カップ探し
あの、お芋祭りから数週間後。4年生全員が久しぶりに揃っての実習となった。
本日は、一学年上の5年生が出場する「魔法学校対抗戦」の残り2枠のメンバーを4年生がカップから名前の書いた紙を見つけ出すと言うものだ。その為、教会の上等の「ラックス魔法学院」中の屋根の上に5年生全員が様子を見ていた。ちなみに、5年生の2人は嬉しい事だが、4年生にとっては実習の単位にあまり反映されないのでそこまで乗り気の人は少ない。だと言うのに、この実習の監督官は何故かウィリアム校長だった。
ウィリアム校長「よーいスタート!」
ウィリアム校長が合図の言葉を掛けるが多くの4年生は、駆け足もせず魔法学院内や芋掘りをした草原など魔法学院の敷地を探し始めた。
とは言え、アランはソフィアとルーカスと見つけたあまり生徒に知られていない場所をくまなく探したり、オリビアは緑魔法で精霊の声を聞いてカップを真面目に探してはカップの中に紙がないかを探したり、ソフィアは木登りを楽しみながらカップを探していたりと、それなりにみんなちゃんと探した。
ソフィアが魔法学院内にある森の木登りをひと段落して降りようとすると真下で魔法を使わず真面目にビクトリアがカップを探しているところを目撃した。ソフィアは、持ち前の運動神経で5年生の多数がいる教会の屋根の上に行き、他の同学年の動きを見た。
5年生「わっ⁉︎汗」
5年生2「ソフィーちゃん?汗」
当然、ソフィアの予期しない行動に5年生の先輩たちは驚いた。そんなこと気にせずソフィアは同級生の行動を眺めていた。
ルーカス「とりゃあ♪」
先日、芋掘りをした草原ではルーカスが土魔法を使って土をひっくり返していた。ソフィアが厩舎の方を見るとアリス様が魔法を使えずつまらなそうにカップの中に紙がないか探していた。そうして、中庭に目をやるとカップが埋まっているようだった。それを見つけたソフィアはニヤッと笑って、教会の屋根から飛び降りたので、教会の屋根にいた先輩たちはまた驚きの声をあげてしまった。
ルーカスは、森の前に広がる原っぱに移動して土魔法を使って、楽しそうに土をひっくり返していた。
ソフィア「ルーカス君!」
そんなルーカスの側にソフィアが身軽にどこからかジャンプしてやって来た。
ルーカス「おっ、なんだ~い?」
ソフィア「みんなは、魔法を使えないようだけど、この実習はルーカス君が有利みたいだよ~」
ルーカス「お~!」
ソフィア「そのまま、魔法学院の中も探すといいよ」
そう言いながらウィンクをしたソフィアは、魔法学院内に入って行った。ルーカスは、ソフィアの助言にひっくり返った土から出てきたカップには目もくれず魔法学院内に行った。
魔法学院内で、土が見えるのは、厩舎と中庭だけだ。厩舎には、アリス様がいたが立ち上がった彼女の手には何も持っていなかった。おそらく厩舎の土をひっくり返しても何もないだろう。ルーカスは、中庭に向かって走った。中庭には、側の渡り廊下で柱を探していたり、花壇の周りを探している4年生が数人いた。ルーカスは、中庭の中心に向かってレイピアを振り下ろした。トボトボと中庭に来たアリス様はルーカスの様子に勘づき同じく様子に気づいて中庭に来ようとした他の4年生が入って来れないように国行を振って氷魔法で閉じ込めた。花壇の側に来ていたシャーロット様は、ひっくり返った土から現れたカップのもとに行こうとしたがソフィアが前に立ち塞がった。
アリス様が慌てて中庭の中に顔を向けるとルーカスがカップから紙を出した瞬間だった。剣が落ちる音がしてアリス様はルーカスの後ろを見る。ルーカスの側にソフィアがいて、シャーロット様の手からハンティングソードを地面に落としたようだった。アリス様は、ルーカスを助けたソフィアを凍らしたいと思ってしまった。
ソフィアの助けのおかげで、ルーカスは、カップの中から紙を見つけて、その紙をウィリアム校長に手渡すことが出来た。4年生全員も中庭に集合し、名前を呼ばれた5年生の2人は歓喜の声をあげた。ソフィアは、本心から協力したいと思い、そして適性を考えて、ルーカスを助けただけだった。そんなソフィアに「ありがとう!」と言ってルーカスはソフィアとハイタッチをした。
実習が終わり、4年生も5年生も散らばって行った。その中で、小さな背中に向かってシャーロット様はレイピアを振って水魔法を放った。しかし、水魔法はソフィアに当たることなく凍って地面に落ちて砕けた。
アリス「ソフィアを倒すのは私だ。」
何故か嫌いなアリス様は、ソフィアを助けるのでシャーロット様のイライラは収まることなく増すのだった。後ろの様子など知らないソフィアは、5年生の先輩たちに可愛がられていた。
「魔法学校対抗戦」のメンバーは、優秀者2組4人と4年生が実習で紙を引いた2人の計3組6人なのだが、4年生はソフィア・アリス様・ビクトリアの3人は決まっているのだが、他のみんなも頑張っているので来年は数百年ぶりに校長であるウィリアム校長自ら残り3人をカップからランダムになった紙を3枚、引く予定だ。




