第33話:嫉妬の炎と、至高の愛妻弁当
「不潔……? 心外だなぁ。僕たちはただ、みんなで楽しくご飯を食べているだけだよ」
リアムは空中島の防壁を最大展開しつつ、襲い来る光子魚雷を「古代魔法:【光子吸収・エネルギー変換】」でパンを焼く熱源へと変えてしまった。
『黙れ! 我ら騎士団は数百年、清らかな独身を貫き、宇宙の秩序を守ってきたのだ! 貴様のような、十人もの美女を侍らせる不届き者は、銀河の塵となるがいい!』
騎士団総長、アイアン・メイデンが叫ぶ。だが、その声には隠しきれない「羨ましさ」の震えが混じっていた。
「みんな、お腹が空いているからイライラしてるんだね。……よし、それなら僕の『愛(物理)』を分かてあげよう」
リアムはキッチンに立ち、10人のヒロインたちの協力のもと、巨大な魔法陣を描いた。
『古代魔法:【広域概念・愛妻弁当】』
空中島のハッチが開き、中から数万個の「黄金に輝くお重」が射出された。それは、アンドロメダ騎士団の全艦艇のブリッジへと、空間転移で直接届けられる。
「な、なんだこの箱は!? ……開けるな! 罠だ! ……いや、しかし、なんて良い香りが……」
箱を開けると、そこにはエルナの聖なるおにぎり、リヴィアの情熱的な肉料理、ルナのワイルドな串焼き、そしてリアムが仕上げた「極上の出し巻き卵」が詰め合わされていた。
一口食べた瞬間、騎士団の艦隊に異変が起きた。
「う……うまい……。なんだこの、心に染み渡るような優しさは……。俺、本当は戦いたくなんてなかった。誰かと笑いながらご飯を食べたかったんだ……っ!」
モニター越しに、屈強な騎士たちが次々と号泣し、膝をつく姿が映し出される。
最後に、総長アイアン・メイデンの重厚な鎧が、あまりの多幸感にパージ(脱装)された。中から現れたのは、これまた絶世の美貌を持つ、少し寂しげな瞳の女性だった。
「……私の負けよ。剣や魔法では勝てても、この『温かさ』には勝てないわ……」
アイアン・メイデン――本名アイリスは、箸を置くと、赤くなった目でリアムを見つめた。
「……リアム様。私たち騎士団一万名、今日から貴方の『配下』……いえ、できればその、末席に加えてはいただけないでしょうか?」
「え、一万人? ……まあ、島をもう少し広げれば大丈夫かな。歓迎するよ、アイリス」
「「「一気に一万人増えたぁぁぁ!!」」」
ヒロインたちの絶叫が、アンドロメダ銀河の端まで響き渡った。




