血祭りカフェ 50音順小説Part~ち~
書いていくうちに早く残酷場面に到達したくなってそれまでのシーンが
雑になってしまった感じ・・・
血生臭い匂いがする、そう千歳は思った。
「ねぇ真礼、なんかこの店変な匂いしない?」
私は向かいの席に座る真礼にほかのお客には聞こえないようそっとささやいた。
「変って?焦げ臭いの?」
「焦げ臭いとかじゃなくて血みたいな匂いしない?」
「血?血ってそんなことあるわけないじゃん。」
「でも絶対するって。」
「何がするの?」
ふいに頭の上から声が降ってきた。
「絵鈴。」
「ねぇ何々?」
トイレに行っていた絵鈴も加わり今喋っていたことを説明した。
「血?あぁ~そういえばさっきトイレから戻ってくる時に厨房の扉が開いた瞬間
ちらっと見ただけなんだけど台の上に大きなモノが布に覆われて乗せられてたんだ。
きっと牛丸ごととかマグロ一匹買ったんだよ、きっとその匂いじゃないかな。
血の匂いぷんぷんしてたもん。」
「牛にマグロって・・・ここカフェだよ。それっておかしくない?」
千歳たち三人がいるカフェは大通りから一本外れた路地にひっそりとあり
今日たまたま見つけて初めて入ったのだ。
外観は良くいえば今流行りのレトロな雰囲気だが悪くいうと少し廃れている。
良くない方の印象を受けた千歳はあまり気が進まなかったのだが二人は新しい店に興味津々で
気圧されてしまい渋々入店した。
内観は外観に比べ明るい照明と白を基調とした内装で思ったより悪くなかった。
けれど何かおかしいと感じた。
どこからどう見ても普通の喫茶店と何ら変わったところはないのだが、
千歳はどうしても違和感が拭えなかった。
真礼は先ほど無愛想な店員が持ってきたグラスの水を一口飲む。
「今日は何かあるんじゃないの?だからそんな気にすることないよ。」
「そうそう。早く注文しよー、おなか空いちゃった。ケーキ♪ケーキ♪」
「うん・・・・・・・・・・・・」
その説明に納得出来ずもやもやとしていたがいつまで考えていてもしょうがないので
とりあえずメニューを開いて気を紛らわすことにした。
「私はチョコレートケーキにしよ♪」
「ん~私はチーズケーキかな。千歳は?」
「あ・・・私はいちごのケーキで。」
「以上でよろしいですね。少々お待ちください。」
先ほどと同じ店員が注文をとって厨房に戻ったのを見て気づいた。
ずっと同じ店員しか見ていない、人はそれなりに入っているにも関わらず。
それに千歳たちよりもずいぶん前に注文した人たちのものがまだ出てきていないのだ。
その客たちはだいぶイライラしている、そのうち店員に文句を言いそうだ。
「ねぇやっぱりおかしいよ、この店。出よう。」
「出ようって・・・もう頼んじゃったじゃん。」
「えーケーキ食べたい。」
この異様な雰囲気を理解できていない二人に徐々に苛立ち
「じゃあ私一人で帰る。お金置いとくから。」
千歳は早くここから出たい一心で代金をテーブルの上に荒々しく置き席を立った。
ウィーーーーーン
いきなり機械音が鳴りだし周りの客たちがざわめきだす。
自分の予感が的中してしまった、ここから出ようと扉に手をかけた時にはすでに時遅し。
ほんの十分前に入ってきた扉は開かずの扉へと変わっていた。
「みなさん大変お待たせいたしました。実験体の人数が揃いましたので
これから楽しいショーのはじまりです。」
無機質な声が店内に流れる、あの店員の声だ。
「何それ?ショーってどういうこと。」
「千歳、ドア開かないの?もしかして閉じ込められたの?」
「そうみたい。」
この時やっと二人もこの店の異常に気付いたらしかった。
「これはとある研究チームが人間の深層心理について研究するための実験です。
この店から生きて出れるのは一人だけです。最後の一人になるまで殺しあってください。
