43 二人の愛の始まり
高い天井の下、空気は静まり返っていた。
そこに漂うのは、威圧でもなく豪奢でもなく、
ただ──秩序と品位、そして厳かな時間の重みだった。
玉座は、玉階の最上段にしつらえられている。
そこに腰かけるのは、国王ノアティス。
深紅と紺を基調とした大礼服をまとい、王冠を戴いたその姿には、王としての揺るぎない威厳があった。
その隣には、王妃セリシアが並ぶ。
繊細な銀糸の織り模様が浮かぶ王妃礼衣を身にまとい、
宝石のあしらわれた髪飾りが、燦然と光を受けていた。
そのひとつひとつに王家の伝統と格式が宿っていた。
玉座の間を縦断するのは、深紅の絨毯だった。
磨き抜かれた白大理石の上に敷かれたそれは、
紅の輝きを湛えながら、静かに──そして威厳を湛えて、王の玉座へと続いていた。
左右の壁面には、高く連なるステンドグラス。
色とりどりの光が床に降り注ぎ、
それがまるで──静かな湖面に風が渡るかのように、
玉座の間全体を、ゆるやかに揺らしていた。
──この場に立つことは、誇りであり、そして試練でもあった。
やわらかな管の音が静かに広間を満たす。
玉座の間を包む静寂を崩さぬよう、楽士たちはあえて控えめな旋律で入場の合図を奏でていた。
やがて、宰相が銀の杖を三たび床に打つ。
その音は高く、そしてはっきりと、石造りの広間に響き渡っていた。
白銀の礼服に身を包んだティーナは、小柄でありながらも、その立ち姿は凛としており、まっすぐに王を見つめていた。
礼服には過剰な装飾は施されていなかった。
しかし、整えられた髪型ひとつにしても、耳元のイヤリング、胸元で静かに揺れるペンダント、化粧の色合い──
それらすべてが、小柄なティーナを、気品を湛えた貴婦人へと昇華させていた。
ティーナの視線は、王の目を見つめているのではなく、王という存在そのものを射抜いていた。
その瞳の奥に宿っていたのは、誇示でも虚勢でもなかった。
ただまっすぐに──忠誠と、揺るぎない信頼だけが、そこにあった。
このような厳格さと重圧に満ちた場で、真正面から王を見つめることのできる者など、そう多くはない。
それでも、ティーナの姿は──まるで王の威厳すらも凌ぐほどの貴賓のごとき風格を備えていた。
大理石の床に、彼女の影が静かに落ちる。
差し込むステンドグラスの光が、その姿の輪郭を虹のように縁取っていた。
堂内の誰もが、ティーナの姿から目を離せずにいた。
王の威厳すらも超えるような凛とした立ち姿に、
赤絨毯の左右に並ぶ、金と紅の礼服をまとった貴族たちは、ただ圧倒されていた。
玉座にあったノアティス王が、静かに立ち上がった。
大礼服の金糸がわずかに揺れ、玉階の上に沈黙が広がる。
その手には、王印と縁飾りを持つ一枚の法詔書。
光を受けた金の縁がきらりと輝き、玉座の間全体に、さらなる緊張をもたらした。
国王ノアティスはそれを高く掲げ、重く、明瞭に声を響かせた。
「汝、ティーナ・バルティナは──
その徳と功績、地を潤し、民を生かし、国に忠義を尽くしたるをもって、
本日ここに、バルティナ上位貴族家の開設と昇叙を認める。」
その言葉を聞いたティーナは、迷いなく膝を折り、両膝を床につけ、頭を深く垂れた。
その姿には、恐れではなく、敬意と覚悟が宿っていた。
国王ノアティスは、詔書を掲げたまま玉階をゆるやかに下り、
人々の視線が静かに集まるなか、ティーナのもとへと歩を進めた。
そして、威儀を正し、己が手をその額にそっと重ねる。
「ティーナよ。汝の名、これよりエルディア王国の正史に刻まれる。
その功、民を潤し国を助く。
本日をもって、汝の家名を王室記録に列し、
