第48話:一夜の奇跡と、銀河最強の産声
翌朝。スローライフ王国の聖王宮から、かつてないほど純粋で強大な「生命の奔流」が黄金の光となって宇宙全土へ放たれた。
寝室の巨大ベッドの上で、リアムは文字通り「真っ白な灰」のようになって横たわっていた。
「……はは、みんな元気すぎるよ……。僕の古代魔力が、全部吸い尽くされた気分だ……」
だが、その傍らに座る11人のヒロインたちの表情は、昨日までとは一変していた。
エルナは慈愛に満ちた聖女の微笑みを浮かべ、リヴィアは剣を置いて優しく自分の腹部をさすり、アイリスは騎士としての険しさを完全に消して、至福の表情で空を見上げている。
「……マスター。起きて。……みんな、私と同じ『旋律』になった。……すごい。12個の新しい銀河が、ここで拍動してる」
先に懐妊していたセレスが、11人の手を取りながら静かに告げた。
そう、リアムの規格外の魔力と、11人の切実な愛が結びついた結果、「ヒロイン全員が同時に懐妊する」という、確率論を次元ごと破壊する奇跡が起きたのである。
「リアム様……ありがとうございます。私、世界で一番幸せな聖女ですわ……!」
「私たちの子供が全員揃ったら、それだけで宇宙最強の軍団が作れますね、リアム様」
幸せの絶頂に沸く王宮。しかし、その強大すぎる生命エネルギーの誕生に、宇宙のパワーバランスが崩れ始めた。
あまりにも強力な「12人の子供」の魔力を感じ取り、旧帝国の跡地に居抜きで引っ越してきた「異次元の魔王」が、真っ青になって挨拶(命乞い)にやってきた。
「あ、あの……隣の国に越してきた魔王ですが……。先ほどから漏れ出している『赤ん坊のプレッシャー』で、我が軍の魔物たちが全員、恐怖で卒倒してしまいまして……。静かにしていただけないでしょうか……?」
魔王が震えながら差し出したのは、魔界の至宝とされる「呪いのダイヤモンド」。
「あ、ごめんね。今、みんなで胎教のために宇宙を掃除してたんだ。……その石、ちょうどいいや。子供たちの『ガラガラ』の重しに使うよ」
リアムが指先でダイヤモンドに触れると、呪いが一瞬で浄化され、一撃で銀河を粉砕するほどの質量を持つ「世界一重いガラガラ」へと作り替えられた。
「ひいいっ! 呪いの秘宝を子供のおもちゃに!? 申し訳ありませんでした、すぐに出ていきますぅぅ!」
魔王は、自分が「魔王」であることすら忘れて、隣の銀河まで全速力で逃げ帰っていった。
「さあ、みんな。お腹に障るから、変な奴の相手は僕に任せて。……今日は、12人分のご馳走を作るからね!」
リアムの「パパとしての伝説」は、まだ産声すら上がっていない段階で、すでに全宇宙を震え上がらせていた。




