他者の記憶が入り込んだ状態でいると、何が起こるか解からないと言うのだ。


リューネはハルの提案に従い、

シュバイクの記憶と自分の記憶を切り分けるのを了承した。

ハルはまっさらなページが続く本に、一度リューネの記憶を写しこみ、

そこから必要な記憶を再度取り出す手法をとった。

リューネは一度記憶を失ったが、再び自分の記憶のみを脳内へと刻み込んだ。


だがシュバイクは、何か異様までの違和感を感じ取っていた。

その女が本当にハル・エルドワールの記憶の断片なのか。

それさえも確かな証拠もない状況で、

記憶を抜き出すなど大それた事をするのには戸惑いがあったのだ。

そしてひとつ、気がかりな事を口にした。


シュバイクは未来でウィリシスに、自分の出生の秘密を聞いてきた。

そこでウィリシスは確かに口にしたのだ。

とある魔道書を読むことで、全てを知ったのだと。

もしかしたら、ウィリシスは一度、この場所へと訪れたのかもしれない。

そう直感的に感じたのだ。

その事実を告げると、ハルと名乗った女は豹変した。


シュバイクとリューネへと、突如として襲いかかってきたのである。

蒼空の翼を背に生やして、何とか脱出を図るが。

リューネを抱えたまま飛び上がったシュバイクは、

出口を探してひたすらに上昇し続けた。

すると、頭の中にセリッタの声が響いてきたのである。

彼女に言われるがまま、光の差す方向へと飛んでいく。

だが背後には、ハルが放った魔法の鎖と刃が迫っていた。


セリッタは異空間へと、自分の魔法を放った。

白い白鳥の群がシュバイク達を覆いこみ、

ハルの攻撃を防いでくれたのである。

こうして何とか脱出したシュバイクだったが、

リューネはハルの魔法を受けて意識を失い、

セリッタもまたハルの攻撃から二人を守るための魔法で、

多くの力を消耗して倒れてしまっていた。

そしてラミルは、ウィリシスが目の前で人を殺すのを目撃し、

あまりの悲惨さに精神の殻の中にこもってしまったのだ。


城へと戻るには、あまりにも不運な状況が続いたため、

数日をハドゥン族の集落で過ごす事にした。

彼らの本当の集落は、円柱状の建物から続く地下にあったのである。


広大な地下の敷地では、家畜を飼い、畑を耕している人々がいた。

彼らはシュバイク達を奇異な目で見てきた。


地下の奥に建てられた一件の家屋。

その中へと入ると、セリッタとリューネ、そしてラミルを横に寝かせた。

言葉の通じないモルナは、シュバイクへ一冊の本を手渡してきた。

それはクレムナント王国で有名な童話作家マイル・アーヴィンが書いた、

一冊の本であった。

その本を読んだシュバイクは、建国の始祖であるドゥーク・ラミナントと、

大魔道師ハル・エルドワールが犯した大罪を知る事となる。


本には、二人がハドゥン族の住んでいた集落を仲間と共に襲い、

強引に奪い取ったと書いてあったのだ。

そしてドゥークは、天地創生の魔法と呼ばれる巨大な力を放つ呪文を、

当時のハドゥン族の王から引き出したと言うものであった。

そして生き残ったハドゥン族は彼らの奴隷にされ、

死ぬまで働かされたのだと言う。

命からがら逃げた者達は、森の奥に住み着き、

モルナ達の祖先となったのだ。


この一件があったからこそ、

クレムナント王国とハドゥン族を含める山間部の部族達は、

五百年以上の争い続けてきたのである。


ウィリシスは童話の話として、まったく信じていなかった。

だがシュバイクには信じるにたる根拠があった。

それはガウル・アヴァン・ハルムートが死ぬ前に、

言い残した言葉を覚えていたからである。

「この国にはまだ大きな秘密が隠されている。それは初代国王ドゥーク・ラミナントと大魔道師のハル・エルドワールが犯した大罪に関するものだ」と。


これを聞いたウィリシスは、怒りを露にした。

全ての真実を包み隠さず話してくれていたと思ったのは、

間違いだったのである。

だがシュバイクは、必死に謝った。そして何とか二人は、元の関係に戻ったかのように思えた。

しかしそれは、ウィリシスが別の事に意識を向けていたからにしか過ぎなかったのである。

何者かから、ある密命を受けていたのかは定かではないが、

モルナを殺そうと企んでいた。

守護騎士である以前に、クレムナント王国の王国騎士であるウィリシスには、

