笑顔を忘れてはいけません。
エレノア様主催のお茶会へと招待されました。
後宮では新しい住人が増えた際、その後宮の主がお茶会へ招くというのが慣例です。
表向きの理由としては、早く後宮に馴染める馴染めるようにという気遣い。
実際のところは、正妃側が側室を招くという形式を取ることで上下関係をしらしめるといったところです。
お茶会の場で互いの格の差というものをどれだけ見せ付けられるかが、主催者側の力の見せ所というものでしょう。
お茶会に向けてドレスを選ぶのは侍女達です。衣装部屋からいくつものドレスを出してきて私の体にあてては楽しそうにしています。
貴族の女は着飾るのも仕事の内ですが、今回の主役はエレノア様です。あまり着飾り過ぎてはいけません。
屋敷から持って来る際に、お茶会用のドレスは決めておいた筈ですが、ここはただでさえ娯楽の少ない後宮です。徒に侍女の楽しみを取り上げる必要はないかと思い、指摘するのはやめにしました。
ドレスの着脱を繰り返すのは非常に体力を使いましたが。
私は普段からあまり派手な装いはしませんが、今回のお茶会はこれからの生活においてとても重要なものになります。下手な装いは出来ません。
シンプルなドレスに、小さいながらも存在感のある装飾品で上品に仕上げるのがいい……というのが試着会を経た侍女達の一致意見です。
決まってよかったです。
お茶会に集まったのは豪華極まりない顔ぶれでした。
生家の権勢も然ることながら、社交界で名を馳せた方が何人もいます。
国中の名家のご令嬢達ですから。お金がかかっています。
人の美しさというものは顔立ちではありません。どれだけ美容に気を使うかで変わるものです。
これでどれだけ中身に気を使われてる方がいらっしゃるかが気になるところです。
権力が伴うと、人は何をするかわかりませんからね。
お茶会は皆さん表面的には終始にこやかでした。いきなり礼を失するような迂闊な方がいらっしゃらないようで安心します。
空気に呑まれてでしゃばれなかったというのもあるかもしれません。
エレノア様の華やかさと、場を取り持つ力は流石です。間違いなくあの場の支配者は彼女でした。
側室の面々に後宮の主として印象付けれたのは、王太子妃殿下としては大きかったと思います。
私はというと、積極的に会話に興じるということはありませんでしたが、あまり会話に参加しないというのも失礼ですし、組み易しと見られるのも今後にとって都合の悪いことです。
会話を求められれば返しましたし、ここぞというところでは話題を提供致しました。
どのような話題についていくかでその方々が何に興味を示し、知識を得ているかがわかります。
どのような話題にも深い知識を示すエレノア様。流行に関する話から少々政治に触れる話まで。感心します。日々勉強されているのでしょう。
反対に政治に触れる話に入ると途端に口数が少なくなったり、噂話程度の知識しか持ってらっしゃらない方もいらっしゃいました。
まぁ貴族の娘にとっては必要のない知識でもありますからね。嫁ぐ家によっては小賢しいと嫌がられる場合もありますし。
王の妃としてなら必須ですから、この先万が一エレノア様がお亡くなりになられたとしてもその後任には難しいと思いますが。
まあエレノア様が賢明な妃であられる限り亡くなられることはないでしょう。ただの病気は防げませんがね。
勿論流行に関することは皆さんこの国で一番詳しいので、全員が会話に参加していました。
美容に関する話題が一番盛り上がったのは……この環境では仕方のないことです。
お茶会の中でよくよく観察していると、エレノア様に支配された場でも気になる方は数人いらっしゃいました。
話題を積極的に提供されるあちらのルンベンダルク公爵令嬢は、ご自分に自信があるのでしょう。
ああ、そういえば先日廊下で声をかけてきた侍女の主でしたね。要注意です。
他の側室が苦手そうにしている話題をそれとなく向けているニーゼット侯爵令嬢はわかっていてやっています。
ああ、あの令嬢は父が言っていた例の……。間違いなく要注意です。
あと余裕さを醸し出していた方々は、まだ手付かずの側室がいる中でのお手付きの自信でしょうか。
皇太子殿下は政治というものを理解していらっしゃるので、近々全員回られると思いますが。
逆に大人し過ぎる方もいらっしゃったのでそちらも気になるところです。
皆さん何を考えて後宮に入られたのか深くまではわかりませんでしたが、人となりはわかったつもりです。
あとはエレノア様がどうお考えなのか聞けたらいいのですが……まだそこまでの関係ではありませんしね。現段階では必要ありません。
本音を笑顔で覆い隠す方々が多くて困りますね
。
あ、私もでした。
妃殿下ハイスペック。
そして主人公は表には出さないがサラッと毒を吐く。




