第67話:砂遊びの掘り出し物と、邪神の「おもちゃ」デビュー
国立・神童幼稚園『リトル・コスモス』。今日も園庭では、12人の最強ベビーたちが他銀河の神童たちを率いて、元気いっぱいに遊んでいた。
なかでも人気なのは、リアムがブラックホールの特異点を加工して作った「無限に掘れる砂場」だ。
「みてみてー! なにかでてきたー!」
セレスの息子が、砂場の奥深く――次元の地層よりもさらに深い「虚無の底」から、何かを引きずり出した。
それは、かつて宇宙が誕生する以前に封印されたと言われる『終焉を呼ぶ邪神・モルギウス』の本体だった。
「……ククク、我が封印を解いたのは誰だ……。この世に再び絶望と混沌を――」
数億年ぶりに復活した邪神が、禍々しい触手を広げようとした、その時。
「わあ、おもしろい形の粘土だね!」
「これ、パパにプレゼントしよう!」
12人の子供たちが一斉に邪神に飛びかかり、その強大な魔力で邪神の体を「コネコネ」し始めた。
「ぎゃあああ!? やめろ! 我は神をも喰らう邪――あ、熱い! なんだこの温かすぎる光は!?」
子供たちの純粋な愛の魔力に触れ、邪神モルギウスの「負のエネルギー」が急速に中和されていく。
そこへ、お迎えにやってきたリアムが登場した。
「あ、コラコラ。お友達(?)をそんなに乱暴に扱っちゃダメだよ」
リアムはひょいと邪神(の形をした粘土状の何か)を手に取ると、指先で少し形を整え、お馴染みの『古代魔法:【因果再編・性格改変】』を上書きした。
「よし、これで大丈夫。今日から君は、この幼稚園の『形状記憶・アスレチックジム』として働いてもらうよ」
かつて宇宙を滅ぼそうとした邪神は、リアムの手で「子供たちがいくら暴れても壊れず、形を自由に変えられる超高性能遊具」へと改造されてしまった。
「……我は、滑り台……。我は、ジャングルジム……。パパ、撫でて……(恍惚)」
この様子を、幼稚園の「防犯カメラ映像(全世界配信)」で見ていた旧帝国の学者たちは、持っていた杖を落とした。
「……あれは、帝国の聖典に『絶対に目覚めさせてはならない最古の厄災』として記されていた邪神ではないか……」
「それが今……あの子たちの『お尻の下』で滑り台になっている……」
かつてリアムを「災厄を呼ぶ忌み子」として追放しようとした元高僧たちは、本物の災厄を遊具に変えてしまうリアムの圧倒的な「善」の前に、自分たちの信じてきた教義がすべてゴミ屑だったことを悟り、静かに灰となって消えていった。
「パパ、今日ね、新しい遊具でいっぱい遊んだよ!」
「そうか、よかったね。明日はママたちも一緒に、あの滑り台(邪神)で遊ぼうか」
「……マスター。あの邪神、リアムに触られて、完全に『落ちた』。……もう、あの子たちの下敷きになるのが生きがいになってる」
セレスが呆れ顔で報告する。
リアム一家の平和は、今日も宇宙の「悪」を物理的に消滅させ、愉快な日常へと塗り替えていく。




