第11話:空から降ってきた少女と、商会の野望
高度数百メートルの空中庭園。
三人のヒロイン(聖女・騎士・エルフ)によるリアムのお世話争奪戦は、日を追うごとに激しさを増していた。
「リアム様、この『太陽の雫』のシャーベット、食べさせて差し上げますね」
「マスター、私の膝、空いてる。……ここ、特等席」
「待て貴様ら! リアム様は今、私と戦術の談義を……っ!」
そんな賑やかな午後の空気を、上空から響く「悲鳴」が切り裂いた。
「いやぁぁぁ! 助けてぇぇぇ! 落ちるぅぅぅ!」
見上げると、一隻のボロボロになった小型魔導舟が煙を吹きながら墜落してくる。そこから放り出された小さな影が、真っ逆さまにリアムたちの庭へと落ちてきた。
「危ない!」
リアムが咄嗟に手をかざす。
『古代魔法:【重力掌握】』
墜落していた少女の体が、庭のふかふかな芝生の数センチ上でピタリと止まり、ゆっくりと着地した。
「……ふぇ? 生きてる……?」
金色の猫耳を震わせ、大きな商人のリュックを背負った少女が目を開ける。
彼女は、大陸最大の商会から逃げ出してきた獣人の商人、ミーシャだった。
「大丈夫? 怪我はないかな」
「ひゃぅ! び、びっくりしたです……って、なんですかここ!? 空の上なのに森があって、お城があって……伝説のフェンリルまでお昼寝してるですぅ!?」
ミーシャは尻尾をピンと立てて驚愕した。彼女は商人の直感で理解した。目の前にいる、底知れない魔力を纏った少年こそが、この「ありえない楽園」の主であると。
「あ、あの! 助けてもらったお礼に、ウチの在庫を……って、あぁっ! 私の商売道具(魔導舟)が木っ端微塵に……もうおしまいです、破産ですぅ……」
泣きべそをかくミーシャ。リアムは彼女の壊れた魔導舟の残骸にそっと触れた。
「これくらいなら、すぐに直せるよ」
『古代魔法:【構造復元・極】。……ついでに、動力源を古代魔導エンジンに換装しておいたよ』
一瞬にして、ボロ船が白銀に輝く最新鋭の「空飛ぶ豪華客船」へと変貌した。それも、帝国の主力艦隊を凌駕する速度と防御力を備えた代物に。
「……え? ええええええ!? なんですかこの高性能! 私、こんなの頼んでないです!」
「これでお仕事に戻れるね。よかった」
リアムが優しく微笑むと、ミーシャの商魂(と恋心)に火がついた。
「戻るわけないですよぉ! こんな規格外のお宝をポンポン生み出す御方、一生離しません! 私、今日からリアム様の『専属商売人』として、この島に住み着かせてもらうですよ!」
「「「また増えたぁぁぁ!!」」」
エルナ、リヴィア、セレスの絶叫が、晴れ渡った空に響き渡った。




