第50話:銀河を揺らす12の産声と、神々の平伏
その日は、宇宙の全ての星々が整列し、銀河中の魔力が一点――スローライフ王国の聖王宮へと収束する、運命の特異点となった。
「……う、生まれる! マスター、お腹の中で、宇宙が……爆発してる!」
セレスが叫んだ瞬間、聖王宮から12色の光の柱が天を突き抜けた。
リアムは慌てて、この日のために用意した『古代魔法:【万象安産・無痛結界】』を最大出力で展開。12人のヒロインたちの手を、自分の分身を使って同時に握りしめた。
「大丈夫だよ、みんな! 痛いのは全部、僕の魔力が肩代わりするからね!」
その瞬間。
オギャアァァァァァァァァァ!!!
12の産声が重なった。
それは単なる赤ん坊の泣き声ではなかった。
• 泣き声一つで、枯れていた地上の大地が楽園へと変わり、
• 泣き声二つで、寿命で消えかかっていた恒星が若返り、
• 泣き声三つで、旧帝国に蔓延していた病がすべて浄化された。
あまりにも強大な「祝福の波動」に、全宇宙の神々、魔王、そして異次元の覇者たちが一斉にその場に膝をつき、新王たちの誕生を祝福せざるを得なかった。
数時間後。
そこには、12人の美しい母親たちに抱かれた、12人の「天使のような魔王(赤ん坊)」たちがいた。
「見て、リアム様……。この子、生まれたばかりなのに、手から小さな銀河を作って遊んでいますわ……」(エルナ)
「……マスター。この子、私の『虚無』の魔力を全部吸い取って、ミルクに変えちゃった。……すごい」(セレス)
赤ん坊たちは、それぞれ母親の最強の特性と、リアムの底知れない「創造魔法」を受け継いでいた。
一人が笑えば宇宙の魔力濃度が上がり、一人が泣けば次元に亀裂が入る。
「あはは……。これは、ガラガラじゃなくて『宇宙の安定装置』をおもちゃにしないといけないね」
リアムが赤ん坊の一人を抱き上げたとき、天から黄金の文字が現れた。
『称号:【銀河の王】が消失。……新たな称号:【万物之父】を獲得しました』
この光景を、遠く旧帝国の廃墟から見上げていた皇帝は、ついに正気を失った。
「……産声だけで、国が……国が黄金に変わった……。我らが一生をかけて築こうとした栄華を、あの子たちは『泣き声一つ』で成し遂げたというのか……!」
皇帝は、かつてリアムに貰った「宇宙和牛の骨」を握りしめ、自分たちがどれほどの「神」を追放したのかを悟り、ただただ笑い転げるしかなかった。
「さあ、みんな! 12人のパパは忙しくなるぞ! まずは……12人分のお風呂を沸かさなきゃね!」
リアムの指先から放たれた「お湯」は、もはや全宇宙を癒やす「聖なる生命の水」となっていた。




