表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

54/59

54 密かな作戦 2

昼休みの学園。

校舎の屋上には、ひときわ目を引くイケメン三人組が姿を見せていた。

ここは、アルヴァン王子が密会の場として指定した場所である。


知的派のユリウスが、不思議そうに問いかけた。

「アルヴァン王子との密会場所って、ここで合ってるよな?」


「なぜ学園なんだ。セイル、お前は何かわかるか?」


論理派のセイルも納得がいかない様子で首をひねる。

「学園という意外な場所という意味はあるが、もっと適した場所もあると思う……」


そして、腕を組みながらつぶやいた。

「やはり……アルヴァン王子の考えは、僕たちには測りきれない深さがある」


熱血派のレオンが、隣の二人を見ながら不思議そうに言った。

「お前ら、まだ気づいてないのか?──今日は、ドンパッチが学園に来る日なんだぞ」


ユリウスとセイルは顔を見合わせたが、まだ腑に落ちていない様子だった。

レオンは肩をすくめ、続けた。


「ドンパッチの瞳──アルヴァン王子の瞳にそっくりだろ」


言われてみれば、といった表情のユリウスに向かって、レオンは畳みかける。

「あれからずっと見てたけど、体の使い方も、雰囲気も、完全に同じだった。あれは王子だ。間違いない」


そして、決意を込めて付け加えた。

「グレイヴ──あれは護衛隊長のシグルドだ。強いわけだ。いつか俺が勝ってやる!」


ユリウスが、思わず声を上げた。

「どうして、王子が変装なんかして学園に来てるんだよ!」


セイルは腕を組み、真剣な面持ちで唸っていた。答えを導き出そうとしているのだろう。


だが──レオンはあっさりと言い放った。

「知らねえよ。気になるなら本人に聞けって。……ほら、もう来てるしな」


アルヴァン王子は、そんな会話が交わされているとは露知らず、颯爽と歩いてきた。

密会ということもあり、彼は学園の制服を身にまとっていた。シグルドも同様である。


王子は、爽やかな声で三人に語りかけた。

「すまない、少し待たせたようだな。この前の話の相談をしたいのだが、いいかな?」


だが──三人の誰も、すぐには応じなかった。


その沈黙に、アルヴァン王子はわずかに焦りを覚えた。

(まさか……反対派に回るつもりなのか? そうなれば、計画は難しくなる)


