第58話:神器爆発! 家族25人の「黄金」記念写真
「母なる海の銀河」から無事に帰還したリアム一家。
聖王宮の広大な庭園(今や一つの惑星規模)には、お土産の「猫型ブラックホール掃除機」が元気に走り回り、子供たちは海竜のぬいぐるみ(本物の幼体)を抱えてはしゃいでいる。
「……マスター。旅の思い出、記憶だけじゃ足りない。……記録に残したい。……家族写真、撮ろう」
セレスがどこからか、伝説の職人が神の骨を削り出して作ったとされる神器『万象記録の魔導カメラ』を取り出してきた。
「いいね、セレス! よし、みんな並んで! 25人全員入るように、空間をちょっと圧縮するよ」
リアムを中心に、右側に聖女エルナ、左側に魔族のセレス。その周囲を10人の妃たちが囲み、足元や肩の上には12人の最強ベビーたちが鈴なりになっている。
「はい、チーズ!」
リアムがシャッターを切った瞬間だった。
25人から放たれた「溢れんばかりの幸福感」と「規格外の魔力」が、レンズを通じてカメラ内部に凝縮された。
ピキピキピキ……ッ!
「あ、あれ? カメラが熱いぞ?」
次の瞬間、神器であるはずのカメラが、眩い黄金の光を放ちながら膨張。あまりの多幸エネルギーを処理しきれず、カメラそのものが「純金製のリアム一家の巨大彫像」へと物質変化してしまったのだ。
「「「「ええええええぇぇぇ!!?」」」」
「……マスター。カメラ、死んだ。……代わりに、不滅のモニュメントが生まれた。……これ、宇宙のどこからでも見えるレベル」
庭園にそびえ立った高さ300メートルの黄金像からは、見ているだけで寿命が1000年延び、あらゆる悩みが消え去るという「超・ポジティブ波動」が全宇宙へ向けて放射され始めた。
その頃、旧帝国の跡地では、絶望の中で互いを罵り合っていた元貴族たちが、空に突如現れた「黄金のリアム一家像」の輝きを浴びていた。
「……おお、なんという温かい光だ……。私は……私は何て小さなことで悩んでいたんだ……」
「リアム様……。我々を捨てた貴方は、今や宇宙の太陽そのものになられたのですね……」
あまりの幸福波動に、帝国の悪党たちは戦意を喪失。自分たちの「ざまぁ」な人生を悔い改め、全員がボランティア活動に目覚めるという、ある意味で最も残酷な「精神的浄化(強制)」が完了してしまった。
「カメラが壊れちゃったのは残念だけど……。まあ、これだけ大きい写真(像)なら、みんな忘れないよね」
リアムが苦笑いしながら像の足元に腰を下ろすと、12人の子供たちが黄金の自分の像に登って遊び始めた。
「パパ、きんきらー!」「パパ、おっきいね!」
「そうだね。……じゃあ、明日はこの像の周りに、みんなで遊べる『宇宙一の遊園地』を作ろうか!」
リアムの親バカは、ついに「宇宙のランドマーク」を作り上げる域にまで達していた。




