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「みんな、すごいわ。」
ベンチに帰るなり、水香はそう叫びナインを出迎える。
自然と俺達は水香を中心に円陣を組んで、次の攻撃に向けて気合いを入れる。
「ピンチの後にチャンスが来るのはよくある事。入ると思った点が入らなければ誰だってがっかりする気持ちはあるわ。先輩達が気落ちしているこの回が勝負よ。」
「おう。」
俺達は気合いを入れ直して6回裏の攻撃に臨んだ。
6回裏の攻撃。打順は9番の俺からだ。俺は今入れ直した気合いのままにマスコットバットを振り回して打席に向かった。俺が背を向けたベンチの中で陽太と水香が話す。
「影山君…」
そう言いかけた水香を陽太が制止するように言う。
「大丈夫。夏月はちゃんと分かってるよ。前の打席みたいに大振りせずに、塁に出ることを考えろって言いたいんでしょ。」
「う、うん。」
少し不安げな表情で陽太を見つめる水香。
「夏月は元々クレバーなプレーヤーなんだ。さっきスクイズを見破ったのも夏月。特に夏月は相手の作戦を見抜くのが得意でね。中学時代は何度も助けられたよ。」
「影山君にそんな力があったなんて。」