レオンがその空気を敏感に察知し、きっぱりとした声で言い切った。

「俺たちは、お前の味方になることにした」


その一言に、アルヴァン王子の表情がほのかに和らいだ。


「こいつらは、アルヴァン王子がどうしてドンパッチに変装しているのか、ずっと悩んでたんだよ」


そう言って、レオンはふと真顔になる。

「俺にはどうでもいいけどな……で、お前、なんで変装してるの?」


その直球に、アルヴァン王子は機能停止状態になりそうになったが、踏みとどまった。

「それは……今は言えない。だが、いずれ必ず話す。今日は、その前に――今後の計画について話をしたい」


ユリウスは、それで納得したのか、表情を和らげた。


やがて、自分に言い聞かせるように、ゆっくりと口を開いた。


「僕たち三人は、レオンが言ったように、アルヴァン王子の味方につくことにしたよ」


アルヴァン王子は、真っ直ぐな目で三人を見つめ、芯のある声で答えた。


「……それは、とてもありがたい。心から感謝する」


ユリウスは、さらに問いかけるように言った。


「僕たちは、何をすればいい?」


その横で、セイルはまだ唸っていた。納得のいく答えを、必死に探し続けているようだった。


アルヴァン王子は、強い意志を込めたまなざしで三人を見つめ、落ち着いた声で語り始めた。


「君たちは、今はまだ何もしなくていい」


「反対派を抑え込むことができれば、王国に権力が集中する」


「そのとき、君たちの家に『代を変える』よう正式に要請するつもりだ」


ここで、王子の言葉が一段と重みを帯びる。


「――そう、君たち自身が、それぞれの家の当主となってほしい」


「残念ながら、僕は若い。僕がどれだけ正しいことを言っても、君たちの父親たちは素直には従わないだろう」


「だから、君たちには、親から“当主の座”を奪う覚悟を持っていてほしい」


「十人の賢者の一人としての地位は保証する。今よりも栄え、権力も大きくなる」


「僕はこのアステリオン大陸を平定する。君たちはその時、不動の地位にいるはずだ」


「当主として、僕の考えに従う覚悟を――ただ、それだけを求める」


そして、少しだけ表情をゆるめ、誠実な声音で続けた。


「僕が間違っていると感じたときは、必ず正してほしい。僕一人では、判断を誤ることもある」


「もし意見が合わないときは、道を違えてもいい。僕に敵対しても、恨みはしない」


「君たちにとっても、決して悪い話ではないはずだ。――どうだろう?」


そう言い終えると、すぐに王子は背を向けた。


「少し悪いが、他に用がある。あとは君たちで意見をまとめてくれ」


そう言うと、少し早足で、アルヴァン王子は屋上から姿を消した。よほど急いでいるようであった。


「……困った。変装の件、どう説明する……うん、どうすれば……」


そんな独りごとをこぼしながら去っていく王子の横で、シグルドは笑みを浮かべていた。


一方その頃、教室では──


「ドンパッチ君は、体調がすぐれないとのことで、午後からお休みになります」


担任がそう告げたとき、「午前中元気だったのにどうしたんだろう」との声が聞こえた。


ティーナには、心配をかけないように「用事がある」とだけ伝えられていた。


その後、アルヴァン王子とシグルドは、バルティネス男爵家の質素な門をくぐり、控えめな佇まいの応接間へと通された。


そこには、椅子に深く腰掛けるクラウスの姿があった。今日は、いつものように膝の上にマルレーネの姿はない。

アルヴァン王子は、ほんの少し安堵の息を漏らしたが、心のどこかで物足りなさも感じていた。


──あの衝撃的な光景。

マルレーネを膝に乗せていたクラウスの姿が、今でも目に焼きついている。

あれを見た瞬間、自分もティーナを膝の上に乗せている情景を思い描いてしまったのだった。


やがて、クラウスが穏やかな声で口を開いた。


「──今日は、どうした?」


アルヴァン王子は、その問いに真剣なまなざしで応じる。


「国軍統帥卿の領地へ視察に行きます。そして、模擬戦で力の差を見せつけ、私に従わせます」


「バルティネス男爵家にも波及があるかもしれません。ですので、念のためにご報告に参りました」


王子はまた、「貴族軍制から王国軍制への移行」という大きな改革についても説明していた。

ティーナを守るため、クラウスには伝えておきたかったのだ。


いつもなら、クラウスは短く「そうか、頑張れ」とだけ言うのが常だった。

だが──この日は、どこか違った。


クラウスが、どこか不思議そうな顔で問いかけた。


「──国軍統帥卿は、まだ……あいつなのか?」


「はい。今も変わらず、同じ人物です」


アルヴァン王子がそう答えると、クラウスは短くうなずき、しばし沈思したあと──

ふいに、悪戯めいた笑みを浮かべて言った。


「……俺が行った方がいいかもしれんな」


そして、軽く続けた。


「俺も、気晴らしがてら同行するか」


こうして、アルヴァン王子は自身の直属である近衛兵隊──

その護衛隊長シグルド率いる一千の精鋭を伴い、反対勢力の首謀者が治める領地へと歩を進めることとなった。


だが、その隊列の中には、誰にも気づかれぬよう紛れて歩く一人の男がいた。

クラウス──彼はただの一兵卒として、密かにその行軍に加わっていたのである。


国軍統帥卿は、二十年前の戦争において、最前線の砦で圧倒的な敵兵力を退け、その名を世に知らしめた名将であった。


戦後も、亡き国王の改革に際し、数々の助言を献じることで、着実に自らの地位を築いてきた男。


その巧みな話術と、相手の懐に入る技により、現国王からも深い信頼を得ていた。


しかし──


アルヴァン王子は、初めてこの男と相対した幼い日の記憶の中で、早くもその本質を見抜いていた。


「──この男は、人に媚びて生きる者だ。信用してはならない」


その確信は薄れることなく、むしろ年を重ねるごとに深まり、王子は数年前より、この国軍統帥卿の動向を密かに監視させていたのである。


国軍統帥卿──

それは、貴族たちが擁する全軍を統括する権限を持つ、まさに軍制上の頂点に立つ役職である。


かつては、代々レオンの家がこの地位を任されていた。


だが──二十年前の戦争において、彼の家は実績において敗れ、その座を奪われてしまった。


この屈辱と悔しさが、レオンの胸に燃える炎の一因でもあった。


以来、大規模な戦が起こることはなく、小競り合いばかりが続く時代となった。


レオンの家もまた、名誉を挽回する機会を得られぬまま、歳月だけが過ぎていった。


そして、その男──その時に地位を奪った人物が、いまだその権限を握り続けていた。

おもしろいと感じた方は、「亀の甲より年の功」をクリックして、他の作品もぜひご覧ください。まったく異なるジャンルの物語を、生成AIを駆使して書いています。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