第43話:皇帝の訪問と、次元違いの「おもてなし」
リアムが建国した新国家「スローライフ王国」の城門に、一両の、ひどく煤けた馬車がたどり着いた。
護衛もいない。かつての豪華な装飾は剥げ落ち、馬を引くのは、泥にまみれたかつての帝国宰相だった。
「……リ、リアム。そこにいるのだろう……?」
馬車から這い出してきたのは、見る影もなくやつれた皇帝だった。
彼は門番をしている一万人の騎士たちの圧倒的な武具(宇宙の超合金製)を見ただけで、腰を抜かして震えだした。
「父上、どうしたの? そんな格好で」
リアムが、黄金の刺繍が施された「普段着(実は神話級の防具)」で現れる。
「……許してくれ、リアム。私が間違っていた。帝国はもう終わりだ。……頼む、私をこの国の、せめて『庭師』としてでも雇ってくれないか? あの『雑巾』の力だけでは、もう腹は満たされないのだ……!」
皇帝が地べたに這いつくばり、リアムの靴を舐めんばかりに懇願する。だが、その背後に立つ12人のヒロインたちの視線は、絶対零度よりも冷たかった。
「……庭師? 笑わせないで。マスターの庭に、貴方のような『枯れた心』の持ち主はいらない」
セレスが指を鳴らすと、皇帝の周囲に影の檻が立ち上がる。
「リアム様、この者は未だに『自分を雇え』などと不遜なことを。……処刑、あるいは宇宙の果てへ追放が妥当かと」
アイリスが剣の柄に手をかける。
「まあまあ。……父上、庭師はいっぱいなんだ。でも、お腹が空いてるなら、これを持っていってよ」
リアムが手渡したのは、昨日の夕食で余った「宇宙和牛の骨」だった。
「こ、これは……!? 凄まじい生命エネルギーだ! これ一本あれば、帝国の全人口を一年養えるスープが取れる……!」
「それを煮込んで、みんなで分け合えばいいよ。……じゃあ、僕たちはこれから『建国記念ダンスパーティー』の練習があるから」
リアムが門を閉めると、皇帝はその場に崩れ落ちた。
自分たちが「無能」と捨てた息子から、「余り物の骨」を恵んでもらわなければ生きていけないという現実。それがどんな罵倒よりも、皇帝の心をズタズタに引き裂いた。
誰が「最初」に踊るのか?
パーティの火蓋が落とされた。
城門の内側では、別の意味で深刻な戦争が始まっていた。
「リアム様! 最初のダンスは、最初に貴方を見出したこの私であるべきですわ!」
「……いいえ。契約の深さで言えば、私が最適」
「宇宙の女王たる私が、リアムを引き立ててやるわよ!」
「先代聖王の私が、正しいステップを教えてあげるわ!」
12人のヒロインが、リアムを囲んで火花を散らす。
その魔圧だけで、新しく建てた宮殿がミシミシと悲鳴を上げ、天候すらも雷雨と晴天が交互に入れ替わる異常事態に。
「あはは……。じゃあ、みんなで一緒に踊れる魔法を考えなきゃ……」
リアムの苦笑いとともに、全銀河から招待された「神々」や「異星の王」たちが、続々と楽園の門を叩き始めていた。




