第24話:月面の守護者と、銀のリンゴ団子
月の巫女ルナティアが加わり、空中島は「銀の園」の神殿とドッキングして、さらなる広大な敷地を手に入れた。
「リアム様、こちらが『銀のリンゴ』です。そのまま食べても美味ですが、貴方様の魔力で加工すれば、さらなる高みへ至るでしょう」
ルナティアが差し出したのは、冷たく輝く果実。
「よし、じゃあみんなで『月見団子』を作ろう。せっかく月にいるんだからね」
リアムが古代魔法の釜を取り出す。
『古代魔法:【概念変質・甘味極致】。……ついでに、隠し味にドラゴンの魔力と聖女の祈りも混ぜてみるよ』
そんな平和な調理風景を、突如として地響きが襲った。
月面の地平線から、クリスタルの砂を巻き上げて巨大な鋼鉄の巨人が姿を現したのだ。
「あれは……! 古代の防衛兵器『星喰らいの巨神』!? なぜ今になって起動したのですか!」
ルナティアが青ざめる。それは、月に不法侵入した者を排除するために、かつての月人が遺した絶対不可侵の守護者だった。
「キシャァァ……侵入者……排除……」
巨神がその巨大な腕を振り上げ、超高出力の収束レーザーを放とうとする。
「危ない! ……って、あ、そっか。ちょうどいいや」
リアムは逃げるどころか、巨神に向かってトコトコと歩み寄った。
「君、手が大きくて力持ちそうだね。……ちょっとこれ、手伝ってくれない?」
『古代魔法:【強制書き換え(オーバーライト)・お手伝いモード】』
ピピッ、という電子音と共に、巨神の赤い瞳が優しい青色に変わった。
「……リョウカイ。マスター。……ギョウズイ、コネマス」
なんと、世界を滅ぼすはずの巨神が、巨大な腕を使って「お団子の生地」を全力で捏ね始めたのだ。その力加減は完璧で、生地はこれまでにないほど滑らかで弾力のある仕上がりになっていく。
「なっ……古代の最終兵器を、餅つき機代わりに使うなんて……っ!」
リヴィアが呆然とする中で、最高級の「銀のリンゴ団子」が完成した。
「はい、みんな。巨神くんのおかげで美味しくできたよ」
月面で広げられる豪華なブルーシート(古代魔法製)。
巨神が日傘代わりになり、人魚のマリンが月の砂で造った池で泳ぎ、ドラゴン娘のルナがお団子を頬張る。
「……マスター。月、楽しい。……お団子、マスターの味」
セレスがリアムの肩に頭を乗せる。
その頃、地球では――。
天体望遠鏡で月を観察していた魔導師たちが、ひっくり返っていた。
「報告します! 月面に……月面に巨大なピクニック会場が出現! 伝説の巨神が、王子に団子を差し出しております!!」
リアムの名声(と、とんでもない噂)は、ついに星を越えて宇宙へと響き渡り始めていた。




