第59話:光に導かれし女神と、12人の「嫁」面接
リアム一家の幸せを具現化した「巨大黄金像」から放たれるポジティブ波動は、ついに次元の壁をも突き破った。
ある朝、リアムが黄金像の足元で、子供たちに「宇宙和牛のミルク」を飲ませていると、空からキラキラとした羽衣を纏った一人の美少女が降ってきて、リアムの目の前で華麗に(少しドジに)着地した。
「……あいたたた。……あ! 見つけた! 宇宙を照らす極上の光の源、あなたですね!」
彼女は、隣の次元にある「神々の黄昏一歩手前」の世界からやってきた迷子の女神・ルルだった。彼女の世界は今、絶望と暗雲に包まれており、リアムの黄金像から放たれる「圧倒的リア充オーラ」を救いの光と勘違いして、命がけで転移してきたのだ。
「お願いです! 私をあなたの『専属メイド』として雇ってください! この光を浴びていないと、私の神格が消えてしまいそうなんです!」
「「「「「ちょっと待ちなさい(待ってくださいな)。」」」」」
女神ルルがリアムの足に縋りつこうとした瞬間、背後から12人のヒロインたちが、物理法則が歪むほどの威圧感と共に現れた。
「……マスター。新しい『不純物』、検知。……メイド? 間に合ってる。……私が影で全部やってる」
セレスの瞳が「虚無」の魔力で深淵のように冷たく光る。
「そうですわ! 聖王宮の秩序は、私たち12人が守っております。……どうしてもというなら、私たちが用意する『嫁候補兼メイド選別試験』を受けていただきますわ!」
エルナが、どこから取り出したのか分厚い「面接シート」をルルの目の前に突きつけた。
面接会場は、黄金像の頂上。
試験官は12人の最強ヒロイン、そして見学者として12人の最強ベビーたちが並ぶ。
「質問1:リアム様が朝起きて最初に食べたい『宇宙の真理』を練り込んだトーストの焼き加減は?」(エルナ)
「質問2:パパの背中を流すとき、泡立てるべき銀河の石鹸の回数は?」(子供たち:キャッキャ!)
「えっ、えええ……!? 焼き加減? 泡の回数? ……そ、そんなの神典には書いてありません!」
女神ルルは、彼女の世界では「崇められる対象」だったはずが、ここでは「リアムへの愛」のレベルが低すぎて、ただの無能扱いされてしまった。
この様子を中継で見ていた旧帝国の人々。
「……見ろ。隣の世界の女神さまが、リアム王子の嫁たちに正座させられて説教されているぞ……」
「俺たちが『無能』だと思っていた男は、もはや神すらも求人に応募するブラック企業の社長(天国)のようだ……」
かつてリアムを「神に見捨てられた子」と呼んだ司教は、本物の神がリアムに跪く姿を見て、ついに信仰の対象を「リアム像」へと切り替え、毎日黄金像に向かって五体投地を始めるのだった。
結局のところ
「まあまあ、みんな。そんなに怖がらせないで。……ルルちゃん、君の世界が大変なら、僕の作った『特製おにぎり』を持っていきなよ。これ、食べれば世界が一つ再生するから」
リアムが手渡したのは、梅干しの代わりに「滅びかけた星の核」を塩漬けにしたおにぎりだった。
それを受け取った女神は、その一口の美味さとエネルギーに涙し、「私、この味を広める伝道師になります!」と、嫁になるのを諦めて(命を守るために)自分の世界へと帰っていった。
「……ふぅ。また平和になったね」
リアムが微笑むと、12人のママたちは「油断大敵ですわ!」と、リアムの腕をより一層強く抱きしめるのだった。




