第102話:パパ、パン屋になる。~隠しきれない神の焼き加減~
「……よし、今度こそ完璧だ」
リアムは、セレスに特注した「全存在感遮断エプロン」を身に纏い、街外れの小さなパン屋『麦わら銀河亭』の門を叩きました。今回の作戦は、無愛想で頑固なパン職人のフリをして、誰にも気づかれずにパンを焼くことです。
「へい、らっしゃい。今日からここで働く『リっちゃん』だ。文句がある奴は帰れ」
低い声を作り、タオルを頭に巻いてオーラを消したつもりのリアム。しかし、彼が生地をこね始めた瞬間から、異変は起き始めました。
リアムが生地に触れるたび、ただの小麦粉が「生きる喜び」を思い出し、イースト菌たちがパパの愛に触れて爆発的に活性化。オーブンに入れたパンからは、黄金の蒸気が立ち上り、その匂いは一瞬で惑星全土、さらには隣の銀河まで拡散しました。
「な、なんだこの匂いは……! 嗅いだだけで、長年患っていた腰痛が治り、失くした財布が見つかったぞ!」
「このパン屋から、銀河の誕生と同じエネルギーを感じる!」
開店から5分。店の前には、宇宙戦艦の行列と、ワープ航法で駆けつけた食通の神々で数億人の大行列が。
「リっちゃんさん! この『パパのほっぺパン』を100万個ください!」
「いや、これはただの食パンだよ! あと、勝手に名前をつけないで!」
リアムは必死に「頑固なオヤジ」を演じますが、彼が焼き上げたメロンパンは、表面のクッキー生地がダイヤモンドより輝き、一口食べれば「前世の記憶が浄化される」という代物。
「……マスター。隠蔽、失敗。……パンが美味しすぎて、宇宙の食糧問題が解決した。……あと、パン屋の親父さんが『あんたこそがパンの神だ』と言って、店の権利書を押し付けて逃げた」
セレスが呆れ顔で報告に来た頃には、店の周りは「聖なるパン」を求めて巡礼に来たファンたちによる合唱コンクールが始まっていました。
「どうして……ただ普通にパンを焼きたかっただけなのに……!」
結局、パン屋の煙突から出た煙が「リアムの形をした雲」になって空に浮かんでしまい、正体が完全露呈。12人のママたちが「パパの焼きたてパンを一番に食べるのは私たちですわ!」と、次元戦艦で店ごと聖王宮へ回収しに来るのでした。




