第57話:砂遊びの戦利品と、呪われたブラックホール
「母なる海の銀河」でのバカンスも最終日。12人の赤ん坊たちは、砂浜(真珠の惑星)で思い思いの砂遊びに興じていた。
リアムがママたちと特製の海鮮バーベキュー(銀河伊勢海老の直火焼き)を準備していると、子供たちのリーダー格であるセレスの息子が、何か重いものを引きずりながらやってきた。
「パパ……これ、掘った。……黒いの、光ってる」
見れば、赤ん坊が小さな手で掴んでいるのは、周囲の光と空間を歪めながら飲み込む、禍々しい「封印されたブラックホール」だった。
「ひ、ひえぇぇ!? それは数億年前に神々が宇宙のゴミを処分するために封印した『虚無の特異点』じゃないか!」
遠巻きに見ていた海竜たちが、恐怖で海水を逆流させる。
触れただけで魂ごと消滅するはずの呪いの塊。しかし、赤ん坊はそれを「泥団子」のようにこねて遊んでいた。
「あ、危ないよ! ……って、もう遊んじゃってるね。どれ、パパが見てあげよう」
パパのリメイク魔法:宇宙一の「お掃除ロボ」
リアムは赤ん坊からブラックホールを受け取ると、その凶悪な引力を指先一つで手懐けた。
『古代魔法:【因果再編・万能吸引】』
リアムが魔法をかけると、銀河を滅ぼすはずの特異点は、可愛らしい猫型の球体に姿を変えた。
「はい、これでお掃除ロボットの完成だ。これで宮殿の隅っこに溜まる魔力の塵も、全部吸い取ってくれるよ」
「……マスター。発想が、主夫。……でも、便利」
セレスが感心したように、猫型ブラックホールの頭を撫でる。ブラックホールは「ゴロゴロ」と空間を震わせながら、リアムに懐いてしまった。
旧帝国の「大掃除」
一方、この様子を中継で見ていた旧帝国の生き残りたちは、絶望を通り越して「虚無」を感じていた。
「おい……俺たちがかつて『国の終焉をもたらす厄災』として語り継いできた禁忌のブラックホールが……。あのアホみたいな王子の手で『自動掃除機』にされたぞ……」
「我々の恐怖の歴史とは一体何だったんだ……」
かつてリアムに「お前はゴミ箱がお似合いだ」と言い放った元同級生のケビンは、本物のブラックホールがゴミを吸い取る光景を見て、自分がそのゴミ以下であるという事実に気づき、静かに涙を流した。
帰路の空に
バカンスを終え、キャンピングカー(次元移動モード)で王国へ戻るリアム一家。
車内では、新しい「お掃除ロボ」が子供たちと一緒に跳ね回り、12人のママたちは満足そうにリアムの肩で眠りについている。
「……ふふ、お土産もできたし、明日からはまた、みんなで楽しく暮らそう」
リアムがハンドルを握ると、キャンピングカーは次元の荒波を滑るように進み、楽園へと帰還していく。




