第29話:逆転のコレクションと、囚われの光
巨大な「鳥籠」の宇宙船、アルカ・ノア。その捕獲アームが空中島に触れるよりも早く、風呂上がりの巨神くん(防水モード)が動いた。
「……マスターノ、スローライフ、ジャマスルモノ……ハイキ。ハイキ。ハイキィィ!」
巨神は宇宙空間を蹴ると、アルカ・ノアの船体を力任せに掴み、そのまま「雑巾絞り」のようにねじ伏せてしまった。
「な、なんという馬鹿力だ……! 我が銀河最強の捕獲船が、ただの巨人に……!」
モニター越しに絶叫する執事の声。リアムはバスタオルを肩にかけ、涼しい顔で命じる。
「巨神くん、その船を島に連結して。中を見てみたいんだ。困っている人がいるかもしれないし」
島と合体したアルカ・ノアの内部は、まさに「銀河の博物館」だった。
見たこともない奇石や、宇宙の深淵に咲く花。そして、最深部のクリスタルケージには、一人の少女が閉じ込められていた。
彼女は全身が眩い光で構成されたような、「光子族」の王女、ルミナ。
「……貴方が、私を解放してくれたのですか? それとも、新しい飼い主……?」
「飼い主なんていないよ。お腹空いてる? ちょうど、土星の氷で作ったかき氷があるんだけど」
リアムが古代魔法でシロップ(魔力入り)をかけたかき氷を差し出す。
ルミナがそれを一口食べると、彼女の体はかつてないほど激しく発光し、アルカ・ノアの動力源を全て上書きしてしまった。
「美味しい……! こんなに温かくて、優しい光の味がするなんて……っ!」
ルミナの光が島全体を包み込み、空中島に「超光速ジャンプ機能」が備わった。
一方で、執事から報告を受けた真の黒幕、銀河の収集家「コレクター」は、豪華な椅子を蹴り飛ばしていた。
「おのれ……! 我が至宝のコレクションを逆に奪い、あろうことか『光の王女』まで手懐けるとは! 許さん、全銀河に賞金首として手配しろ! あの王子を捕らえた者に、星系一つをやるとな!」
リアムのあずかり知らぬところで、彼はついに「銀河一の賞金首」になってしまった。
「「「望むところですわ(ぞ・よ・マスター)!」」」
ヒロインたちは、奪い取った豪華客船の贅を尽くした内装を眺めながら、さらなる旅への意欲を燃やすのだった。




