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勇者と魔王と姫様と! お試し版

作者: 卿夜

 大学時代の作品を試験的に投稿しているだけの作品です。

 この作品には前日談に当たる話が存在し、また話も途中で途切れています。


 これはあくまで試験的な投稿であり、正式に当作品を書くかどうかも未定です。

 それでも「よろしい、読んでやろう!」という気概に溢れた方は下へスクロールを、「冗談じゃねぇ、そんなもの読めるか!」という方はブラウザバックを推奨いたします。


 大したお持て成しはできませんが、ごゆっくりどうぞ。

 勇者による魔王の居城襲撃事件から早くも3ヶ月が過ぎた。ただこの事件、正しくは「魔王による勇者拉致事件&姫による勇者救出劇」だったりするがそれを知るのは事件の当事者たちだけであったりする。

 その勇者を救出したアインハッド王国の第1王女エリナ・C・アインハッドは今……。

「暑い……死ぬ……」

 夏バテに苦しんでいた。


 アインハッド王国は四方を陸に囲まれた内陸国であり、国土面積はイギリス程、魔法と科学技術がほどよく発展した中立国である。

 魔法と科学が両立していることに多くの方は頭を捻るだろう。なぜなら便利な魔法が存在する=機械などを使う必要がない=科学技術の発展が遅れる、簡単にせつめいするとこういうことだからだ。だがこの世界の魔法はそこまで万能ではなく、その多くが攻撃魔法などの戦争目的だからだ。もちろん一部には道路整備や治癒、マイナーではあるが占いといった魔法も存在する。

 ただ魔法は誰でも使えるわけではない、元から魔力を持っていた者、魔族の血が入っている者、ヒトを捨て魔法使いとなった者…魔法を使える者にはこの3パターンがある。特に3つ目は危険であり、自然界に存在する魔力を自分の身体の中へ半ば無理やり押し込める必要があるからだ。その魔力のコントロールを間違えると、急激に流れ込んだ魔力により身体が膨張、この時点で大半が絶命し、暴走した魔力が身体を破って破裂する。こういったことがあるため今では試す者はいない。数少ないの成功例は、首都郊外にポツンと存在する小屋に住む賢者アイレイ・クロスロンドのみである。ちなみに今回の話ではアイレイは出ませんので悪しからず。

「私の出番ないの!?」

 幻聴ですので御気になさらず。

 以上の様に、使用者が限られる魔法に頼るには人手が足りず、読者の世界のように蒸気機関が作られ、石油の発掘へと至った。

 さてそのアインハッド王国はただいま夏真っ盛り、いやむしろ猛暑真っ盛りだ。夏バテによる患者により各病院は満員状態であり、ニュースでは外出を控えるようにという連絡まであった。

 それは首都の王城でも変わりなく、王であるベルク・フォン・アインハッドもまた夏バテであった。彼の場合、出身が国の北部であり、気候が1年を通して比較的涼しかったことが原因である。そしてその血を受け継いでいるためかその娘であるエリナもまた自室で唸っていた。

「う~……」

 ベッドの上で下着姿という姫としてはどうかという格好で寝転がっている。汗でじわっと健康的な肌が濡れているが、その姿に色気は無い。幼少より格闘技に興味を持ち、それのための資料から自分にもできる努力をした結果、出るところが出ず女性らしいとは言いがたい体つきになった。彼女の名誉のために記述しておくが、筋肉ダルマというわけではなく痩せマッチョとでもいうレベルである。

 むしろ色気が無い主な理由は、その姿があまりにも豪快であることだろうか。

 エリナの部屋は本人が無理やり城に付け足した部屋であり、その設計・構造には多大な無理がかかっている。その1つが冷房の設置場所が無かったことだ。

 今までこのような猛暑になったことが無いため、扇風機で事足りると高をくくっていたことが今回のエリナの状態を作り出した。

「姫、さすがに服を着てください」

 そんな姫の姿に若干頭を抱えている茶髪の男、彼こそがこの国の勇者であり、また同時にエリナの専属執事兼専属コックのエリックである。前述の「魔王に拉致された」とある通り、彼はお世辞にも戦闘能力は高いとはいえない。ただ仮にも勇者であるため一応、それらしい力は備わっているがそれは後ほど。

