土星の環の露天風呂と、銀河の収集家
「リアム様! 見てください、あそこの『土星の環』! カリーナさんの話だと、あそこは宇宙一の天然ミネラルが含まれた『氷の温泉』なんだそうですぅ!」
ミーシャが興奮気味に、ダイヤモンドの窓から巨大な環を指差した。
「氷の温泉……? 面白そうだね。じゃあ、ダイヤモンドの別館にそのまま引き込んじゃおうか」
リアムは再び、物理法則を無視した古代魔法を発動する。
『古代魔法:【流体捕獲・温度固定】』
土星の環から、無数の氷の塊が空中島へと吸い寄せられ、ダイヤモンドの浴槽に入った瞬間に、適温の、そして銀河の星々のようにキラキラと輝く「宇宙温泉」へと姿を変えた。
「……ふぅ。極楽ですわ。宇宙で温泉に浸かれるなんて、聖典にも書いてありませんわね」
エルナが髪をかき上げ、湯気に顔を上気させる。
ダイヤモンドの壁が透き通り、目の前には巨大な土星と、無限に広がる星海が広がる。
リヴィア、セレス、ルナ、ミーシャ、マリン、ルナティア、そしてカリーナ。8人のヒロインたちが、リアムを囲んで贅沢な湯浴みを楽しんでいた。
「リアム、アンタの魔法は本当にデタラメね……。宇宙海賊を何年もやってきたけど、こんなに幸せな気分は初めてよ」
カリーナが珍しくしおらしく、リアムの肩に頭を預ける。
しかし、その平和なひとときを破るように、ダイヤモンドの壁をコツコツと叩く音が響いた。
見れば、宇宙空間にタキシードを着た「機械仕掛けの執事」が浮いているではないか。
『失礼いたします。私は、偉大なる「銀河の収集家」様の使いでございます。主人が、貴殿が所有するその「ダイヤモンドの島」と「美しき女性たち」に深く感動され、ぜひ我がコレクションに加えたいと申しておりまして……』
「……マスター。あの鉄クズ、壊していい? ……私、誰かのコレクションになるの、嫌」
セレスが湯船から立ち上がり、濡れた肌に魔力を纏わせる。
「コレクション? ごめんね、この島も、みんなも、誰かにあげるつもりはないんだ」
リアムが穏やかに、しかし断固として断ると、執事の瞳が赤く光った。
『交渉決裂……。では、強制収容を開始します。これより本艦、銀河最強の捕獲船「アルカ・ノア」が参ります』
次元を切り裂き、空中島の数倍はあろうかという巨大な「鳥籠」のような宇宙船が出現した。
「……ちょうどいいや。あっちの船、お風呂上がりの涼み台にするには良さそうな形だね。巨神くん、ちょっと捕まえてきて」
お風呂の横で待機していた巨神が、宇宙空間へと飛び出した。




