53 密かな作戦
アルヴァン王子は、険しい表情でシグルドと向かい合っていた。
「婚約の宴の様子は、どうであった?」
シグルドは、淡々とした口調で報告を始めた。
「反対派の多くは欠席しておりました。裏で密かに動き、味方を増やそうとしている様子です」
「やはり、中心人物はあの男か」
「ええ、間違いないでしょう。宴が成功裏に終わって、彼らは少々焦っているようです」
アルヴァン王子は、ひと息おいて言葉を挟んだ。
「貴族たちの不満が、必ず表に出ると踏んでいたはずだ。突然現れた少女が、そう簡単に受け入れられるとは思っていなかったのだろうな」
シグルドは一度うなずき、言葉を継いだ。
「はい。亡くなられた皇后陛下のドレスは、非常に効果的でした。古くからの貴族たちは、ティーナ嬢を元皇后の血筋ではないかと噂し始めています」
「王家の血が流れていると、そう噂されていますね」
「そして婚礼式から宴の間に至るまで、ティーナ嬢の立ち居振る舞いは完璧でした。強く印象に残っています」
「かつての国王と王妃は、戦乱で荒廃していたエルディア王国を大改革によって立て直し、強国に変え、あれからは、争いもほとんど起きてないです」
「奴隷を自国民として受け入れ、食料の増産に成功したことが大きかったですね。他国からも多くの人々が流入し、国の力となりましね」
アルヴァン王子も言葉を添えた。
「まったくその通りだ。今でも祖父に忠誠を誓っている貴族も多い」
「私が祖父に似ていた。そしてティーナもだ」
「今回の宴では、かつての英雄の再来とみられただろう」
シグルドはうなずきながら答えた。
「はい、そのような噂となっています」
「計画通りですね」
「相手は焦って、中間派を取り込もうとしています」
アルヴァン王子が指示を下す。
「あの三人との極秘の会談場所を用意してくれ」
「分かりました」
時を同じくして、ファリーナ、ティーナ、ソフィア、そしてベアトリスの四人は、ファリーナの私室でお茶を楽しんでいた。
ファリーナは終始、穏やかな笑みを浮かべていた。
ソフィアはというと、見るものすべてに目を輝かせ、無邪気に驚く様子がとても楽しげだった。
「このお菓子、おいしい」「きれいなカップ」「広いお部屋」「お姫様のベッドだ」
「ソフィア様はこんなところに住めて、うらやましい」「こんな洋服が着られて、うらやましい」
「私なんて、洋服10枚しか持ってない」「部屋も狭いし」「おねえちゃんはあまりしゃべらないし」
「お母さんもお父さんとしか話さないし」「お兄ちゃんは剣ばっかり振ってるし」「お友達もあまりおしゃれに興味がないし」
思いつくまま、ぽんぽんと言葉を重ねていくソフィアであるが、悪口はあまり言わない。また、褒められて育ったからか、誰かを褒めることも自然と身についていた。
けれど、嫌なことや間違っていると思ったことには、ちゃんと「嫌」と伝える強さも持ち合わせていた。
家族の間では、気兼ねなしに不満は言っているが、ベアトリスはそれは注意していなかった。
ファリーナも中等部に通っていたが、国王の娘という立場のため、周囲からは形式的な礼儀で接せられることが多く、どこか孤独を感じる日々を過ごしていた。
それが、反抗期の一因になっていたのかもしれない。
あまりにも素直なソフィアの反応に、ファリーナも次第に楽しくなったようで、宝物を見せたり、人の噂話をしたりと饒舌になっていった。
そして、つい調子に乗って悪口を口にすると、ベアトリスから厳しくたしなめられた。
「そのような言葉は、ファリーナ様にはふさわしくありません」
さらに年下のソフィアからも、澄んだ声でこう言われた。
「悪口はだめなの。それは自分の心を傷つけるから、ダメ」
その言葉に、ファリーナはおとなしく「わかりました」と答えていた。
本来なら、他家の侍女が王族に対してああした言葉をかけることなど許されないはずだったが──
それでも、その場にいた皆の表情には、どこか安堵の色が浮かんでいた。
きっと、これまでファリーナのことで手を焼いていたのだろう。
ベアトリスが部屋に入ってきたとき、最も驚いたのはファリーナ付きの侍女長だった。
彼女は元々ベアトリスの下で働いていたことがあり、ベアトリスを尊敬していた。
何か声をかけようと口を開きかけたが、ベアトリスの一つの視線で口を閉じ、代わりに周囲の侍女たちへ、
「よく見て学ぶように」
と無言で指示を送っていた。
ティーナは、いつものようにその二人を優しく見守っていた。
ただ、何ひとつ壊わさないように──そう願いながら。
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