「良いじゃないのぉ……暑いんだし……」

「宿題はどうするんです?」

 寝返りをうちながらエリナが答え、エリックはこの質問は無駄だと判断し、別の質問を投げかけた。

「う……」

 それに対しエリナはバツの悪い顔をした。なぜならその宿題を出した人物こそエリナに格闘技を教えたいわば師匠であり、過去にエリナの母ユリアのしつけ係もしていたベテランさんである。

 夏に入る前に「この宿題を夏が終わるまでにやっておくがヨロシ」と言われていたのをエリナは思い出していた。「もちろん終わってなかったらわかってるザァマスね?」という言葉も次いで脳裏をよぎった。

「う、海! 海に行ったらやるわよ」

 勢い良く起き上がったエリナはピコンッという擬音が付くような感じで人差し指を立てながら言った。

 この半ば、いや完全に小学生レベルの言い分を聞いたエリックは苦笑した。自らの能力で親を友達を亡くしてしまった彼を、またまた強引に引き取った時と今の表情は同じであった。

 もう何年仕えているか覚えていないけど、この人はいつまでも変わらないのだなぁ。そう思っていた。

 それはさておき、海に行くという選択肢は無い。というよりも存在しない。

 その理由は主に二つ。

 まず第1にアインハッド王国は内陸国であり、海に面した飛び地も持っていない。それなのに海軍という組織は書類の上では存在している(別に気にすることはない)。

 第2にこれが最も重要なのだが、かつて現国王ベルクが何を考えたか新婚旅行だ~と、国内が平定する直前に、とある観光国のリゾート地に、妊娠した妻を連れて行ったことだ。もちろん行っただけなら問題は無かったのだが、行く先々でありえない騒動を引き起こしたことが理由となっている。詳しいことは公式記録にも載っていないため定かではないが、曰く2メートルほどのサメと海中で格闘し体中傷だらけで海から現れ、砂浜でそのサメを丸焼きにした。曰く妻との新婚旅行の記念にと、大量の花火を用意していたのだが、誤って暴発し、ホテルの一区画が消し飛んだなどなど……噂は絶えない。またそれらの事件が各国のリゾート地に人伝で伝わったため、ほぼ全ての観光地に『アインハッド王家立ち入り禁止、立ち入った際武力行使も止むを得ない』という様な警告文が複数できあがったのだ。それに対してアインハッドの当時の文官を束ねる者はそれらの警告を受け入れ、賠償金等を払うという行動をとった。故に、無理なのだ。


 閑話休題。


「何よその表情はーー! 私は本気よ!」

 それはさておき、エリナ姫。その苦笑をどう勘違いしたのかはわからないが、それが原因でエリナはその場でジタバタと暴れだした。いわゆる駄々っ子モードである。

 こうなるとエリナ姫はテコでも動かないことを承知の上で、エリックはそれをなだめようとした時だった。

 いきなり窓が開きそこから突風が吹き込んできた。

「うわ!」

「気持ちいい風ねぇ~……」

 それぞれ異なる反応を見せる。

 特にエリナ姫は下着がポロリしかけているのにも気にかけない様子。見られても減らない体つきではあるが、仮にも女性なのだから恥じらいをもつべきではないだろうか……。

 風が止むと同時に、その場に静かな着地音が発生した。

「お久しぶりです、エリナ様、エリック様」

 エリックとはまた異なった黒主体の執事服に身を包む眼鏡の男性。

 彼の名はシド、春先において起こった勇者拉致事件の実行犯であり、魔王の側近。

「お久しぶりです」

 それをさも普通のことのようにエリックが応答する。それというのも勇者拉致事件において、拉致した魔王と救出に行った姫が意気投合、以来こうしてシドが直接赴くのはもはやいつものことである。

「どうかしたのですか、お茶会の連絡は来てませんが?」

 シドが入ってきたときの風でご機嫌モードになったエリナに服を着せながらエリックが問う。

「いえ、今回は緊急の用事で…説明する時間もありませんので、とにかく来ていただきます」

 またか、エリックはそう思った。

 なぜなら彼は先ほどの拉致事件の際も同じ台詞で勇者を半ば拉致したのだった。しかしあの時は書置きを用意する時間があったが今回はそんな時間すらないらしく、彼は間髪入れずに風の転送魔法を詠唱していた。

