第38話:元婚約者の再臨と、格付け完了のお知らせ
リアムがボロ小屋を「神話級の隠れ家」にリフォームしていると、着飾った一団がやってきた。
中心にいるのは、かつて「無能な王子に用はない」と婚約を破棄し、リアムを嘲笑った隣国の公爵令嬢、ベアトリスだった。
「あら、リアム? 噂を聞いて来てみれば、相変わらずこんな汚らしい小屋で……えっ!?」
彼女の言葉が止まる。
ボロ小屋のドアから、ダイヤモンドのドレスを纏ったエルナと、聖騎士の鎧に身を包んだリヴィアが、リアムに「あーん」と果実を食べさせているのが見えたからだ。
「……マスター。あの派手な女、誰? ……マスターを汚いと言った。消していい?」
セレスが虚無の魔力を指先に灯しながら、屋根から音もなく降りてくる。
「ま、待ちなさい! 私はベアトリスよ! リアムの『元』婚約者の! ……リアム、何なのよその女たちは。どこかの安酒場の給仕でも雇ったの?」
ベアトリスが勝ち誇ったように笑おうとした、その時。
空を覆っていた光学迷彩が、アストライアの悪戯で一瞬だけ解除された。
ゴゴゴゴゴ……!
頭上に現れたのは、太陽すら隠すダイヤモンドの巨大島と、その周囲を埋め尽くす一万隻の宇宙戦艦。
「……ひっ!?」
ベアトリスとその取り巻きたちが、腰を抜かして地面にへたり込む。
そこへ、上空から光の柱に乗って、月の巫女ルナティアと、光の王女ルミナが舞い降りてきた。
「リアム様、宇宙の果樹園から『銀のリンゴ』を収穫して参りました。……あら、そちらの不潔な方は?」
「リアム様、この者がかつて貴方を捨てたという女性ですか? ……ふふ、なるほど。地上の『石ころ』とは、こういうものを指すのですね」
ルナティアが慈悲深い笑みで、ベアトリスの安物の宝石(それでも一国の国家予算級)を、ゴミを見るような目で見つめる。
「な、なによこれ……何が起きているのよ……!」
震えるベアトリスの前に、リアムが「はい、これ」と一つのお菓子を差し出した。
「お菓子でも食べて落ち着いてよ。……あ、それ、さっきアストライアが『失敗作』って捨てた、魔力を回復させるだけのただのクッキーなんだけど」
一口。ベアトリスが反射的にそれを食べた瞬間、彼女の全身から制御不能なほどの魔力が溢れ出した。
「あ、あああ……! 体が……魔力が……! 一生かかっても届かないはずの魔導の高みに、たった一口で……!?」
「……マスター。あの女、キャパオーバー。……あんなゴミに、マスターの手作りをあげるなんて、もったいない」
セレスが冷たく言い放つ。
かつてリアムを「ゴミ」と呼んだ女は、今やリアムの「ゴミ(失敗作)」にすら救われるという、残酷なまでの格差。
ベアトリスは、自分たちが捨てたものが「ただの王子」ではなく、「全銀河の主」であったことを悟り、絶望の中で泡を吹いて倒れるのだった。




