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側室物語  作者: 日暮
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上下確認は大切です。

 さて。後宮に入ったからには、自分で自分の身は守らなければなりませんね。

 早く動かなければ後々に響きます。



 まずは侍女のニーナに王太子妃殿下のもとへお使いを頼みます。

 面会の申請です。お返事を貰ってくるところまでは期待していません。


 この後宮はリュシオン殿下が立太子されてから開かれたもので、王后陛下は別の離宮にお住まいです。そのためリュシオン殿下の奥内に関しては必要以上に関知なさいません。

 年若い王太子妃殿下だけで奥内の管理が出来るのでしょうか。それはまだわかりません。

 気立てが良く聡明な方とはお聞きしていますが。

 まあ妃殿下がこの後宮の主ということは確かなので……まずはお互いの立場を明らかにすることが肝要です。



 ドレスの着用と髪の結い上げ、そして化粧が同時進行で進んでいくのに少しげんなりとしていると、ニーナが戻ってきました。

 後から時間を指定して呼ばれると思っていたのに、もうお返事を頂いてきたそうです。


 ……随分と思ったより早かったですね。

 半刻程後に、だそうです。もしこれから準備をするのでしたら、少々時間が厳しいところです。妃殿下もその時間で呼ぶのでしたら、もう身支度は完璧ということでしょう。

 これは試されているのでしょうか、それとも恥を欠かせようとしているのでしょうか。

 妃殿下の情報を修正する必要がありそうです。


 まぁまだ判断を下すのは尚早に過ぎますね。お会いしてから考えましょう。




 妃殿下――エレノア様は私とは違った華やかな空気を放つ美しい方でした。

 実のところお会いするのは初めてではありません。エレノア様が正式にリュシオン殿下と婚姻を交わす前は、それなりに社交界に顔を出していましたし、同じパーティに出席したこともあります。

 ただ顔を合わせたことがあるくらいのことですから、落ち着いて会話をするのは初めてのことです。


 幼いころから妃教育を受けてこられたのでしょう、いくつか言葉を交わしただけの会話からは知的さが、その堂々とした態度からは支配者階級独特の泰然としたものが感じ取れます。

 これは期待できそうです。


 今回はただ後宮入りしてすぐに王太子妃殿下の元へ挨拶に向かった、という事実が欲しかったのだけなので、さし障りのない程度の会話に留めました。

 エレノア様も私の意図を理解されているのでしょう、始終にこやかにしておられました。

 なかなか有意義な時間だったと思います。




 さて侍女やメイドなどの使用人は私達が通る際は通路の脇に立ち頭を下げるのが慣例なのですが、遠くの通路からや私が通り過ぎた後などにちらちらとこちらへと視線を向けてくる者がいるのを数人感じます。

 まあ貴族たるもの始終人に見られながら生活していますから、いまさら人目に晒されるのは気になりません。

 むしろ今は私が妃殿下の部屋から出てきたという事実をしっかりと目に焼き付け主人のもとへ持って帰って頂きたいものです。もっともこれらは既に知っていた事実を確認しに出てきたのでしょうが。


 いくつもの頭を下げられながら私室への道を進んでいると、なにやら進行方向上に不躾にこちらを見てくる女官がいます。


 ……はて、こちらの女官はどちらの方でしょう。


 ニーナがこっそり耳打ちしてくれました。先日側室入りした公爵令嬢の侍女だそうです。

 流石ニーナ、二日目で侍女の顔まで覚えているとは感心です。

 ニーナは今回連れてきた者の中で、マーサも推す最も優秀な者です。仕事面は然ることながら、貴族間の情報にも聡いので助かります。


 なにやら形式的にお辞儀をされ、話を聞いてみると、

 私が後宮にお入りになったのは聞いていたが、明けてすぐ朝早くから妃殿下に面会するよう出かけたのには驚いた、まずはこちらに顔を出して頂ければ妃殿下に失礼がないよう後宮のことを教えて差し上げましたのに、というのが公爵令嬢のお言葉だそうです。


 ふむふむ。

 ああ、エレノア様は確か侯爵家の出でしたね。だからこの侍女の仕えている公爵令嬢は、妃殿下に挨拶するのなら自分のところにも顔を出せ、むしろ真っ先に来い、と。そうおっしゃりたいわけですね?

 ……エレノア様もこの先苦労なさりそうですね。


 とりあえずは、これから先長い付き合いになるでしょうからお茶を共にするというのもやぶさかではありませんが、王太子妃殿下が近々後宮中の方を集めてお茶会を開かれるらしいので、そこで顔合わせしましょうということを柔らかくお伝えしました。


 まあつまりは、エレノア様主催のお茶会に御呼ばれして上下関係をきっちり理解しろ、と含ませたのですが。

 きちんと理解していただけるでしょうか。


 妃殿下相手ならまだしも……私、他の側室方より下というわけではありませんし。あくまで対等なんです。現段階は、ですけど。

 父が爵位関係なくしっかりした地盤を築いて下さったおかげで、必要以上に遜らなくて済んでよかったです。

 あ、父の笠を借りるつもりはないですよ?

 ちょっと身を守るのに使わせて頂いてるだけです。

 ただエレノア様は大丈夫だと思いますが、他の側室方がしっかりと相手の地力を理解していない場合もあるので、その場合は自分で対処しなければなりません。

 そういった方がリュシオン殿下に気に入られちゃったりしたらもう最悪です。



 ふむ……まずはお茶会で、エレノア様の力量でも見せていただきましょうか。

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