第56話:煌めく銀河のビーチと、12人の女神の競演
「母なる海の銀河」の波打ち際。空には七色の恒星が輝き、砂浜は細かく砕けた真珠のように白く光っている。
子供たちが懐かせた海竜たちと遊んでいる隙に、12人のママたちの間で「誰が一番リアムをときめかせるか」という、静かな、しかし熾烈な火花が散っていた。
「……マスター。海といえば、これ。……私のコンセプトは『深淵のマーメイド』」
トップバッターのセレスが、自身の影を編み上げたような漆黒のビキニで現れた。白磁のような肌と黒い水着のコントラストに、リアムは思わず息を呑む。
「……マスター、目が泳いでる。……合格」
「ちょっと待ってくださいな! 聖女たるもの、海でも気高く、かつ大胆であるべきですわ!」
次に現れたエルナは、純白のレースを贅沢にあしらった、清純さと色気が同居するハイレグ水着。彼女が歩くたびに、周囲の空間に「浄化の光」が舞い散る。
「リアム、私のは『戦う王女の休日』よ!」
カリーナは、獲物を狩るような豹柄のマイクロビキニ。
アイリスは、騎士の誇りを感じさせるメタリックな輝きの競泳型だが、その肉体美は隠しようもない。
その後も、リヴィア、メロディ、ルミナ……と、銀河中の美を凝縮したような12人のヒロインが、リアムのために用意した「勝負水着」を次々と披露していく。
視線がリアムに集中する。
「え、ええっと……。みんな、本当に綺麗だよ。……本当だよ?」
あまりにも眩すぎる12人の女神たちの姿に、リアムの心拍数は限界突破。彼の「古代魔力」が感情の高ぶりと共振し、鼻血が出そうになった瞬間、その膨大なエネルギーが宇宙空間へと漏れ出した。
ドォォォォォォォン!!!
リアムの背後の宙域で、彼の漏れ出た魔力を核として、新しい「愛の恒星」が誕生した。
「あ、あはは……。ごめん、あまりにみんなが素敵だから、魔力が暴走しちゃったみたいだ」
「「「「まあ……!!」」」」
自分たちの姿を見てリアムが星を作ってしまうほどの衝撃を受けたことに、ママたちは大満足。コンテストは全員優勝という形で幕を閉じた。
一方、この様子を(もはや自虐的な趣味として)魔法の鏡で覗き見ていた帝国の元貴族たちは、画面越しに放たれた「愛の恒星」の光に目を焼かれていた。
「見ろ……リアム王子の鼻血(に近いエネルギー)だけで、新しい太陽が生まれたぞ……」
「俺たちは……あんな次元の違う幸せの中にいる男を、暗い牢獄に閉じ込めようとしていたのか……」
かつてリアムに冷たく当たった女官たちは、鏡に映るヒロインたちの圧倒的な美しさを前に、「自分の鏡を見るのが嫌になった」と、次々と鏡を叩き割ったという。
騒動の後、リアムは12人のママたちに囲まれながら、砂浜で夕日を眺めていた。
「……マスター。次も、またみんなで来よう。……今度は、子供たちが歩けるようになった頃に」
「うん、そうだね。……世界はこんなに広いんだから、ずっと一緒にいよう」
リアムがそっとセレスの肩を抱くと、11人のヒロインたちも一斉にリアムに寄り添った。
家族25人の絆は、誕生したばかりの新星よりも熱く、銀河の夜を照らしていた。




