第71話:神劇開幕! 子供たちの歌声と12銀河の誕生
国立・神童幼稚園『リトル・コスモス』の大ホール。客席には、銀河連邦の市民だけでなく、異次元から招待された神々や精霊王たちが正装して詰めかけ、異様な熱気に包まれていた。
「……マスター。心臓、うるさい。……緊張じゃなくて、リアムへの愛が脈打ってる」
舞台袖で、セレスがリアムの手を握る。12人のママたちは全員、この日のためにリアムが錬成した「銀河の絹」で編まれたドレスに身を包んでいた。
「大丈夫だよ、みんな。いつも通り、家族の幸せを表現すればいいんだ」
幕が上がると、そこにはリアムが創造魔法で作り上げた「本物の宇宙」が舞台装置として広がっていた。
まず登場したのは、12人の子供たちだ。彼らが手をつなぎ、合唱を始める。
「「「「パパー! ママー! だいしゅきー!」」」」
その歌声は、単なる音波ではなかった。全宇宙に響き渡る「至高の浄化波」となり、放送を通じて聴いていた銀河連邦中の病人たちが一瞬で完治し、枯れていた惑星に緑が戻るという奇跡がリアルタイムで発生した。
そしてクライマックス。
闇(という設定の旧帝国の象徴的な影)に包まれた世界に、リアム演じる「黄金のパパ」と、彼を支える「12人の女神」が光り輝きながら降臨する。
「私たちの愛は、何者にも壊せませんわ!」
エルナのセリフと共に、12人のママたちがリアムを抱きしめる。
キスシーンと宇宙のビッグバン
劇のラストシーン。リアムが12人のママたち一人一人に「愛してるよ」と告げ、誓いのキスを交わした瞬間だった。
ドォォォォォォォォォォン!!!
あまりの幸福エネルギーの爆発に、舞台上の空間が耐えきれず膨張。リアムの愛が物理的な質量を持ち、連邦の境界線の先に「12個の新しい、生命に満ちた銀河」が産声とともに誕生した。
「……あ、やりすぎちゃったかな?」
リアムが苦笑いする中、観客席の神々は「これこそが真の創世記だ……!」と涙を流して立ち上がり、スタンディングオベーションは三日三晩鳴り止まなかった。
この劇を(強制的に全チャンネルで)見せられていた旧帝国の残党たちは、もはや「絶望」という言葉すら忘れていた。
「……劇の中で倒された『闇の軍勢』……あれ、俺たちの軍服のデザインじゃないか……」
「リアム様のキス一つで銀河が生まれるというのに、俺たちは領土の奪い合いなんていう、アリの巣の喧嘩をしていたのか……」
かつてリアムを「帝国を汚す汚物」と罵った元元帥は、画面越しに放たれた愛の光に当てられ、「私は……汚物ですらなく、ただの無だった……」と呟き、悟りを開いて宇宙の塵を掃除する修行僧へとジョブチェンジした。
お遊戯会は大成功に終わり、家族は新しい12の銀河を眺めながらお茶会を楽しんでいた。
「……マスター。次は、運動会。……もっと、動ける格好、用意して」
「そうだね。次はどんな奇跡が起きるかな」
リアムが笑うと、新しく生まれた銀河たちが、パパの笑顔に応えるようにキラキラと瞬いた。