ショーの主役は今このカフェにいるお客様みなさんです。観客である我々を充分に楽しませてください。
それではイッツ・ア・ショータイム」
それだけいうと放送は途切れ天井から複数の武器が落下してきた。
ライフル銃やナイフ、その他さまざまな武器が見られた。
「ちょっと携帯圏外なんだけどなんで!?」
真礼が外部と連絡を取ろうとしたが何故か圏外になってしまった。
「よくわからない・・・。ねぇ出ようここから。」
「あぁこんな馬鹿げたことに付き合ってられっか!」
横の席に座っていたカップルが立ち上がり男の方が今さっき天井から落ちてきた
ハンマーでドアや壁を手当たり次第に叩く。
だがやはり手ごたえはない。
「くっそぉっ・・・」
店内にいるのは男女合わせて七人、私たち三人にカップルと一人で来た客が二人いる。
すると一人の背広姿の男が手を軽く上げ前に出てきた。
「ここは一旦落ち着いて話を整理しませんか?」
この中では一番の年長者であろう背広は六人を集めて現在自分たちが
どのような状況に置かれているか話し合おうと言った。
「きっと何かのイタズラですよね?ほら最近流行りのドッキリみたいな。」
さっきよりも女が落ち着きを取り戻したのか冷静に考えこの結論に至った。
「まぁそれが一番ありえそうですもんね。」
絵鈴も真礼もその意見に賛同した。もちろんの女の恋人も。
「待ってください。いくらそういったものだとしてもタチが悪すぎやしません?」
そう苦言を呈したのは一人でここに入店したOL風の女性であった。
「でもでもドッキリってよりリアルを求めて過激になってきているみたいな話聞いたことある。」
そうであってほしいと願うためか絵鈴はOLの意見に物申す。
「だってこれ・・・落ちているものをよく見てください。」
OLが鉈を拾い上げついさっきまで自分たちが座っていた木製のテーブルに一気に振りかざした。
テーブルは真っ二つとはいかなかったが鉈は真ん中に刺さって大きなヒビが入った。
「うそ・・・本物・・・」
真礼は慄き腰を抜かしてしまった。
千歳は自分がとんでもないことに巻き込まれしまったことを改めて実感した。
「これって本当に殺しあえってことなのかもね。」
「ありえない。話が突飛すぎるでしょ。」
千歳が呟いた言葉に真礼が敏感に反応して強く否定する。
「出入り口はすべて封鎖されている、連絡はとれない。
とにかくしばらくはこのまま様子を見よう。今は何もやっても無駄らしい。」
背広が話を無理やりまとめ結局この日はカフェで一夜を過ごすことになった。
だがその後も連絡も取れず店から出ることもかなわず一週間が過ぎようとしていた。
言わずもがな七人は肉体的にも精神的にも限界に来ていた。
「・・・私たちこのまま死んじゃうのかな・・・・・」
「やめなよ、そういうこと言うの。」
「だってこのまま誰も助けに来てくれなきゃどうなっちゃうの!?死んじゃうんだよ!?」
真礼に言われた絵鈴がヒステリック気味に叫ぶ。
「絵鈴、あなたの気持ちは分かる。けどそれはあなただけじゃない、みんな同じ気持ちなのよ。」
千歳も絵鈴も諭すが聞く耳を持たない。
「だったらなんで何もしないのさ。」
「それは考えてた手が尽きて・・・」
「ほらもうやっぱり死ぬしかない・・・・・みんなここでお陀仏なんだ。」
「あぁ~もううるさいっ!!こっちだってイライラしてるんだから大声出さないで!」
三人の口喧嘩に割ってきたのはカップルの女であった、こちらもだいぶ憔悴しきっている。
「だってそうでしょ!何もしないで死んじゃうなんて嫌だよ。」
「それもそうだな。」
絵鈴の意見を肯定し立ち上がったのはずっと体育座りでうずくまっていたカップルの男だった。
「こうなったらあのスピーカーから流れたことを信じてやるしかないかもな。」
「ちょっと待って、それって殺しあうってこと。本気で言ってるわけじゃないでしょうね。」