 転送魔法にはそれぞれ火、水、風、土、闇、光の属性があり、その属性を極めた者が使える高等技術だったりしたのだが、つい最近になってその技術のメカニズムが解明され、よほど魔法に適正が無い人間ではない限り使えるという一般的なモノとなった魔法である。

 ただ勘違いしないでほしいのは、シドがこれを使えるようになったのは約500年ほど前であり、その頃はまだそういった理論どころか魔法を科学的に解明するという概念自体が無かったのである。


 また、この勇者と姫の行方不明事件でアインハッド城がてんやわんやになるのだが、今回は割愛しておくことにしよう。


 さてさて、転送魔法でエリックといまだ夏バテから回復していないエリナは馴染みのあるファンシーな部屋の中にいる。

 レース付のカーテン、純白と言っても過言ではないほど清潔な壁や床などなど、これらを初めて見た人間は誰も理解できないであろう。ここが魔王の私室であるということを。

「エリックさん、エリナさん! 待ってました!」

 そしてその部屋でそわそわと落ち着きが無い女性こそが魔王である。

 言ってしまえばエリナと正反対、落ち着いたというよりも若干天然が入っておりフワフワとした綿飴を連想させるような物腰と、出るところは出て引っ込むところは引っ込んでいるというなかなかのプロポーションを持つ。

 話が逸れた。

「はぁ、その魔王さん。今日はいったいどうしたんです?」

「実は今日はそのことでお願いがあるんです!」

 ますます訳が分からない、エリックは困惑した。

 いきなり連れてこられたことに関して言えば本人からすれば問題はない、またエリナも目の前の魔王は友人ということもあり、大抵のことは許している。

 ただ今回のような拉致同然の事件で、アインハッドの城はかなり混乱を起こしているのは当然だ。しかしながら当の本人たちはそこまで深刻に考えていなかったりする。

「私はまだ魔王じゃないんです!」


 衝撃事実である。


「それってどういうことです?」

 エリックは問う。目の前の魔王(仮)はおかしなことを言った、彼女は魔王であるが魔王ではない。トンチであるのだろうか。

「それはですね――」

「お嬢様、ここから先は私が」

 そこで先ほどから存在はしていたが何も喋らず、微動だにしていなかったシドが一歩前に出て、メガネを直す。

 話によると、現魔王であり目の前にいる魔王(仮)の父親が「もう魔王メンドクサイ!」といった感じで魔王を次の世代に半ば投げる形で渡すこととなった。駄々をこねた子供の言い分の様だが、残念ながら本当のことだから性質が悪い。


「(仮)って何ですか!」

 魔王(仮)が喚いているが無視しよう。


 ただその次代の魔王候補というのが総数約100人という無茶苦茶な数ほど存在しており、またその次代の魔王選定の儀というのが「ドキッ♪次代の魔王決定トーナメント戦 ~死んでも文句なしだよ~」というその候補を含めた4人1組のチーム戦であるのだが、目の前でアワアワと慌てている魔王(仮)にはそのチームメンバーがいないとのこと。だが、そのうち多数が棄権した関係で、実際決定戦に出場する人数は8人となった。

「もう(仮)でも(笑)でも(株)でもなんでもいいです……」

 魔王(仮)はいじけた。

「あれ? でもこのお城ってそれなりの人がいると思うんですけど…」

「たしかに人数はいます、ですが魔王決定戦に出られる者がいるかと言われると、私以外にはいないのです」

 そうシドを含めてここには100人前後の使用人がいるものの、シド以外がメイドやコック、庭師といったこれといって試合に出られる者がいないのだ。

 当然それらの使用人も魔族ではあるが、魔王決定戦というからには他の出場者も戦闘に慣れた、もしくはそういったことを職業としてる者が集まるだろうことから、安易にメイドやコックは選べない。

 とはいえ、そんな危険な勝負に人間2人を友達という理由で出場を頼むのも、どうかと思う。

「シドさん以外にも同じような執事さんが2人ほどいた気がしますけど? 素人目ですけど、かなりの手練れに見えましたが……」

 彼の言うとおり、シドそっくり……というか瓜二つとでも言う執事が2人存在していた。1人は前髪で顔の右半分が、もう1人が逆に顔の左半分が隠れた執事。ちなみにシドはオールバックである。

