第85話:ハネムーン第6弾・叡智の銀河と、白紙に刻む愛の誓い
黄金に染まった連邦の喧騒を離れ、リアムは第6の妻、知的な魔法学者フィオナと共に、第6銀河にある『叡智の銀河・アレクサンドリア』を訪れていた。
ここは星々のすべてが巨大な書庫であり、宇宙の歴史と真理が眠る静寂の聖域だ。
「……リアム様、こちらへ。ここは私のお気に入りの場所。まだ誰も、神々ですら何も記したことのない『白紙の書庫』です」
フィオナはいつもの冷静な口調を保とうとしていたが、リアムの手を握る指先は、期待と緊張で小さく震えていた。
二人の前には、銀河の星々を紙にしたような、広大な白紙の空間が広がっていた。
「私は魔法学者として、この宇宙のすべてを理論で解明してきました。……でも、一つだけ、どうしても私の頭脳では解けない謎があるのです」
フィオナは眼鏡を外し、潤んだ瞳でリアムを見つめた。
「それは、なぜ貴方が私に微笑みかけるだけで、私の胸がこんなにも温かくなり、思考が止まってしまうのか……という謎です」
リアムは優しく微笑み、彼女の背中の手を取った。
「言葉や理論はいらないよ、フィオナ。僕たちの想いを、そのままこの場所に刻もう」
二人が手をつなぎ、その白紙の空間に魔力を流し込んだ。
すると、そこには難解な数式などではなく、二人が見つめ合う姿と、「愛しています」という宇宙で最もシンプルで強力な文字が、黄金の光となって刻み込まれた。
その瞬間、銀河中の書物が喜びで震え、全宇宙に「理屈抜きの幸福感」が波のように広がっていった。
「……ああ、これが答えだったのですね。リアム様……。大好きです。これ以上、何も証明する必要はありません」
この「究極の答え」は、帝国の跡地で「リアムをどうにかして出し抜こう」と、陰湿な計略を練っていた元軍師たちの元にも届いた。
「……解析不能だ。リアム王子の魔力から『悪意』も『隙』も、何一つ検出されない……!」
かつてリアムを「頭の悪いお飾り」と断じた彼らは、自分たちが必死に積み上げた「謀略という名の知識」が、リアムとフィオナが刻んだ「ただ一言の愛」の前に、塵のように吹き飛んでいくのを目の当たりにした。
「我々は……人を陥れるための知恵を競い、肝心の『幸せになる方法』を何一つ知らなかったのだな……」
彼らは自らの無知を恥じ、持っていた計略書をすべて焼き捨て、今日からは「子供たちに絵本を読み聞かせるボランティア」として生きることを決意した。
デートの終わり、アレクサンドリアの夜空には、二人が刻んだ黄金の文字が美しい星座となって輝いていた。
「……ふふ、リアム様。今日は私の負けです。……魔法よりも、貴方のぬくもりの方がずっと不思議で、素敵ですから」
聖王宮に戻るなり、待ち構えていた他のママたちが「どんな難しいお話をしてらしたの!?」と詰め寄るが、フィオナはリアムに寄り添い、内緒だというようにそっと唇に指を当てるのだった。




