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少女黙示録  作者: 狩川藍
01『優しいだけの非情な少女の日常は崩れる。残念なことに』
8/43

『放何故崩無は朝から不幸』

008

5時10分。この5時10分は朝の5時10分である。と言うことは今日が私、放何故崩無が冤罪を被って怒られる日兼私の誕生日である。

朝は大分弱いのだが、何故か起きてしまった。

寝ぼけてながら思い出せたのは先ほど述べたことである。

誕生日…。なのだがもう両親共々家を出て行ったのだろう。

4時半出勤なのでもう出て行かないとまずいと言うのは当たり前だが。

朝食を食べに急ぎで一階へ降りる。崩無の部屋は、二階奥。

この時馬鹿な私は勘違いをしている。今7時で遅刻だと思っている。時計を見たから余計だ。時計の針がブレブレだ。呆れるよ。今考えれば。

3人家族にしたら小さな冷蔵庫を開ける。昨日(今日かも知れない)親が買ってきたと思うセブンイレブンのラーメンサラダとメモが添えてあった。

昨日の夕ご飯、台湾拉麺だったのにまた拉麺紛いのものを食べなくちゃいけ無いのか。そしてこれピリ辛のやつじゃん。台湾拉麺はもっと辛いけど。属性被りもいいところだ。まぁいいか。美味しいし。二回連続ならば好きなうち。何千回、何万回連続なら度を越していて、寧ろ狂気だが。

あと、メモには「今日は帰りが遅くなるので、会社に泊まります。明日には帰ってきます。朝食はこのラーメンサラダです。後はなんとかして下さい。」と書かれていた。

最も、走り書きなのでもっと汚く、この文章を完璧に解読するのに数十秒かかった。より正確なら11秒程。

娘なのにね。

それ程汚いのだ。走り書きだから汚いのではない。

どれ程汚いのかと言うと真剣に書いて字の綺麗な人間が書く汚い文字程度の出来映えである。

その字の綺麗な人と言うのは父だが。習字とか習った事ないのに習字で賞を取っている。

凄い腕前だ。

ともあれ、私の字の程はやや母寄りの字である。

要するに汚いのだ。微妙に。

遺伝子が中和とは言わないがほぼ中和している。

少し脱線してしまったが。

この文章を見る限りはあの両親は(主に母だが)私の誕生日が今日なんてことは忘却の彼方なのだろう。

それは別に気にしていない。たかだか誕生日だ。生まれだけである。正直なところ生まれた日よりも死んだ日に祝って欲しいと思っている。今まで良く頑張って生きてくれました的な?あのモンテスキューの「人間は死を嘆くのではなく誕生を嘆くべきだろう」という名言に基づいた考え方であるけど、まぁいい。

だが、ほぼ毎年毎年忘れられるのは悲しいものだ。今年は流石に祝って欲しかったね。

だって今回の誕生日は私の18歳の誕生日だよ?成人式やってからが大人かもしれんけど、1人娘が大人になった日だよ?今年やってくれたなら今までのはチャラになってもいいくらいだったのに。

18年、今年含めて18回誕生日やる機会があったけどそのうち両親…いや、どちらか片方だけでもいいけど祝ってもらった回数は今数えておそらく8回かな。

1歳2歳3歳5歳7歳の時は両親揃ってだ。1歳2歳以外は七五三の年だったからだ。それは少しは関係あるかもしれないけど七五三の年の誕生日近くになると「七五三だねぇ〜。家族揃って崩無ちゃんを祝ってあげましょうよぉ〜。」と祖母が言ってくれたお陰であると思う。

祖母がいなかったなら、恐らく片方だけしか祝ってくれなかっただろう。

最悪。違う。一番可能性大なのは忘れていたと思う。

こんな推測出来る時点で最低な親であるが、娘の誕生日よりも仕事が大切らしい。

私の両親は好きなことを仕事をしている。そこら辺の行動というか進路は尊敬をしている。

だが、その好印象も払拭されるくらいのことをしている。

私が多分4歳の頃かなぁ。母は「おめでとう」と言ってお金を渡して「好きなもの買ってきなぁ」と言った。普通に考えていいくらいの額を渡されたとは思うが4歳の子供の誕生日にすることではない。愛が足りないと思う。

仕事が好き過ぎる。

私も余り「もうすぐ自分の誕生日」だと言うことを主張しなかったというのも悪いとは無理に反省するならそう感じる。

そもそも愛情表現が下手なのだろうか。この母親は。

6歳の頃は父親だった。

新幹線で大阪にいって一日中一緒にUSJ(地元ではユニバと略さと言う)で遊んだ。こういう家庭では大体父親は仕事だから休めないと言うのだろうが、普通に休んだ。「お前の誕生日だからな。あんま遊んでやってないから遊んでやろうと思ってな。」と言って。

いい父親なのだろうなと思った。母と比べて。分からないが。

まぁ。18歳になった私はこのような両親に10年ぶりに誕生日を祝ってもらえるかなとか期待したのだが(殆ど期待なんてしていないけど)それも空しく、冷蔵庫の中身は今日の朝食であろうラーメンサラダと置き手紙みたいなメモと調味料しか見当たらない。

