第46話:銀河一の過保護パパと、安産祈願の特異点
「セレス、歩いちゃダメだ! 床の摩擦係数をゼロにして、僕の魔力で浮遊して移動して!」
「……マスター、やりすぎ。……私、これでも魔族の始祖。……歩ける」
セレスの懐妊が判明してからというもの、リアムの「スローライフ」は「ハイパー過保護ライフ」へと変貌していた。
リアムが指を鳴らすだけで、セレスが歩く先の空気は常に最高級の酸素濃度に保たれ、床にはどこからともなくふかふかの雲が敷き詰められる。
そんなリアムの様子を見て、他のヒロインたちも黙ってはいない。
「リアム様! セレスさんの安産のためには、伝説の『恒星の雫』で作った特製スープが必要ですわ! 私が聖女の祈りで精製して差し上げます!」
「……いいえ、胎教には私の歌(周波数)が一番。宇宙の誕生時の音を再現して、脳を活性化させるわ」
エルナとメロディが火花を散らす中、先代聖王アストライアが呆れたように鼻を鳴らした。
「あんたたち、甘いわね。本物の安産には、宇宙の果てのその先、『虚無の庭』にしか咲かない【黄金の安産林檎】が必要よ。あれを食べれば、生まれた瞬間から全属性魔法が使える健康優良児になるわ」
「「「それだ!!!」」」
リアムの目がガチ勢のそれに変わった。
「よし、みんな。ピクニックの準備だ。宇宙の果てまで、林檎を獲りに行くよ!」
宇宙の果てへ、爆走する空中島。
リアムは空中島のエンジンに直接、自分の余剰魔力を叩き込んだ。
『古代魔法:【超時空・パパの爆走(お父さん、急いでるんだ)】』
一瞬で数万光年を跳躍し、空中島は宇宙の終わり、次元の壁が剥き出しになった「虚無の庭」へと到達した。
そこには、宇宙の秩序を守る守護者――「次元の門番」が立ち塞がっていた。
『止まれ、定命の者よ。ここより先は神々の領域……』
「どいて。今、妻が林檎を食べたがってるんだ」
リアムが軽く指先で「しっ」と払うと、銀河を滅ぼす力を持つ門番が、埃を払われるかのように次元の彼方へ吹き飛ばされた。
「……マスター。門番、泣いてる。……かわいそう」
「大丈夫、後で美味しいお菓子を置いておくからね」
リアムは黄金に輝く林檎の木を見つけると、一番大きく、一番生命力に溢れる実を収穫した。
その瞬間、宇宙全体に「祝福の光」が駆け抜け、あまりの瑞々しさに全宇宙の魔力濃度が3%ほど上昇したという。




