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月と太陽  作者: 遠奈 都
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ここで、上級生チームも1回目の守備のタイムを使い、アウトカウント優先のゲッツー体制の守備を選択。打線が陽太を捉えかけていることを考えれば1点はやっても、最小失点でということなのだろう。

一方の新入生チームのベンチからは、スクイズではなく、ヒッティングのサインが出て、3塁ランナーの俺にはゴロゴーのサインが出る。

サインが出揃って迎える初球。カットボールをバッターの松本が見送って、ワンストライク。

2球目はカーブが外れてボール。

3球目。松本がアウトローのストレートを狙い打つが、打球は前には飛ばずバックネットに突き刺さる。

これで1ボール2ストライクからの4球目は高めボール気味のストレート。これも松本がバットに当てるがフェアグラウンドには入らずファール。

グラウンドにいる全ての人間が固唾を飲んで見守る中での5球目。石川先輩のフィニッシュボールであるフォークが来る。

松本のバットは空を切る。だが、


チッ


ボールは飯塚先輩のミットからこぼれている。


「ファール」


大きく両手を広げる主審に新入生チームのベンチは一同胸をなでおろす。

そして6球目。


カキン


松本の打球はバッターボックスとマウンドの間でワンバウンドする。

それを見て俺はホームに突っ込む。

石川先輩が伸ばしたグローブの先を掠めて打球はセカンドへと転がっていく。ボールは4-6-3と渡ってダブルプレー。しかし、その間に3塁ランナーの俺はホームへと生還し、新入生チームは大望の先制点をあげる事に成功した。


「夏月、ナイスラン。」


ベンチの中から拳を突き出す陽太。その陽太と拳を合わせて俺はベンチへと入っていった。

バントヒットに、ベースにボールが当たったラッキー安打。その後をセカンドゴロ、ゲッツー、三振と抑えているだけに石川先輩の投球内容は悪いものではない。それでも点が入る時は入るのだから野球は本当に難しい。


7回の表、上級生チームの攻撃を前に円陣を組む先輩方を見て、俺達も円陣を組む。水香が言う。


「高校野球の鉄則は取られたら取り返す、よ。逆に言えば取った後にすぐ取り返されなければ勝てるって事。この回は絶対に守るわよ。」


水香は勝敗を決めるものが何なのかをよく理解している。7回の表は打順は7番から。下位打線から始まるこの回よりもクリーンナップに回る次の回の方が勝負所と見る見方もあるだろう。だが、そうではない。俺自身、点を取った後の守りで失点し、有利だったはずの試合を逆転されてしまうチームを何度も見てきた。水香の顔は女子マネージャーというよりも勝負師のそれであった。

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