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側室物語  作者: 日暮
7/11

ようやっと来ましたか。

題名からして主人公からの扱いが軽い人。

 女官長から通達がありました。

 王太子殿下が今夜お渡りになるそうです。



 ニーナ達に日々情報を集めさせていたところ、今のところ殿下のお渡りがあった側室は四名だとか。

 ルンベンダルク公爵令嬢、ニーゼット侯爵令嬢、モルト侯爵令嬢、コランダム伯爵令嬢。

 父親はそれぞれリュシオン殿下の筆頭後見人、財務大臣、北の国境守護、南の大穀倉地帯の領主、ですか。


 その豪華な顔触れの次点に私とは、意外に早かったという驚きも、そんなものかいう納得もあります。

 私の父侯爵が自分側の派閥ではなくとも、宮廷において無視出来ない力を持っていると考えられているのでしょう。相当味方に付けたがってるのが見えるようです。

 いえむしろ敵に回したくない、でしょうか。


 ……父は宮廷で一体何をしているのでしょう。




 しかし殿下がお渡りになると聞いてから、私付きの侍女達が非常に生き生きとしています。

 湯浴みをして、香油で髪を梳いて、香を焚きしめて……とはしゃいでいます。

 あの、殿下が来られるのは夜ですよ? お相手するのは私ですよ?


 きっと夜リュシオン殿下にお会いする時には、『私』という作品が出来上がっているに違いありません。

 朝からそこまで気合いを入れなくても、と思わずにはいられません。




 さて、夜に向けて着飾るのも大切ですが、それよりも気をつけなければならないことがあります。


 他の侍女がはしゃいでいる中、ニーナに目配せすると、流石彼女は優秀です。

 侍女達を窘め、普段と同様の仕事と夜に向けての手配を指示して動かしました。


 ニーナを残したのは、これからの他の側室方の出方に関して話す為です。


 お手付きとなれば側室は正妃との格の違いはあれど、正式にリュシオン殿下の妻の一人となります。

 エレノア様に御子がいらっしゃらない今、男児を産めば、次代の王の母をも望める立場になるのです。

 後宮内が静かに荒れるとすればこれからでしょう。


 そして他の女達を蹴落とす為に、愚かしい手に出る者も出てくるでしょう。


 エレノア様はおそらくないでしょう。彼女は妃というものをよく理解しておいでです。


 ルンベンダルク公爵令嬢はプライドが高そうですので、先日の廊下でのことを考えると怪しいですが、私より先に殿下のお渡りがあった現時点ではないと考えていいでしょう。


 考えたくはありませんが、お茶会での様子を見る限り、ニーゼット侯爵令嬢あたりならあるかもしれません。

 標的にされるようなことをした覚えはないので、現時点では一応様子を見るといったところでしょうか。


 他の方々もこれからどうなるかわかりません。権力と恋情で人はどんな行動に出るかわからなくなりますから。



 現在ニーナを始め侍女達には、他の側室付きの侍女の行動を調べたり、下働きの者の噂話を拾い上げたりと、後宮内での独自の情報網を構築させている最中です。

 下働きの者の中には何が重要な情報なのかわからず口に出す者もいますので、上手く話に乗せて聞き出すと大きな情報源となるのます。

 今は後宮に入ってあまり日が経っていないので穴もありますが、そのうち大きな力となるでしょう。





 そして。


 普段より二倍も三倍も気合いを入れて磨き上げられた身支度を終え、夜。

 といってもそこまで遅い時間ではありません。


 扉の向こうから先触れがあり、とうとうリュシオン殿下が来られました。


 作法として教えられた礼をして迎えます。

 夕飯はもうとっていらっしゃるので、長椅子に案内し、用意しておいた酒をすすめます。殿下は一杯、二杯と杯を傾けられ、私は空になったそれに注ぎます。

 これはもう儀式のようなものです。

 殿下側が望んで召し上げたのではなく、これまでろくに面識のなかった者同士です。情を芽生えさすには圧倒的に時間が足りません。

 形式的に言葉を交わし、ではそろそろ……となるわけです。


 なりました。






 あ、


 え?


 こ、こんなことも?


 …………っ



 ――初めては痛いと散々言われてきましたが、意地でも口には出しませんでした。




 リュシオン殿下は全てを終えぐったりとした私を労って下さいましたが、御自分の身支度を整えるとすぐに戻っていかれました。

 そんなものです。例え後宮を回られても、睡眠はご自分の居室で取られますよ。安心して眠れないじゃないですか。

 むしろ今の状態で長居されたら私が困ります。疲れてるんです。

 なんというか、その、実際体験してみないとわからないものですね。




 そうして殿下が帰られてから、寝台と体を清め、

 事前に用意しておいた薬を飲み、

 明日からの日々を思って眠りにつきました。




 もう当分いらっしゃらないでいい、と立場を忘れてちょっとだけ考えたのは秘密です。

 ちょっとだけですよ。

側室側室とややこしくなるので、登場人物に名前を付けました。

主人公と父の名前が登場してないのはわざとです。

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