第49話:惑星規模の西松屋と、帝国のハローワーク
「……マスター。子供たち、12人もいる。……今の宮殿じゃ、遊ぶスペース、足りない。……銀河一つ分くらい、プレイルームにしたい」
お腹をさすりながら、セレスが淡々と、しかしとんでもない要求を口にする。
「そうだね。おもちゃも12倍必要だし……よし、隣の空いている銀河に『ベビー用品専用の惑星』を作っちゃおうか」
リアムが指を鳴らす。
『古代魔法:【万象創造・銀河モール】』
何もない真空の宙域に、突如として巨大な土星のような環を持つ惑星が出現した。ただし、その環はすべて「最新のベビーカー」や「最高級のオムツ」が流れるコンベアベルトであり、地表はすべて「転んでも痛くないマシュマロ素材の大地」でできている。
「な、なんですかこれぇぇ! 私が一生かかって稼ぐ金額より、この惑星の『砂の一粒』の方が価値があるですよ!」
商人のミーシャが、あまりの規模に泡を吹いて倒れそうになる。
一方、この巨大モールの運営には膨大な「人手」が必要だった。
そこに目をつけたのが、リアムの「雑巾」のおかげで命だけは繋いでいるものの、経済が完全に死んだ旧帝国の貴族や騎士たちだ。
「……お願いだ。何でもする! あの惑星の『おもちゃの動作確認係』でもいい、雇ってくれ!」
かつてリアムを「無能」と蔑んだ元宮廷魔導師たちが、プライドを捨てて面接に並ぶ。
面接官を務めるのは、厳しい眼差しをしたアイリスだ。
「……貴殿は、リアム様が幼少期に書いた『魔法の理論書』を、鼻で笑って破り捨てた記録があるな。不合格だ。……隣の『宇宙和牛の糞尿処理係』なら空きがあるが?」
「く、屈辱だ……。だが、あそこの食堂で出る『余り物のスープ』一杯で、魔力が10年分回復すると聞く。……やらせてください!」
かつての権力者たちが、リアムの子供たちのために「泥にまみれて働く」ことで、間接的に帝国への「ざまぁ」が完成していく。
モールの中央にある「胎教センター」では、先代聖王アストライアが11人の妊婦ヒロインを前に、講義を行っていた。
「いい? 坊やたちの子供は、生まれた瞬間に『宇宙の法則』を書き換える力を持つわ。……だから、最初の言葉が『パパ、おっぱい』じゃなくて『全次元、平伏せ』にならないように、私が精神修養を教えてあげるわ」
「アストライアさん、それは胎教というより『魔王の育成』になっていませんか……?」
リアムが苦笑いしながら、特製の「つわり軽減ハーブティー(銀河の雫入り)」を配って回る。
12人のヒロインがリアムの愛を一身に浴び、宇宙がかつてないほど「家族の形」へと収束していく。




