第108話:パパ、人間に戻れにゃい? ママたちの甘い誘惑大作戦
「大変ですわ! リアム様、さっきから鏡に向かって自分の耳を動かして遊ぶだけで、ちっとも人間に戻ろうとなさいません!」
エルナの悲鳴が聖王宮に響き渡ります。猫の姿でちやほやされ、美味しい魚を食べ、毛玉を吐くだけで崇められる生活に、リアムの理性が「……あれ? 猫の方が楽じゃないかにゃ?」と、とろけ始めていたのです。
「……マスター。深刻な事態。……このままだと、宇宙の王が『一生こたつで丸まる毛玉』になる。……強硬手段、移行」
セレスの合図で、12人のママたちによる『パパを人間に戻すための誘惑・五番勝負』が開始されました。
まずは龍族のリュカが、溢れんばかりのダイナマイトボディを強調したドレスで迫ります。
「リアム、見てくれ! この私の情熱的な姿を! さあ、人間の姿になって私を抱きしめ……」
しかし、猫リアムはリュカのドレスから垂れ下がった「揺れるリボン」に反応。
「にゃ、にゃあ!(ヒラヒラだにゃ!)」
猛烈な勢いでリボンに飛びつき、リュカを盛大に転倒させる猫パンチをお見舞いしました。
続いて人魚のマリンが、極上のアロマとお風呂で誘います。
「リアム様、一緒にお風呂に入って、そのまま……」
だが、猫リアムは水を見た瞬間に毛を逆立て、「ふにゃぁぁぁ!」と脱兎のごとく逃走。
ママたちが次々と自慢の色気や料理で挑みますが、猫リアムは「あ、またたびの粉だにゃ」「あ、爪研ぎにちょうどいい柱だにゃ」と、ことごとく野生の本能でスルー。
「……こうなったら、最終手段ですわ!」
ママたち12人が一斉にリアムを囲み、「パパが戻ってくれないと、悲しくて夜も眠れません……」と嘘泣きを開始。
すると、猫リアムはピタリと動きを止め、困ったように首を傾げました。そして、短い足でエルナの膝に飛び乗ると、小さな頭を優しくスリスリと擦り付けたのです。
「にゃ、にゃあ……(みんな、泣かないでほしいにゃ。……わかった、戻るにゃ)」
黄金の光が溢れ出し、もこもこの毛玉がゆっくりと、見慣れた「最高に優しいパパ」の姿へと戻っていきました。
「……ふぅ。みんな、心配かけてごめんね。でも、猫の生活も悪くなかったよ?」
苦笑いするリアムでしたが、次の瞬間、人間に戻るのを待ち構えていた12人のママと12人の子供たちに一斉に押し倒され、今度は「人間としてのモフモフ(ハグ)」の刑に処されるのでした。
「……やっぱり、猫の時より逃げ場がないや……!」




