表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
月と太陽  作者: 遠奈 都
10/24

10

ホームベース前に整列した1年生チームのメンバーに向けて、上級生チームのキャプテン佐々木先輩が挨拶の言葉を述べる。


「部活見学期間の1週間を終えて、新入部員歓迎の紅白戦を行う今日、多くの1年生がこの場にいてくれることを大変嬉しく思う。これから先は苦しい練習もあると思う。厳しい事を言う事もあると思う。だが、それは明日からの話だ。今日は野球の原点であるスポーツの楽しさを存分に味わってもらいたい。今日だけは上級生も下級生も関係なく試合を楽しみましょう。よろしくお願いします。」


「よろしくお願いします。」


両チーム挨拶をすると、後攻めの1年生チームのメンバーが守備位置へと散っていった。


1回の攻防。陽太の立ち上がりは完璧だった。1番の橋本先輩をショートゴロに打ち取ると2番3番を連続三振に仕留め、わずか10球で守りを終えた。

しかし、一方の石川先輩も安定した立ち上がりを見せる。初回からMAXに近い球速のストレートをコースにきっちりと投げ込まれては、1年生ではどうすることもできなかった。終わってみれば石川先輩も10球で3奪三振という最高の立ち上がりだった。

2回の表、上級生チームの攻撃は4番の櫻井先輩から。初球が外れて1ボールとなった2球目。教科書通りのセンター返しで櫻井先輩が1塁へと出る。苦手コースであのバッティングなのだから少しでも甘く入れば柵越えになるであろう事は容易に想像できた。

続く5番後藤先輩の打席。足元を気にする癖は…出ていないようだ。バッテリーも慎重に初球を外した2球目。初めて上級生チームのベンチからサインらしいサインが出る。この場面で考えられるのは、高校野球の定石、送りバントか、相手を下級生と思えばの積極策、エンドランといったところで、打者が5番で小技があまり得意ではないタイプということも加味すれば、それぞれの確率は4:6から3:7といたところか。

2球目、バッテリーはバントしにくい胸元のストレートを選択。投球と同時にランナーがスタートする。エンドランの方だ。後藤先輩がバットを振るが、打球は高々とライト方向ファールグラウンドへと上がり、これを1年生チーム唯一の野球未経験者朝倉ががっちりと抑える。結果としては、上級生チームはランナーを進めることができず新入生チームにとっては結果オーライとなった。

続く6番志藤先輩は一転して手堅く送りバント。これがきっちり決まってツーアウトランナー2塁。この試合初めて得点圏にランナーが進む。

石川先輩相手に大量得点は望めない。キャッチャーの西田からは外野前進の指示が出る。

7番、山崎先輩の打席は、長打を警戒し、丁寧にコースをついた結果、フォアボールでツーアウト1塁2塁となる。

しかし、続く8番の飯塚先輩をサードゴロに打ち取り、スリーアウト。新入生チームは、なんとかこの回も0点に凌ぐことができた。

2回の裏の新入生チームの攻撃は相変わらずの三者凡退。

続く3回の表、陽太はツーアウトからフォアボールのランナーを出すが、その後をきちんと抑えて新入生チームは無失点で守備を終える。

3回の裏、ここでも新入生チームはノーヒット。新入生のましてや下位打線では当然の結果であった。俺にもこの日初めての打席が回ってくるが、到底当たりはしないような大振りを3度続けて敢えなく三振。

スコアボードには6つの0が並ぶ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