男の腕を女が掴む。
「本気だ、じゃなきゃこんなこと言わない。俺は生きてここから出る。だから・・・」
ザシュ
千歳は今目の前で起こったことが分からなかった、けれどそれは確実に目の前で起きた。
こんな生活の中でも二人で励ましあっていた二人なのに男は簡単に女を裏切り
彼女の右腕を斧で切り落とした。
「あっ・・・あっあぁ~・・・・・・」
女は言葉にならない悲痛な声をあげ左腕で右腕の出血を押さえようと必死だ。
あまりの痛さに立っているのもままならなく床に転げ目で助けを乞う。
しかしその場にいた全員はあまりの恐怖で固まってしまい動けない。
すがる女を尻目に男は背後にせまり
「さよなら、俺の生存戦略の幕開けの最初の生贄だ。」
斧を女の後頭部めがけて下ろした。
頭蓋骨が割れる嫌な音が部屋に響いた。
女の頭がパックリと割れ大量の血液が噴水のごとくあふれ出てくる。
返り血を浴びて男の顔は真っ赤に染まり目が爛々としてその形相はさながら鬼のようだ。
しばらく女はぴくぴくと痙攣していたがやがて完全に動かなくなった。
「死んだの?」
千歳は信じられず明らかにわかりきっていることを問うてしまった。
「あっ・・・あっ・・・いやーーーーー!!ここから出してぇーー!」
凄惨な現場を目にして耐え切れなくなったのか真礼は開かない扉を叩く。
無理やり手で開かそうとするがやはり開かず力を入れている内に爪がはがれ指の先に血が滲んできていた。
「本当にこれしか方法がないみたいね。私もやりたくなかったけど
ここから出るにはやるしかないのね。」
OLが床に落ちていた銃器を持ち上げる。
「やめようよ、そんなこと。ひっ人を殺すなんて。」
「やらなきゃこっちがやられてしまう。あの男は私たち全員を殺すつもりよ。」
絵鈴はさっきまでの錯乱状態から正気に戻っていたが逆にOLの目には狂気の色が浮かんでいる。
「次はお前か・・・」
男はOLに突進する、それをOLが銃で迎え撃つ。
凄まじい発砲音がして男に当たったかと思ったが初心者が撃つには銃は扱いが難しいものだった。
銃痕が床や壁にいくつかあるが肝心の男にはかすり傷程度の怪我しか与えてない。
「くっそ・・・」
二人の対決に目を見張っている千歳は後ろに迫っている人物に全く気付かなかった。
「千歳っ!!後ろ!」
扉の前で座り込んでいた真礼が千歳に向かって叫ぶ。
振り返ると背広が鉄パイプを振り上げ千歳に叩きこもうとしていた。
咄嗟に千歳は体を動かし四つん這いになりながらもなんとか鉄パイプを避けた。
「何するの・・・。」
背広の行動に自分も殺されるんだという恐ろしさが一気に込み上げてくる。
「何ってそこの二人が言っている通り私もその意見に賛成ってことだよ。
悪いが君には私が生き残るためにここで死んでもらう。」
千歳に近寄り再度鉄パイプを振り上げる。
「今度は外さないよ、大丈夫。苦しまないで楽に逝かせてあげるから。」
もうダメだ、そう思った千歳は目をつぶりこんなとこで自分は死ぬ運命なのかと
人生あっけないものだったとそう痛感していた。
バーーーン
轟く銃声とともに近くに誰かが倒れたのが音で分かった。
恐る恐る瞼を開けるとそこには心臓を撃たれ血を流している背広がいた。
ガタンと何かを落とす音がしてその方向を見ると真礼が銃口から硝煙が立ち上った
ライフル銃を落としたところだった。
「ま・・ひろ。」
「撃っちゃった・・・人、殺しちゃった。」
人を殺した罪悪感に苛まれた真礼は今落とした銃の口を自分の胸に押し付け引き金を引いた。
「真礼!やめ・・・・・」
千歳の制止も聞かぬまま真礼はそのまま床に崩れ息絶えた。
「うそ・・・真礼。死んじゃった・・・やっぱりみんな死ぬんだ。」
絵鈴は友人の死を目の前にしてなんとかして保っていた正気を失ってしまった。
