第124話:魔の「いやいや期」! ~パパが「いや」と言えば宇宙が震える~
3歳児になったリアムに、全親が恐れるあの時期がやってきました。
そう、何を聞いても、何をしても、全否定から入る「いやいや期」です。しかし、相手は全知全能の聖王。その「いや」には、物理法則を書き換えるほどのパワーが宿っていました。
「ぱぱ、おふろ はいりましょう?」
「いや! おみず、いや!!」
リアム(3歳)がぷいっと顔を背けた瞬間、聖王宮にあるすべての水分が重力を無視して宇宙空間へ脱走。全自動で「全宇宙・断水モード」に突入しました。
「……マスター。深刻な事態。……パパが『いや』と言うたびに、概念が消失する。……このままでは、宇宙そのものが『いや』という否定に飲み込まれる」
セレスが乾いた喉で(水が逃げたため)警告を発します。
続いてエルナが、栄養満点の「パパ大好き特製離乳食」を差し出しました。
「リアム様、あーんしてくださいな。美味しいお野菜ですわよ?」
「いや! ぴーまん、いや!!」
その瞬間、全銀河の土壌からピーマンの遺伝子が消滅。さらには「苦い」という味覚そのものが宇宙から失われ、すべての食べ物が砂糖をぶっかけたような甘ったるい味に変化してしまいました。
「パパ、お願い! お着替えして! 裸ん坊じゃ風邪引いちゃうよ!」
「いや! おようふく、いや!!」
今度は全人類の衣服が霧散。慌てて魔法で服を作り出すママたちでしたが、リアムが「いや」と言い続ける限り、布という概念がこの世に定着しません。
「……こうなったら、最終手段ですわ!」
12人のママたちが一斉に、リアム(3歳)を取り囲んで「パパなんて、もう知らない!」と背中を向けました。
すると、リアム(3歳)の動きがピタリと止まりました。大きな瞳にみるみるうちに涙が溜まり、短い指でママたちの服(の残骸)をギュッと掴みます。
「……やだ。まま、いかないで。……いい子にする、から。……えーん!!」
リアムが泣き出した瞬間、宇宙に「恵みの雨」が降り注ぎ、失われた水もピーマンも概念もすべてが元通りに。
泣きじゃくる「最強の幼児」を家族全員で抱きしめ、トントンしながらあやすことで、宇宙の平和はようやく保たれたのでした。