祝いの言葉も、誕生日ケーキの一つすら冷蔵庫にはない。

空っぽ。物理的に、精神的に。

そういうことをする両親の遺伝子が私の中にある。

思ってしまうとなんだか嫌悪感が凄かった。

だから本物でなくとも、偽物で本物は冷たい優しさを他人にしているのだろうか?分からない。

だが、この時の私は遅刻寸前だと思っているので空しくも、嫌悪感も何もない。

ただただ焦りが頭の内部を支配している。

その焦りに身を任せ、ラーメンサラダを強引に開ける。

開けるというよりかは、蓋を破壊した。

タレを開けようとしたのが、これが物凄く滑る。

苛ついて無理に開けたので床に結構飛び散った。盛大に焦っていたのから飛び散った訳ではない。冷静だったなら最もも、飛び散る量は減らすことが出来ただろうが。

なんせ彼女は崩無だ。皆さんも数々の不幸をこの少しの間だが、どれ程だったか見てきたのだろう。見てきたという日本語の表記は小説ならば少し違和感だが正しいのだけれど。

普通の人がそれで回避出来たであろう事象を彼女は見事に不幸にする。

同情する殆ど可哀想に。

でも彼女はそんなこと気にする余裕は無いと思っている。

直ぐ近くにある週間少年ジャンプ(マガジンかも)でタレを拭く。杜撰ではあるが。

後で父に怒られること承知しながら。

ティッシュとか雑巾とかで拭きたかった。

そして(そんな余裕ないから)豪快に麺を啜る。早い、早い。

香川県民顔負けレベルの吸引力だ。

「ゴホッゴホッ…。ゴンゴン。」

ここで息詰まりと咳を繰り出しタイムロスをしてしまう彼女。

麺類の早食いは喉を詰まらせやすい。

早食い自体良くないのだけれど。

そうなんだけれどその教訓とも言えるけれど当たり前のことに反して4分足らずで食べ干す。

食べ干した容器をほっぽり出し制服の着替えを急ぐ。

ほっぽり出したせいで残っていたタレが床へと流れ出、水溜まりを生成する。

これでジャンプで拭いたことが意味をなさなくなった。それよりもっと大きなものである。流石に拭くのも面倒になり、

気にするのを辞めた。

諦めて二階へ駆け足で上がっていく。

手際が圧倒的に悪い。それは仕方がないだろう。朝は寝ぼけている奴と焦っている奴が大半だから(両方兼ね備えているけど)その辺は許して欲しい。

思いっきり扉を開け、クローゼットも壊れるかと思われるギリギリのラインぐらいの勢いで開ける。

冷静でなくとも通常状態で見れば制服が真ん中辺りに掛かっていことは分かる。この時は適当に場当たり的に右から順々に服を後方へと放り投げ見つけていった。

20秒程で見つかったが矢張りコストパフォーマンスが悪い。部屋が必要以上に散らかった。まるで駄目人間の部屋に匹敵する空間になってしまった。片付けが大変である。

まぁそんなことは帰ってからやる。

今はやばい(と思っている)のだ。

着替えもスピーディーに行う。

ボタンが一つ違いになってようが、皺になってようが今はどうでもいい。

その精神のおかげで男子の着替えスピードに肩を並べる時間で済んだのはでかい(と思っている)。

出来映えは決して良いものではなく、正気ならばまず女子は外に出られない程に杜撰。

部屋着でもこんなんにし無いというくらいぐちゃぐちゃ。

でも今の崩無は正気なんてものではないから大丈夫だ。(元々正気ではないけれども)

焦って何も見えてない。

焦って何も見えてない。いや、それは言い過ぎであるけど、自分が遅刻する未来とかは見えてるんじゃないかな。

そんな未来存在しないのに。

学校開始時刻3時間前は早い。

それで遅刻、遅刻と言い放っているのだから滑稽としか言いようがない。

着替え終わったにしてみれば雑だが直ぐ様部屋から出て、階段を猛スピードで下る。

二段飛ばしで下ったのが良くなかったのだろう。

3歩目で階段を踏み外し、豪快にすっ転んだ。

頭部が階段にぶつかるか手前かだった。当然足には擦り傷とか痣とかが出来てしまった。

「痛い」

そう口にする。無感情な口調で。でも痛いものは耐え難い。

朝にここまで命懸けになってどうするんだと思う。

でも実際これが彼女の日常。

階段で何回踏み外したことか…。一番酷くて骨折、全治2ヶ月病院である。左足と右腕の間を骨折した。

そう考えると(前例が酷いからか)相対的に見てマシで、不幸中の幸いに思えた。

いや、痛みに感傷している場合ではない(とそう思っている。これについては確証はない。)

でもそれでも少し痛いので、数十秒間感傷してから立ち上がる。走るにしてはぎこちなく、足を引きずり走る。

食後に転倒したので身体の中が掻き回された感があり、吐き気がする。

「ゲッ」

と不可抗力のゲップを繰り出す。生理現象。汚いかもしれないが、故意ではない。美少女のゲップであるから許してくれ。1人だから関係ないか。

要らないことを考えるな。

急いで家から出る。

戸締まりの為、家の扉の鍵穴に鍵をガチャガチャと何回か外すのだが、なんとか刺して、閉める。

二つ目の鍵穴も同様に。

閉め終わった途端に、完全に閉められたのかも確認せず、駅の方向へと全力疾走。

名鉄東枇杷島駅を定期で通る。

発車のベルが聞こえる。

あっ。詰んだ。

と予想通り。列車は崩無が着いたと同時に扉が閉まった。

つくづく付いてい無い女である。

はぁ。と溜息をついて、ベンチに座る。それくらいしかしようがない。後はあれか自分の人生について絶望ですかね?

冗談じゃない。

取り敢えずスマホで時刻を確認しようと思い開ける。

5時38分。

あれ?結構早いぞ。

私が焦った必要性あったかなぁ?うん。分かってる。ない。

勘違い。焦りは禁物。

そんな言葉が似つかわしい朝の出来事である。





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