「死なない、死にます、死ぬ、死ぬとき、死ねば、死ね。」
ナイフを首筋にあて絵鈴も自ら命を絶とうとしていた。
「ダメっ!!絵鈴やめて、あなたまで死なないで。」
急いで絵鈴の手を押さえ何とかして凶器を放させようとした。
「放して!!どうせみんな死ぬんなら今死んだって同じだよ!あんな惨い死に方よりまし。」
「きゃっ!」
千歳の手を振り切ろうと腕を乱暴に振り回しているうちにナイフの先が千歳の
頬に軽く当たり柔らかい頬の肉から生暖かい血が一筋流れる。
自分の頬に手を当てその血を確認すると手のひらを絵鈴にみせた。
「分かる?血よ、少し切れただけなのに結構痛い。死ぬってことはこの痛みより
遥かに激しい痛みに耐えなくちゃいけないの。」
その言葉を聞いて少したじろいだ、しかし手にはナイフをしっかり握ったままだ。
「でも・・・でも・・・・・」
「ほかにもここから出られる脱出口があるかもしれない、
時間がかかるかもしれないけど一緒に探そう。」
千歳はナイフを渡すよう手を差し出した。
逡巡した結果絵鈴はナイフを千歳に渡し、ほっと息を吐いた。
やはり絵鈴も死ぬことにためらいを感じていたのだろう。
「とにかくあの二人をなんとか説得しなくちゃ。」
「そうだね、千歳の説得ならきっとふたりとも・・・・・・」
と、言いかけた絵鈴の次の言葉を千歳は聞くことが出来なかった。
後ろから男の姿が現れ絵鈴の背中に包丁が刺さっていた。
そのまま絵鈴は崩れ落ち何か言おうとする前に男に刺さっていた包丁を
無理やり引き抜かれ何度も何度も胸や腹を刺された、声も出せぬまま。
「あのOLは死んだ。残るはお前と俺だけ。」
絵鈴の死体を呆然と見下ろす千歳、さっきまで生きて話していたのに・・・
それをあんなに簡単に酷い殺し方をするなんて、千歳の心に沸々と憎悪の念が湧き上がってきた。
「どうして・・・」
「あぁ?なんだって?」
「どうしてこんなことするの。」
しゃがみ込み絵鈴の開いたままの瞼を静かに閉じる。
「自分が生き残るため。それが理由だ。」
「そう・・・」
「それじゃあここでお別れだ。」
絵鈴に刺した包丁の切っ先を今度は千歳に向ける。
そして男は千歳の体を包丁で貫こうとした。
が、それは当たることはなく男の腹部に激痛が走り
不思議に思った男が自分の腹を見るといつの間にか血が流れていた。
「ここがあなたのお墓よ。」
目の前にいたはずの千歳は横に移動し手には日本刀を携えていた。
「くそっ・・・なぜだぁ~!!」
腹に手を当て流れ出る血を押さえようとするがとめどなく流れる血はあっという間に
手を真っ赤にし、もう助からないだろうことが察せられた。
「私昔から父から剣道を習っていてね、たまに真剣も触らせてもらってたの。」
千歳の独白になど耳を傾けず必死で応急処置をしようと試みるが無駄に終わった。
「いっいやだ。まだ死にたくない、こんなところで死にたくない。」
「見苦しい、あんなに人を惨殺しといて。」
這う男に冷たい目を向ける千歳は最後の一撃を食らわした。
ウィーーーン
一週間前に聞いた機械音が再び鳴りだしあのスピーカーから声が流れた。
「おめでとうございます。無事生き残ったあなたはここから脱出する権利を得ました。
これで実験終了です。ご協力ありがとうございました。」
無機質で口調を変えることなく放送は終わり、ドアをひねると
開かずの扉だった入り口は軽く音を軋ませ千歳は日が陰り暗くなった路地に出た。
六日前、厨房に食材を探しに行った際台の上に置いてあった布に覆われたもの、絵鈴が言っていたものが
何だったのかはっきりした―――人の死体だ。
きっと千歳たちの前にもこの実験が行われその被害者となった者たちの骸なのだろう。
この実験は人知れずどこかで続いているんだろう・・・
う~ん、残酷シーンて難しい(-_-)/~~~ピシー!ピシー!