第74話:12銀河の新婚旅行(セレス編)と、永遠の夜の静寂
運動会で「未来の幸せ」を確信したリアム。しかし、未来があるのは今の積み重ね。
「みんな、いつもありがとう。お遊戯会も運動会も頑張ったご褒美に、新しく生まれた12の銀河を一つずつ、君たちと二人きりでデートして回りたいんだ」
この提案に、12人のママたちは歓喜のあまり魔力を暴走させ、聖王宮の空に12個のオーロラが咲き乱れた。
最初のデート相手は、第一夫人にして影の功労者、セレスだ。
目的地は、第1銀河にある『永夜の星・ノクチュルヌ』。太陽の光は届かないが、地表のクリスタルがリアムの愛に反応して星空のように輝く、静寂とロマンチックの極致のような場所である。
「……マスター。子供たちがいないと、静か。……私の心臓の音、リアムに聞こえそう」
セレスは、リアムの光翼から一枚もらった羽根を髪飾りにし、漆黒のドレスを纏って寄り添う。
リアムが指先で空をなぞると、星屑が降り注ぎ、二人のためだけに「光の道」が作られた。
「セレス、君がいたから僕はここまで来られた。大統領になっても、翼が生えても、僕は君のマスターであり、夫だよ」
リアムが12対の光翼でセレスを優しく包み込み、星の海をゆっくりと舞う。
その瞬間、二人の愛の共鳴により、ノクチュルヌのクリスタルが一斉に共鳴。宇宙中に「世界で一番美しい夜想曲」が鳴り響いた。
この美しい「夜の調べ」は、皮肉にも旧帝国の跡地にも届いていた。
かつてリアムを「闇に葬れ」と命じた元暗部総帥は、今や冷たい石畳の上で、リアムとセレスが放つ「温かい闇(安らぎ)」の波動にさらされていた。
「……我々が扱っていた闇は、ただのドブ川のような濁りだった……。あの方たちの闇は、なんと深く、そして優しいのだ……」
かつてセレスを「化け物」と呼んで迫害した魔導師たちは、彼女がリアムに抱かれて女神のように微笑む姿を見て、自分たちの心が「本物の化け物」であったことを痛感。その羞恥心に耐えきれず、自ら「無言の行」に入り、歴史からその名を消し去った。
デートの終わり、リアムはセレスの額に優しくキスをした。
「……マスター。100点。……でも、あと11回、これやるの? ……他の女たちに、嫉妬しちゃう」
「あはは、順番にね。次は……エルナの番かな?」
聖王宮に戻ると、残りの11人のママたちが「次は私ですわ!」「いいえ、私よ!」と、お土産の星屑を奪い合いながらリアムを出迎えるのだった。




