第31話:未知の銀河へ!暗黒星雲の歌姫
「天の川銀河の料理はだいたい食べ尽くしちゃったね。よし、次はあっちの『真っ暗な場所』に行ってみよう!」
リアムが指差したのは、天文学者が「生命の存在は不可能」と断じた、光すら届かない暗黒領域ボイド・セクター。
「マスター、あそこは危険……。光がない場所には、魂を喰らう魔物が住んでいるという伝説が……」
セレスが少し不安げにリアムの腕を掴むが、新入りのルミナが胸を張った。
「大丈夫です! 私の光があれば、どんな暗闇も昼間のように照らしてみせます!」
空中島が漆黒の霧の中に突入すると、そこには驚くべき光景が広がっていた。
光のない世界で独自に劣化した……のではなく、「音と振動」だけで構成されたクリスタルの文明が存在していたのだ。
島の前に現れたのは、巨大な音叉のような形状をした宇宙船。そこから響いてきたのは、聴く者の心を直接揺さぶるような、切なくも美しい歌声だった。
「……この歌、魔力がこもっている。それも、古代魔法に近い、純粋な『響き』だ」
リアムが感心していると、音叉の船から一人の少女が姿を現した。
彼女は透き通るような青い肌に、音符のような不思議な模様が浮かぶ瞳を持つ、振動族の歌姫・メロディ。
「光を持つ者たちよ……。私たちの静寂を乱すのは誰? 私の歌で、貴方たちの心を永遠の眠りにつかせてあげましょう……」
彼女が超高周波の「死の歌」を放とうとした瞬間、リアムはいつものようにキッチン(古代魔導式)へ向かった。
「歌には、美味しいお菓子が合うと思うんだ。はい、これ。暗黒物質をちょっと精製して作った『重力フォンダンショコラ』だよ」
「なっ……私の歌を無視して、食べ物を!? ……パクッ。…………!!」
メロディの表情が劇的に変化する。
暗黒星雲の希少な重力素子を含んだショコラは、彼女たちのエネルギー源である「振動」を劇的に増幅させ、絶頂のハーモニーを彼女の脳内に響かせた。
「な、なんなのこの『震え』は!? 私の歌が……私の体そのものが、かつてないほど美しく共鳴している……っ!」
攻撃するはずだった歌姫は、その場にへなへなと座り込み、うっとりと自分自身の響きに酔いしれてしまった。
「気に入ったみたいだね。メロディ、君の歌があれば、この島での食事がもっと楽しくなりそうなんだけど、一緒に来ない?」
「……いいわ。貴方の作る『響き(味)』をもっと知りたい。私の歌は、今日から貴方だけのものよ」
こうして、記念すべき10人目のヒロイン、宇宙の歌姫が仲間に加わった。




