第10話:絶景の空中露天風呂と、乙女たちの誓い
砂漠の上空数百メートルに浮かぶ、リアムの空中庭園。
そこには、下界の熱気を忘れさせるような、涼やかで清浄な風が吹き抜けていた。
「よし、せっかく空の上に島を作ったんだ。最高の景色を見ながら入れるお風呂を作ろう」
リアムが空中島の端、ちょうど雲を見下ろせる絶壁に手をかざす。
『古代魔法:【万象加工】。源泉、古代の霊水に設定。温度、42度固定』
瞬く間に、滑らかな大理石で作られた巨大な露天風呂が完成した。お湯からは、浸かるだけで寿命が延び、魔力が活性化するという伝説の「霊力」が湯気となって立ち上っている。
「……マスター。ここ、すごい。天国みたい」
「リアム様、流石にこれは……帝国の王宮にある最高級の浴場すら、泥水に見えるほどですわ」
「ふん、私は騎士だ。風呂になど興味は……っ、いや、このお湯の香りは反則だ……!」
リアムに勧められ、三人のヒロインたちは先にお湯に浸かることになった。
雲海が夕日に染まる絶景の中、裸の付き合いを始める三人。
「……エルナ。貴女、リアム様のことをどう思っているの?」
リヴィアが、お湯に浸かって少し緩んだ顔で、しかし真剣な目で問いかけた。
「どう思っているか、ですか? そんなの……決まっています。あの方は私の神様であり、一人の男性として、一生お側で支えたい……いえ、独占したいほどお慕いしています」
清楚な聖女が、かつてないほど強い意志で答える。
「……私、マスターがいないと、また琥珀の中で腐るだけ。マスターは、私の全部。誰にも、渡さない」
セレスも、銀髪を濡らしながら静かに、しかし冷たい熱情を込めて告げた。
「そうか。……なら、私も容赦はしない。私は騎士としてあの方の剣になり、いつか、あの方の隣に立つのに相応しい女になってみせる」
火花を散らす三人。しかし、その根底には「リアムが大切」という共通の想いがある。
そんな中、リアムが壁越しに声をかけた。
「みんな、お湯加減はどう? お風呂上がりに、冷やした『太陽の雫』のシャーベットを用意したよ!」
「「「今すぐ出ます!!(リアム様、待っていてください!)」」」
三人が競うように風呂から飛び出していく。
その頃、空中島の真下――。
砂漠の地上では、リアムを追ってきた帝国の小隊が、遥か上空に浮かぶ島を見上げて絶望していた。
「な、なんだあの島は……。我々が必死に歩いている間、追放されたはずの第五王子は、天上で美女たちと楽園を築いているというのか……!?」
帝国とリアムの差は、もはや埋めようのない次元にまで広がっていた。




