第19話:南の楽園と、乙女たちの水着大決戦
「リアム様! 毎日、空の上だと気が滅入るですよ! たまにはバカンス! 海で羽を伸ばすのが一番ですぅ!」
ミーシャの提案で、空中島は高度を下げ、未知の大洋に浮かぶ無人のエメラルド島へとたどり着いた。
「わあ、綺麗な海……。砂浜も真っ白だね」
リアムが浜辺に降り立つと、背後から凄まじい「熱気」が伝わってきた。
「リアム様! 見てください、この日のために……古代魔法の織機で仕立てた『聖なる水着』ですわ!」
最初に現れたのは、清楚な白のビキニを纏ったエルナ。だが、その布面積は明らかに聖女としては「攻めすぎ」だった。
「ふん、海なら動きやすさが一番だ! ……どうだ、リアム様。似合っているか?」
リヴィアは真紅の競泳タイプだが、鍛えられたしなやかな肢体が眩しい。
「……マスター。私、海、初めて。……溶けない?」
セレスは薄青のパレオを巻き、ルナは「ドラゴンは裸が正装よ!」と豪語していたが、無理やりミーシャにフリルの水着を着せられて赤面している。
「みんな、すごく似合ってるよ。……せっかくの海だし、もっと楽しくしよう」
リアムが海面に手をかざすと、再び「古代魔法」が唸りを上げた。
『古代魔法:【環境調整・常夏】。……水温を最適化。ついでに、海水を最高級の化粧水と同じ成分に変更しました』
「ええっ!? お、お肌がツルツルになるですぅ! これ、瓶に詰めて売ったら国が買えるですよ!」
ミーシャが叫ぶが、リアムはさらに指を動かす。
「あっちには大きな滑り台と、波のプールも作ってみたよ」
砂浜から海に向かって、宝石でできた巨大なウォータースライダーが出現する。もはやただの海ではなく、「神の遊園地」だ。
ヒロインたちはリアムの気を引こうと、ビーチバレーを始めるが……。
「いっけぇぇ! 聖なるスパイク!!(魔力全開)」
「甘い! 竜王のレシーブよ!!(衝撃波で海が割れる)」
ドゴォォォォォン!! と爆音が響き、島の一部が削れるほどの超次元スポーツが展開される。
「あはは、みんな楽しそうだね」
リアムが冷えたヤシの実ジュースを飲みながら微笑んでいると、沖合から巨大な影が近づいてきた。
「……マスター。何か、来る。……お魚さんじゃない」
セレスが指差した先。そこには、リアムが生み出したあまりに濃密な魔力の波動に引き寄せられた、伝説の深海族の姫が、驚愕の表情で海面から顔を出していた。
「な、なんなのですか、この芳醇な海は……!? わ、私たちの聖域よりも、ずっと清らかな魔力が溢れています……っ!」
どうやら、リアムのバカンスは、海の住人までをも虜にしてしまったらしい。