どうしても守らなければならない事があったのだ。

それはシュバイクの守りたいものとは、まったく別のものであった。

だが結局、殺意はさやの中に収めたのである。

何がウィリシスを止めたかは解からないが、シュバイクを思っての事だったのかも知れない。


こうしてシュバイク達は、数日の間をハドゥン族の集落で過ごす事となった。

その間に王宮では得られない体験をしたのである。

ハドゥン族の人々と接する事で、

シュバイクは本当の幸せとは何なのかを考えさせられていったのだ。


ハドゥン族の集落へと身を寄せた日の事である。

クレムナント王国から北東に位置する国に、二人の王子が到着した。

黒き竜の背から降りると、十三騎士団の団長であるオーリュターブは、

元首ガルバゼン・ハイドラの元へと二人を案内するために歩きだした。


巨大な湖の中に城を構える水中都市国家スウィフランドは、

恐るべき計画をいくつも抱えていた。その一つに、人間に竜の力を与えるという、

竜人計画というものがあった。

第二王子のナセテムと第四王子のデュオがクレムナント王国から乗ってきた翼竜は、

人間だったのである。

二人が格納庫を後にすると、竜は人間へと姿を変えていった。

だがその内の一頭が、あろうことか暴れだしたのである。


ハイドラの元へと案内するために、第七層の通路を歩いていた所で部下に呼び止められた。

事の始末をつけるために、ナセテムとデュオには真実を告げぬまま、

オーリュターブは来た道を戻っていく。


ナセテムとデュオが国家元首の執務室へと辿り着くと、

祖父であるハイドラは大いに歓迎した。

そこで二人は竜の正体を知ったのである。

彼らは強力な軍隊を誇る水中都市国家でさえも、

クレムナント王国の城を落とせない理由を知った。

そこで、ハイドラはある提案をする。

二人がシュバイクの元へと下る事で、味方を上手く城内へ引き入れる方法を考え出したのだ。

城は魔道議会の導師達が魔法によって、強固な守りを築いている。

ならば一層の事、中から崩してはどうかというのもなのだ。

これに活路を見出したナセテムは、ハイドラの提案を呑む事にした。


ナセテムとデュオが、ハイドラの話を聞いている頃。

オーリュターブは格納庫で暴れる一頭のアグナマイタの相手をしていた。

アグナマイタとは、自らの肉体と命を差し出した殉教者の事であった。

彼らは肉体に竜の血を取り込んだが、力の大きなに耐え切れずに転化に失敗したのだ。

転化とは、人間から竜へ、そして竜から人間へと戻る過程の事である。

化け物と化した一人の男は、兵士達を次から次へと殺していった。

オーリュターブの部下であるレインフィースは、傷ついた兵士の治療に当たっている最中、

攻撃に巻き込まれて負傷してしまったのである。

部下の報告によって戻ってきたオーリュターブは、圧倒的な力で化け物を制圧した。

後始末をするべく部下に指示を出し、雑務に追われていく。

そんな男がハイドラの元へと報告にきたのは、その日の深夜だった。


オーリュターブの報告は、

全ての計画の基盤となる竜人計画が良い結果を出せてはいないと言うものだった。

それにハイドラは落胆した様子を見せはしなかったが、

僅かな焦りはあったのである。

ハイドラはオーリュターブに新たな任務を与えた。

それはクレムナント王国へと戻る事になったナセテムとデュオに着いていき、

自らが目的を果たして来いと言うのだ。

「ゼスラムを確保しろ」謎の言葉を発するハイドラに、

オーリュターブは十三騎士団団長としての最後の任務として受ける、と了承した。

目的を達した後は、リディオ・ウェイカーとしての人生を歩むと口にしたのである。

それをハイドラもまた、了承した。


こうして様々な思惑が重なり合い、交差する中、

二人の王子は火種を抱えたまたクレムナント王国へと戻って行ったのである。

六章からは遂に、玉座を巡る戦が始まります。


シュバイクとウィリシスの関係は、このまま平穏に進むのか?

王国に隠された真の秘密とは?ゼスラムとは?オーリュターブの狙いとは?レンデスとサイリスの動向は?

ナセテムの野望。デュオの苦しみ。そしてハイドラの思惑。

複雑に絡み合う思いと想い。唯一無二の未来を手に入れるのは一体誰なのか!?

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