第13話:感謝の贈り物と、乙女たちの嫉妬嵐
空中市場の初日が終わり、村人たちは涙を流しながら「聖王リアム様!」と叫んで帰っていった。
そんな中、村の若い娘たちが数人、おずおずとリアムのもとへやってきた。
「あ、あの! リアム様、これ……。村に伝わる伝統の編み方で作った、お守りのミサンガです。私たちの感謝の気持ちですので、受け取ってください!」
頬を赤らめる娘たち。リアムはいつものように、屈託のない笑顔でそれを受け取った。
「ありがとう。みんなの気持ち、嬉しいよ。大切にするね」
リアムがそのミサンガを腕に巻いた瞬間――。
背後から、「凍てつくような殺気」が放たれた。
「……リアム様? そのような粗末な……いえ、得体の知れない紐を肌身離さず着けられるのは、教育係の聖女として見過ごせませんわ」
エルナの笑顔が、かつてないほど引きつっている。
「そうだぞリアム様! 呪いがかかっているかもしれん! 私が一度預かって、入念に、そう……数日間ほど没収して検品すべきだ!」
リヴィアが、今にも剣を抜きそうな勢いでミサンガを凝視する。
「……マスター。その紐、いらない。……私の髪の毛、編んで、腕に巻く……? その方が、強い」
セレスが無表情に、しかし恐ろしい提案をしながらリアムの腕をホールドした。
「わわわ、皆さん落ち着くですよ! こうなったら、リアム様に相応しい『最高級の贈り物』を、ウチらがそれぞれ用意して、リアム様に選んでもらうしかないですねぇ!」
ミーシャが商売っ気たっぷりに(そして自分も混ざる気満々で)提案し、事態はさらにややこしい方向へ。
その日の夜。
リアムが寝静まった後、空中島の工房では四人のヒロインが火花を散らしていた。
「私は聖女の祈りを込めた特製のお守りを!」
「私は騎士の誇りを賭けて、最強の護符を!」
「……私、マスターの夢の中まで、一緒に行く魔法……」
「ウチは、一生遊んで暮らせるだけの黄金の印鑑を贈るですよぉ!」
翌朝。リアムが目を覚ますと、枕元には山のような「愛が重すぎる贈り物」が置かれていた。
「(……ミサンガ一つで、どうしてこうなったんだろう?)」
リアムが戸惑っている一方で、下界では大きな動きがあった。
恥をかかされた地方貴族が、帝国中央へ「第五王子が隣国の聖女と通じ、空中要塞を根城に帝国への侵攻を企てている」というデタラメな報告を送ったのだ。
帝国最強の魔導艦隊が、ついに重い腰を上げ、空中島へと進軍を開始する。




