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側室物語  作者: 日暮
3/11

後宮に入るのも大変です。

 リュシオン殿下の立太子後しばらく。


 私はこれといった妨害もなく無事に後宮入りを果たしました。



 え? 展開が速い?



 いや、だってそんな、その間にあった出来事なんて地味なものですよ?

 後宮に連れていく侍女の選定や衣装や嫁入りに際し持ち込むものの手配、礼儀作法の復習、あとは後宮内の事情について父と話し合うくらいでしょうか。

 他にも色々とありましたが、とりあえずはそれくらいです。細々としたことは他に任せました。


 どの侍女を連れていくかはとても悩みました。後宮に入れば最も私に近い存在になるのですから、何よりも信頼の置ける者でなければなりません。

 仕事が出来る者がいいのは確かですが、重要なのは主を裏切らない者であることです。仕事の出来不出来はどうにでもなります。

 一番いいのは私が生まれる前からついていてくれたマーサですが、彼女は屋敷を離れられません。近々我が家の侍女頭が引退するのでその後任を任せられるのが彼女くらいしかいないのです。

 我が家の奥内に関しては他家に比べやたら取り扱いの難しい仕事が多いらしいのです。何故か。


 侍女の条件として、若すぎてはいけません。会話の種に何を口にしていいのか悪いのか判断がつかず、気付かぬ内に情報を漏らしてしまうかもしれません。

 身内に病弱であったり金に困っているものがいるのもあまりよくありません。身内に対する情は時に雇い主を裏切らせます。

 いくつかの条件で絞り人柄を見て、直接本人に意思を問うことでようやっと決まりました。


 衣装に関しては採寸をしてあとはお任せです。

 私は顔は整っている方と自負しておりますが、いかんせん華のない顔をしております。派手な服は似合いません。服に負けてしまいます。

 ですので昔から大人しい色合いの布で、あまり飾りなどのない服ばかり着ています。

 私の好みを知っている馴染みの仕立て屋は、何も言わずとも毎度流行を適度に取り入れ私に似合う衣装を仕立ててくれるのですからいつも感心してしまいます。

 しかもそれを着ると大人っぽさがグッと二割は増すのですから不思議です。


 礼儀作法については任せて下さい。

 宮中での作法は一風変わったものもありますが、完璧です。私は生来取り繕うことに関しては自信があります。

 どんな人でも指先のちょっとした仕種や歩き方だけで、人の抱く印象はガラリと変わるんですよ? 中身はどうであれ。

 礼儀作法をしっかりと学ぶのは当然じゃないですか。

 口に出すのは少し恥ずかしいことですが、閨の作法も上流貴族に生まれた娘として修めています。実践は勿論まだですが。


 父はいつもながらどこから仕入れてきたのかという情報をたっぷりと聞かせてくださいました。

 妃殿下の好まれる香はという可愛いらしいものから、他に漏らしたら危険なものまで。

 しかし私と同じく側室に入ったどこそこの娘さんは、実はその母親が身分の低い男と浮気して出来た子供で、娘さんもそれを小さな頃から母親に囁かれてきたものだから上昇意欲が強い、だとか。

 娘さんの父親も知らないことだそうですが、それを父は本当に一体どこから聞き付けてきたというのでしょうかね。不思議ですね。ええとても。

 今回側室に入った令嬢達は皆国内でも有数の名家出身です。お家騒動にもなりかねない秘密をそう簡単に教えないで欲しいものです。

 父は今回教えたことはお前の好きにしなさいと茶目っ気混じりの笑顔でしたが、父は私をなんだと思っているのでしょう。

 別にこれ以上の権力は特にいらないから、後宮に入っても気にかけず好きに過ごせと言って下さったのは助かりますが。



 さて、後宮ではのんびりと出来たらいいのですが……当分は無理ですね。

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