第141話:全肯定の嵐! ~息をするだけで銀河の奇跡~
「……はぁ。幼稚園に入れば少しは厳しくしてもらえると思ったのに。どうしてこうなったんだろう……」
幼稚園の教室の隅で、黄色い帽子を被ったリアムが溜息をつきました。しかし、今日は「いい良い(141)の日」。24人の家族たちは、リアムのどんな些細な行動も「最高に良いこと」として全肯定する構えです。
「……マスター。分析。……パパが今、溜息をついた。……二酸化炭素を排出し、宇宙の炭素循環に貢献。……100点。いいえ、1000兆点。素晴らしい呼吸です」
セレスが真顔で採点し、空中に「GREAT!!」のホログラムを打ち上げます。
「リアム様! 今、溜息をつくために少しだけ眉を寄せましたわね!? その憂いを含んだ表情、宇宙の美の基準をまた更新なさいましたわ! なんて『良い』お顔なのかしら!」
エルナがハンカチを噛み締めながら悶絶。
「パパ! さっきお鼻をピクってさせたね! 筋肉の使い方が天才だよ! 良いピクピクだね!」
子供たちが次々とリアムの体に触れ、「良い筋肉」「良い体温」と連呼。
リアムが耐えかねて、椅子から立ち上がろうとすると……
「「「立った!! パパが立ったわ!! なんて力強い足取り!!」」」
クララや他のママたちが、まるで赤ん坊の初めての歩行を見たかのように拍手喝采。
「ただ立っただけだよ! 35歳(外見)の大人が立って感動しないで!」
リアムが逃げ出そうと一歩踏み出すたびに、足元に花が咲き、背景には「GOOD JOB!」「VERY NICE!」という文字が家族の手によって掲げられます。
お昼ご飯の時間になり、リアムが「嫌いなパセリ」を一口食べただけで、銀河全域に「神、苦境を克服せり」という聖なる鐘の音が響き渡りました。
「……もうやめてよ! 悪いところがあったら叱って! 僕、このままだと甘やかされすぎて溶けちゃうよ!」
リアムが半泣きで叫ぶと、家族たちは一斉に顔を見合わせ、さらに慈愛に満ちた笑顔を向けました。
「あら、自分の弱さを素直に認められるなんて……なんて『良い』子なのかしら、リアム様(園児)!」
もはや何をしても「良い」と言われる「全肯定の監獄」に閉じ込められたリアム。彼の自己肯定感は限界値を突破し、ついに体から黄金の光が溢れ出して、幼稚園の屋根を突き破るのでした。




