第14話:至高の指輪と、宣戦布告
山積みの贈り物に頭を抱えたリアムだったが、彼女たちの気持ちを無視するわけにはいかない。
「みんなの気持ちは嬉しいけど、お返しをさせてほしいんだ。……そうだ、みんなを守ってくれるような、特別な指輪を作ろう」
リアムは工房へ入り、床に転がっていた高純度の魔石(帝国なら国宝級)を手に取った。
『古代魔法:【概念武装・深淵】。付与:【所有者絶対防衛】【属性極致】【魔力増幅(無限)】』
リアムにとっては、少し頑丈なアクセサリーを作る程度の感覚だった。
だが、完成した4つの指輪は、それぞれが大陸一個を滅ぼせるほどの魔力を秘めた、文字通りの「神遺物」になっていた。
「はい、これ。エルナには聖なる光を。リヴィアには紅蓮の炎。セレスには空の静寂。ミーシャには黄金の幸運を込めたよ」
リアムから指輪をはめられ(実質的なプロポーズだと解釈した)、ヒロインたちは恍惚の表情で指輪を見つめる。
「あぁ……リアム様からの指輪……。これでもう、死んでも離れませんわ……」
「マスター、これ……一生、外さない。……指ごと、愛してる」
「な、ななな、なんですかこの魔力! ウチ、これだけで世界中の商会を買い取れるですよぉ!」
幸せな空気に包まれる空中島。
しかし、その平穏を破るように、島の周囲に巨大な影がいくつも現れた。
帝国の誇る魔導空中艦隊、計三十隻。
その旗艦から、魔導拡声器を使った尊大な声が響き渡る。
『反逆者リアム・フォン・エグゼイド! 貴様の罪は明白である! 直ちに島を明け渡し、隣国の聖女を差し出せ! 抵抗すれば、この艦隊の魔導砲で島ごと消し飛ばすのみだ!』
リアムは空を見上げ、困ったように眉を下げた。
「せっかくみんなで指輪のお祝いをしてたのに……。ねえ、ゼロ。彼らは何をしに来たの?」
「はっ。身の程知らずのゴミ掃除が必要なようです。……リアム様、あのような木っ端、貴方様が手を汚すまでもありません」
ゼロが膝をつくが、それを遮ったのは、指輪を手にして魔力が溢れ出しているヒロインたちだった。
「リアム様、お下がりください。……私たちの『愛の邪魔』をする不届き者は、この指輪の錆にして差し上げます」
聖女エルナの背後に、巨大な天使の幻影が浮かび上がる。
騎士リヴィアの剣からは、空を焼き尽くすほどの紅蓮の炎が噴き出す。
最強の力を手に入れたヒロインたちによる、帝国艦隊への「一方的な掃除」が始まろうとしていた。




