第63話:光に釣られた星喰い龍と、パパの「光合成」レッスン
黄金に発光し続けるリアムは、今や全宇宙で最も目立つ存在となっていた。その強烈で温かい波動は、何億年もの間、宇宙の最果ての暗闇で眠っていた伝説の超巨大生物「星喰い龍・ヴォルガデス」を呼び覚ましてしまった。
「……グルゥゥ……。眩しい……。これほどまでに美味そうな『光』を放つ星は、食い尽くさねばならぬ……」
一飲みで銀河を消滅させると言われる星喰い龍が、聖王宮のすぐ上空にまでその巨体を現した。宇宙が影に覆われ、絶望的な威圧感が王国を包む。
だが、12人の子供たちは全く動じなかった。
「あ! おっきいトカゲしゃん!」「パパ、あれ飼っていい?」
「いいよ。でも、まずはちゃんと挨拶しなきゃね」
リアムが黄金のオーラを一段と強く放ちながら、ひょいと空へ浮き上がった。
「ヴォルガデス君だっけ? お腹が空いてるなら、僕の光を分けてあげるよ。でも、星を食べるのはお行儀が悪いから、これからは『光合成』を覚えようか」
リアムが指先から、滋養強壮ドリンクの成分が混ざった究極の「高濃度・幸福レーザー」を龍の口へ放り込んだ。
「グオォォ!? ……な、なんだこの、体中がポカポカするような感覚は……! 憎しみが、空腹が……どうでもよくなっていく……。私は、私はただ、この光の下で昼寝をしていたいだけだったのか……?」
銀河の破壊者だった龍は、リアムの「パパの光」を浴びた瞬間、戦意を完全に喪失。その巨体はみるみる縮小し、最終的には王宮の庭に住み着く「光合成が大好きな、ちょっと大きい金色のトカゲ」へと姿を変えてしまった。
「……マスター。新しいペット、増えた。……子供たちの、良い乗り物になりそう」
セレスがトカゲ(元・魔龍)の頭を撫でると、龍は嬉しそうに尻尾を振った。
この「神話の終焉」を中継で見ていた旧帝国の生き残りたちは、もはや言葉を失っていた。
「……おい。かつて神々ですら封印できなかった星喰い龍が……。リアム王子の『餌付け』一つでペットになったぞ……」
「俺たちが今まで信じていた『最強』や『絶望』という言葉は、あの一家の中では辞書にも載っていないようだ……」
かつて「リアムは魔獣の餌にでもなればいい」と吐き捨てた元調教師の男は、伝説の龍がリアムの子供に腹を見せて甘える姿を見て、「俺のキャリアは何だったんだ……」と、そのまま隠居してウサギの飼育を始めたという。
「さあ、ヴォルガデス君。明日からは子供たちの通園バス(次元移動用)として手伝ってもらうからね」
光るパパ、甘える元魔龍、そして元気な12人の子供たち。
リアムの周りには、もはや敵など存在せず、ただ「さらに賑やかになる日常」があるだけだった。




