第40話:建国宣言? いえ、ただの「広い庭」が欲しかっただけです
「リアム様、帝国の連中が、貴方の『雑巾』を神殿に祀って拝み始めましたわ。滑稽すぎて涙が出ますわね」
エルナが空から地上を見下ろし、呆れたように笑った。
地上の帝国は、リアムの「掃除のついで」で豊かになった。だが、それゆえに皇帝たちは勘違いを始めた。「リアムをこの国に留めれば、帝国は永遠に銀河を支配できる」と。
「……マスター。あいつら、また変な計画立ててる。……『リアムを薬で眠らせて、帝国の姫と無理やり結婚させる』……。……消していい? 今すぐ、国ごと」
セレスの影がドロリと広がり、帝都全体を飲み込もうとする。
「待って、セレス。争いは良くないよ。……そうだ、あそこなら誰にも邪魔されないかな」
リアムが指差したのは、帝国の隣にある、誰も住めないと言われた死の荒野「絶望の不毛地帯」だった。
「よし。あそこに僕たちの『家』を作ろう。……『古代魔法:【大陸再定義・エデン・プロジェクト】』」
リアムが指をパチンと鳴らした瞬間、全銀河が鳴動した。
空中島から降り注ぐ黄金の光が荒野を焼き、わずか数秒で、そこには「地上のどの国よりも美しく、豊かな大地」が出現した。
• 川には魔力を回復させる聖水が流れ、
• 山には最高級の鉱石が宝石のように露出し、
• 空気そのものが万病を治す癒やしの力を持つ。
「今日からここを『リアムの庭』にするよ。あ、一万人の騎士団のみんなも、ここに住んでいいよ。……あ、ついでに国旗も作らなきゃね」
リアムが適当に「エプロンをつけた猫」の紋章を空に浮かべた。それが、新国家「スローライフ王国」の誕生の瞬間だった。
一方、それを見ていた帝国は大パニックである。
「な、なんだあの土地は!? 我が国の領土よりも遥かに豊かではないか!」
「リアム殿下! いえ、リアム陛下! どうか我が国の民も、その国に入れてはいただけないでしょうか!?」
国境線に押し寄せる帝国の貴族や平民たち。しかし、アイリス率いる一万人の騎士団が、冷酷に告げる。
「この国への入国条件はただ一つ。『リアム様を一度でも無能と呼んだ者は、足を踏み入れることすら許されない』……。つまり、帝国の人間は全員、永久追放だ」
救われたはずの帝国の人々は、目の前にある「本物の楽園」に一生入れないという、死ぬより辛い「ざまぁ」を味わうことになった。
「さあ、みんな! 新しい家もできたし、今日は12人のみんなと一緒に、一番大きな部屋で寝ようか!」
「「「「「……えっ!!?」」」」」
12人の最強ヒロインたちが、初めて戦闘以外で顔を真っ赤にし、銀河が揺れるほどの動揺を見せた。




