第47話:11人の宣戦布告と、最強のベビー服
宇宙の果てから「黄金の安産林檎」を持ち帰ったリアム。セレスがその林檎を一口齧ると、彼女の周囲に聖なるオーラが漂い、お腹の中の命が「パパ、ありがとう!」と言わんばかりに温かい魔力の波動を返してきた。
その光景を、11人のヒロインたちが羨望と、燃え上がるような闘志の入り混じった目で見つめていた。
「……セレスさん、ずるいですわ。あんなに幸せそうな顔をして……。私も、リアム様の遺伝子を宿した『聖なる御子』を抱きたいですわ!」
エルナが聖女の杖を握りしめ、鼻息荒く宣言する。
「私だって! リアム様との子供なら、宇宙最強の剣士になるに違いないわ。今から道場を建てて待っているというのに!」(リヴィア)
「……ふふ、私の歌を子守唄にして育つ子は、銀河を癒やす王になるわね」(メロディ)
こうして、第1回「リアム様の次のお相手は私だ会議」が勃発した。
「みんな、落ち着いて……。あ、そうだ、生まれてくる子のために、最高に安全な服を作らなきゃ」
リアムは逃げるように裁縫セット(古代の魔糸と銀河の針)を取り出した。
『古代魔法:【万物防護・至高の産着】』
リアムが編み上げたのは、見た目はふわふわの綿毛のようだが、その実は「超新星爆発に耐え、因果律の干渉すら跳ね返す」という、宇宙で最も硬く、そして柔らかい服だった。
そこへ、空気を読まずに帝国の使者がやってきた。
「リ、リアム殿下! 皇帝陛下より、生まれてくるお子様に『帝国第一継承権』を譲り渡すとの……」
「……邪魔。今、マスターは愛を編んでる。……消えて」
セレスが指先一つ動かさず、使者を空間の裂け目へと放り込んだ。もはや彼女にとって、帝国の権威など赤ん坊の産着の糸屑ほどの価値もなかった。
夜。
静かになった宮殿で、リアムが一人バルコニーで月を眺めていると、背後から11人の気配が忍び寄る。
「リアム様……今夜は、私たち全員でお話ししたいことが……ありますの」
エルナを筆頭に、ドレスアップした11人のヒロインたちが、逃げ道を塞ぐようにリアムを囲んだ。
「え、あ、みんな? どうしたの、そんなに気合の入った格好で……」
「……問答無用! 宇宙の理に従い、最強の種を保存する義務が我らにはあるのだ!」
カリーナが野性味あふれる笑みでリアムを担ぎ上げ、巨大なキングサイズのベッドへと運んでいく。
リアムの「パパとしての忙しい夜」は、まだ始まったばかりだった。