その行いと志、永く王国の誉れと為すことを、ここに宣する。」
その手が静かに離れると、ティーナは静かに、そして美しく立ち上がった。
動きには乱れがなく、芯の通ったその所作は、まさしく一つの儀礼の完成であった。
今まさに、ひとつの「高位貴族」が、この国に認められた瞬間だった。
そのときだった──
高く聳えるステンドグラスの一枚が、曇り空を貫いた一条の光を受けて、王座の間に静かな虹彩を落とした。
赤、青、金──その三色の光が、まるで天から与えられた祝福のように、ティーナの礼服に流れるように降り注いだ。
その瞬間、広間のすべてが沈黙した。
ただ光だけが──
床を、天井を、そしてティーナの肩をやわらかく染めていた。
その静謐のなか、誰もが息を呑む。
やがて、アルヴァン王子が、赤絨毯の上をゆっくりと歩み出る。
その足取りは揺るぎなく、確かな決意を映していた。
ティーナは、自分に歩み寄るアルヴァン王子を見ると、
それまでの凛とした雰囲気がやわらぎ、頬を染め、やわらかな笑顔で応えていた。
アルヴァン王子はティーナの前で静かに立ち止まり、
右膝を折り、左手を胸に、そして右手をそっと差し出す。
ティーナは恥ずかしそうにしながらも、その手をしっかりと取った。
ふたりの指先が重なった刹那──
玉座の間には、まるで清らかな風が吹き抜けたかのような、穏やかな空気が広がっていた。
アルヴァン王子は静かに立ち上がり、堂々たる姿勢のまま、まっすぐに玉座を見据える。
その声は澄みわたり、すべての者の耳へと届いた。
「ティーナ・バルティナは──わたくしの婚約を、快くお受けくださいました。」
重臣たちの沈黙のなか、アルヴァン王子は国王ノアティスへと向き直る。
両足を揃え、直立したまま、澄んだ声で、はっきりと宣言する。
「私、アルヴァン・ド・ディナスティ・ド・エルディアは、
ティーナ・バルティナ嬢との婚約を、ここに願い出ます。
ノアティス・ド・ディナスティ・ド・エルディア陛下におかれましては、
この婚約を御認めのうえ、正式なる証書の下賜を賜りますよう、
謹んでお願い申し上げます」
その声音は、まっすぐに──国王ノアティスへと向けられていた。
玉座にあった国王ノアティスが、ゆるやかに立ち上がった。
その動きだけで、玉階の上に沈黙が広がる。
王の大礼服が静かに揺れ、両肩に戴く金飾がかすかな音を立てる。
その威光に、空気すら一瞬、張り詰めたように凍りつく。
国王ノアティスは、王笏を右手に、ゆっくりと前へ一歩進み出ると、
王族の名を戴く者として、王として、そして父として──低く、重々しい声を響かせた。
「我、ノアティス・ド・ディナスティ・ド・エルディアは、
王子アルヴァン・ド・ディナスティ・ド・エルディアの願いを受け──
バルティナ家令嬢、ティーナとの婚約を、これを認むるものである」
国王ノアティスの揺るぎない声が玉座の間を満たし、この式典に集まった貴族たちの心に刻みつける。
「王家の名において、この結びを正しきものとし、
王家の証印をもって、正式なる婚約証書を与えることを──ここに宣する。」
その瞬間、玉座の間にいたすべての重臣たちが、音もなく、整然と膝を折った。
その動作には、一糸の乱れもなかった。
王国の決定が、今、ここに下されたのである。
天井のステンドグラスは静かに光を落とし、
その光は、まっすぐに二人の未来を照らしていた。
ChatGPT Plusに、フランスの史実をもとに書いてもらいました。じじいには書けない内容です。
少し長くて読みにくいかもしれませんが、史実に近いと思って読んでいただけると、より楽しめるかもしれません。




