第68話:銀河を喰らうお弁当バトル! 遠足の準備は命がけ
国立・神童幼稚園『リトル・コスモス』の親子遠足。その目的地は、リアムが「ピクニック用に」と一晩で整備した、空気の代わりに高濃度魔力が漂う「雲の上の虹銀河」に決まった。
「……マスター。遠足の醍醐味は、お弁当。……私が、一番パパを満足させる」
セレスが虚無の鍋をかき混ぜながら静かに宣言した。それを合図に、12人のママたちの「お弁当バトル」が勃発した。
「甘いですわセレス! リアム様の胃袋を掴むのは、この聖なる愛が詰まった私の『特製・天界三段重』ですわ!」(エルナ)
「ふん、遠足といえばスタミナよ! 私が狩ってきた『次元龍のハラミ』を、リアムのために最高に焼き上げてやるわ!」(カリーナ)
聖王宮の厨房は、もはや銀河系の中心核よりも熱い魔力に包まれていた。
• エルナは、一粒一粒に「万病完治」の魔法を込めた『光り輝くおにぎり』を握り、
• セレスは、食べた瞬間に前世の記憶まで思い出すという『真理の卵焼き』を焼き、
• アイリスは、騎士の規律を反映した「1ミリの狂いもない黄金比サンドイッチ」を切り出す。
食材を求めて、彼女たちは次元を超えた。
「……マスター。ちょっと、隣の宇宙まで『伝説のレタス』を刈りに行ってくる。……すぐ戻る」
セレスが空間を切り裂いて消える。
出来上がったのは、もはやお弁当の概念を超えた「食べられる神器」の群れ。あまりの美味しそうな匂いに、連邦全体の民が空腹で悶絶し、近隣の小惑星帯が「美味しそうな香り」に誘われて王宮の周りに集まり始めた。
この「究極の調理風景」を、帝国の廃墟でひもじい思いをしていた元貴族たちは、魔法の鏡越しに眺めていた。
「……見ろ、あの肉……。一切れ食べるだけで、死者が100回は蘇るという伝説の次元獣の肉ではないか。それをあんなに大量に……」
「我々がかつて『贅沢』だと思っていた宮廷料理は、リアム様のお弁当の『付け合わせのパセリ』以下だったのか……」
かつてリアムに「粗食こそがお似合いだ」と残飯を投げつけた元料理長は、あまりにも高次元な調理技術にショックを受け、「私は包丁を握る資格すらない」と、そのまま厨房を飛び出して、一生レンガを磨き続ける修行の旅に出たという。
「さあ、パパ! 私たちのお弁当、どれから召し上がりますか!?」
12人のママたちが、光り輝く重箱をリアムの前に並べる。
12人の子供たちも「パパ、あーん!」「これ、おいしいよ!」と、自分たちが砂場(邪神)で収穫した「暗黒物質のプチトマト」を差し出してくる。
「あはは……。全部食べるよ! ……でも、これを全部食べたら、僕、エネルギーが溢れすぎて別の次元の神になっちゃうかもね」
リアムが一口食べると、その幸福エネルギーで背後に「5つ目の太陽」が誕生した。
家族25人の親子遠足は、まだ出発前だというのに、すでに宇宙の歴史に刻まれる「神話」となっていた。




