第45話:銀河を継ぐ者と、神々の祝杯
神々をもてなした狂乱のパーティーから数ヶ月。新国家「スローライフ王国」は、もはや地上のどの国とも、宇宙のどの文明とも異なる、文字通りの「神域」へと進化していた。
そんなある日の朝。
聖王宮のバルコニーで、リアムが「太陽の光で作った紅茶」を飲んでいると、一人の女性がそっと寄り添ってきた。
「……マスター。私、最近、体の芯が熱い。……魔力が、別の誰かのリズムで鼓動してる。……これ、マスターの魔法?」
無表情だったセレスが、どこか戸惑いながら、しかし愛おしそうに自分の腹部に手を当てた。
「えっ……? それって……」
リアムが慌てて『古代魔法:【生命解析・因果の鑑定】』を発動する。
その結果、リアムの脳内に響いたのは、全知全能の魔導書アストライアですら驚愕するアナウンスだった。
『個体名:セレスの体内に、「銀河の創造主」に匹敵する魔力源を確認。……おめでとうございます、リアム様。第一子の宿りです』
「「「「「な、なんですってぇぇぇ!!?」」」」」
どこで聞き耳を立てていたのか、エルナ、リヴィア、アイリスら残りの11人のヒロインたちが、音速を超えて部屋に突入してきた。
「セレスさん! 抜け駆けは禁止ですわ! 聖女たる私の子供こそが、次代の聖王にふさわしいはずですのに!」(エルナ)
「……いや、私とリアム様の子こそが、銀河最強の騎士となる……!」(アイリス)
「ふん、私の子なら、生まれた瞬間に宇宙海賊王ね!」(カリーナ)
宮殿内は一瞬にして、お祝いムードという名の「子作り競争(二回戦)」の嵐に飲み込まれた。
一方、この知らせは神々を通じて、あの「旧帝国」にも届いた。
「……リ、リアムに子供だと? その子は、生まれた瞬間に世界を支配する力を……。ああ、もし私が彼を追放していなければ、その子は帝国の……帝国の宝だったのに……っ!」
皇帝は、手にした「宇宙の骨(余り物)」を握りしめ、二度と手に入らない輝かしい未来を想って慟哭した。
リアムは、騒がしいヒロインたちに囲まれながら、セレスの小さな手に自分の手を重ねた。
「……そうだね。王座なんていらない。この子が、みんなと一緒に笑って過ごせる『もっと平和な宇宙』を作らなきゃ」
リアムの決意と共に、彼の魔力が宇宙の果てまで広がり、新たな命を祝福するように、銀河中に「光の花」が咲き乱れた。