「あー……あれは私の分身でして……」

 申し訳なさげに答えてから、左手でフィンガースナップ――指パッチンを鳴らす。

 その音に少し遅れて、シドの両側に先ほどの瓜二つな執事が床からせり出す形で現れる。

「おお……」

 そのあまりにも非現実的な登場のさせ方にエリックは絶句する。

「試合中に分身体を出すのはルール上許可されているのですが……」

 左の分身体が困り顔で喋る。

「分身体それぞれが別の選手として出場することはルール違反なのです」

 右の分身体が仕方ないという様な表情でつぶやく。

「というわけなのでお願いできませんか?」

 真ん中の本体が眉を八の字にしてエリナに頼む。

 たしかにエリック本人にも聞いているわけだが、彼はエリナの専属執事でもあるため彼女の了解を得ないことには出場することもできない。まぁ彼女の性格からしたら二つ返事でOKが貰えそうであるが……。

「何でもしますからお願いします!」

 この魔王(♀)の言葉に、先ほどからダウンしていたエリナの身体が揺れる。

 魔王の胸も揺れる。

「……」

 そしてそのまま、エリナ本人は無言でユラリと立ち上がる。

 その様は少々不気味だ。

「あ、あの、大丈夫ですか?」

 魔王(仮)がその不気味さ異様さにどもる。

 仮にも魔王になろうという者を怖がらせるエリナが異常なのか、魔王になろうというのにそういう事に怖がる魔王(仮)がダメダメちゃんなのかはわからない。

 そうこうしている間にエリナは魔王(仮)の肩を掴む。

 しかも力をそれなりに入れているらしく、魔王(仮)は顔を少ししかめる。

「あ、あの……痛いん、ですけど……」

「……今、何でもするって言った?」

 その声にはいつもの雰囲気はなく、淡々とした口調が死にかけの魚の眼をした表情に乗せられる。

 その表情に魔王(仮)は涙目となる。まぁ魔王と言っても女の子だから仕方ないとしても、エリナは本当に人間なのかを疑いたくなる光景だ。

「い、言いました! 言いました!」

 あまりの恐怖に魔王(仮)は首が千切れるのではないかという程の勢いで縦に首を振る。

 バーテンさんがカクテルを作る時、容器を振る動作を想像したらわかるであろう。

 その様子を何とも思わない、淡々とした口調でエリナは呟く。ただ一言。


「……海」


 と。

「……はい?」

 どんな恐ろしい要求をされるのかと、内心ガクガクブルブルと震えていた魔王(仮)は目の前の人物が呟いた言葉を理解するのに数秒を要し、赤と緑のオッドアイを丸くする。オッドアイというのは左右の眼の色が違うことを意味し、かなりアレな属性である。

「海に、行きたいの」

 エリナは言った。

 金でもなく地位でもなく、ただ海に行きたい。そう言ったのだ。元々エリナ本人がそういったことに興味が無いのも原因であったが、やはりどんなことをしてでも海に行きたいという願いが、他の願いを凌駕していた。

 それを聞いた魔王(仮)は先ほどまでの涙目が嘘だったかのように笑顔を咲かせた。

「海ぐらいなら何度でも連れてってあげますよ! 魔界一の海に!」

「乗ったぁ! エリック、あんたも参加! 命令!」

 即答であった。

 それからの魔王(仮)の動きは早かった。エリナの気が変わらない内にと、参加申し込みの書類を書き上げ、シドと本人を含めた4人のサインを載せて即座に提出したのであった。

 余談であるが、この時エリナは暑さで頭をやられていて半分意識が無く、意識がハッキリした後でも「まぁ、いいじゃない!」の一言で片づけたのだった。

 また、開催まで1週間の日数があったのでそれまで魔王(仮)の城に無断外泊し、アインハッド城どころか国自体がとんでもない騒ぎになったのは言うまでもない。

 ここまで読んでいただいて誠にありがとうございます。


 前書きの通り、ここまでです。

 本来なら戦闘シーンや渾身のネタなどもあったのですが、投稿するなら書き直したい程度の出来だったため、当たり障りの無い部分だけ切り取らせていただきました。

 何より、文字数3万越えの作品を短編として出すのはどうかと思いまして、こういった読者に配慮の無い形となりましたことを謝罪いたします。


 では皆様、また機会があればどこかでお会いしましょう。

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