第130話:聖王、山に籠もる。~パパの吐息はマイナスイオン~
「もうダメだ……。胃カメラを宇宙中継される生活なんて、僕には耐えられない。僕は……僕は、仙人になる! 誰にも見つからない深山幽谷で、霞を食べて、静かに暮らすんだ!」
リアムは決意しました。24人の家族が眠っている隙に、銀河の果てにある未開の惑星『静寂の極み星』へ逃亡。標高2万メートルの断崖絶壁にある洞窟で、ついに念願の「孤独」を手に入れました。
「ふふふ……。ここなら誰も来ない。聞こえるのは風の音だけ。さあ、仙人修行の開始だ。まずは深呼吸をして……スー、ハー……」
リアムが吐き出したその息には、聖王としての絶大な浄化魔力が含まれていました。
すると、どうでしょう。リアムが呼吸をするたびに、枯れていた周囲の木々が爆速で急成長し、伝説の霊草が次々と開花。洞窟の岩肌からは最高級の温泉が湧き出し、空気は「吸うだけで病が治る」究極のヒーリング・エアへと変貌しました。
「……マスター。発見。……宇宙の『パパ・センサー』が、急激な酸素濃度の向上を検知。……隠居場所、一瞬で特定完了」
無情にも、頭上からセレスの声が響きました。
空を見上げると、そこには12隻の聖王妃専用戦艦と、数百万隻の観光シャトルが!
「リアム様! こんな素敵な『パパ・リゾート』を独り占めするなんて水臭いですわ!」
「パパの吐息を缶詰にして売り出す許可をください!」
わずか一時間で、断崖絶壁の下には超高層ホテルが建ち並び、洞窟の前には「パパ仙人・拝観窓口」が設置されました。リアムが静かに座っているだけで、参拝客が「パパ様の霞を吸わせてください!」と長蛇の列を作ります。
「違うんだ! 僕は静かに暮らしたいだけなんだ! なんで僕が座るだけで、ここが宇宙最大の観光都市になっちゃうの!?」
結局、12人の子供たちが「パパ、寂しかったよー!」と洞窟に突撃し、リアムは「仙人」から「アスレチック遊具」へと強制的にジョブチェンジ。
リアムが逃げ出したはずの「賑やかすぎる日常」は、より規模を拡大して彼を飲み込むのでした。
「……霞を食べる前に、みんなに食べられちゃうよ……」




