『放何故崩無は車の中』
002
揺れている。
小刻みに、たまに大きく、でも殆ど小刻みに。
しかし、地震ではない。初期微動でこれから主要動がくるわけではないのだ。
「ゴー」と言う音。
聞き覚えがある。
この揺れている感じも覚えがある。
嗚呼。なんだっけ。
………。
あっ。そうか、自動車の走行音とエンジン音か。それに気付くのにだいぶ時間を要した。
頭が回っていないのだろうか。
だからボーっとして目の前にある自動車の天井があるのを見逃しに分からなかったのだ。目覚めの悪い朝のようだ。逆にスッキリしている猛者はいないか。それほどに頭が回っていない。
いや、そうではない。目の焦点が長時間合わなかったのだ。
そうならば感覚と聴覚で自分はどこにいるのかを判断せざるを得なかった。
しかし、可笑しい。普通なら戸惑うだろう。
自分が意図的に自動車に入った記憶などない。
私にあるのは言言言に刺されたことしか……。
あっ。
一番最初に思っても良かった。
なんで私は死んでいないのだろう。
可笑しい。いま心臓を動かしているのが不自然に思える。
あの痛みは夢だったのだろうか。いいや、そんな訳がない。
あの感触は本物だ。動揺は殆どしていないが戸惑ってもいいんじゃないか?そう思っているのに動揺も戸惑いもしていない自分が怖い。いつも通りか。
嗚呼。分からない。ほっぺでもつねってみようかな?(笑)
まぁいいさ。
そう思ってあまり仰向けのままでいたくなかったから、いやぁ何故なら仰向けだとちょっと吐き気がするからね。だから私は身体を起こすのだ。いや、全てを起こす前に
「ああっ。痛いっ。(棒読み)」
と、激痛がはしり、また仰向けになる。
戻したところで激痛が戻るかと言われれば戻らないが反射的にそうなった。
痛いのは当たり前である。
90mから落下し、人に腹部を刺されたのだから当然だ。
それを覚えていたのに忘れたかのように身体を起こしてしまった。
アホだ。自業自得だ。
いや、でもここで阿鼻叫喚をしていてもなんらおかしくはないけど私は至って冷静だ。人間が引くくらいに。
「あー起きたかい」
女の声だ。ハスキーな声だ。大人っぽくクールな声である。
先程まで誰かと通話していたみたいで切った時の音が聞こえた。誰とだろう。
声が聞こえた時予想もしていなかったのでドキッとした。
まぁドキッとしたのはおかしな話だ。
ここは車内である。
運転手がいなくてどうする。
自動運転ならそれは不気味であるが。
いくら私が後部座席を倒して作られたスペースによこたわっているからと言って察せない訳がない。
先程まで回っていなかった頭もだいぶ回るようになってきた。
だから反射的に聞いた。
「貴方誰ですか?」
そう聞いた。直球である。
無神経。躊躇せず。
でもこれが普通じゃあないか。
そしたらその女は
「は、はっはっ、はははははは」
と、豪快に笑った。
心なしか自動車の瞬間の速さが速くなった気がする。
「はぁ。聞き方に配慮が無いよねぇ。いいよ、いいよ。教えてあげますよー。」
愉快快活な口調である。
ハスキーボイスとその口調は相反する。所謂ギャップが凄い。そう思った。思っただけで違和感を感じるまでに引っかかっていない。気に留めるまでもない。
「自分は株式会社中京円死光研究研究員兼円死光調査課課長と言うちょっと長い肩書を持つ這入込乃々程缶ですよー。貴女の命の恩人ですよ〜。」
なんか文末を伸ばす癖があるらしい。どうでも良いけど。まぁそう名乗ってくれた。
勿論その這入込乃々程缶と言う名前に覚えは全くと言って良いほど無い。言われていたなら覚えているだろう。こんなにも特徴的な名前なのだから。
株式会社中京円死光研究……。どっかで聞いたことあると思うけど……思い出せない。
と、言うか命を救われたのか、この人に。しかし、研究員と言っていたなぁ。比愛病先生じゃなくて、鬱愛利医紗ちゃんも研究員と言っていた。二度研究員に命を救われている。
………………。
どんな人生だ。
惨めにも、不幸的にも思えるが『二分の一』だから四捨五入で感じない。
そう適当に思考を巡らせていると、バックミラーで私を見ながらに
「あんまりピンっときていないかぁ。結構有名だと思ったんだけどー。嗚呼。嗚呼。略称の中京円研の方が出回ったんじゃ無い?株式会社中京円死光研究なんて長ったらしい正式名称に比べてば知名度あるんじゃ無い。知らんかったらごめんだけど〜」
中京円研。
それなら知っている。
知っているだけだ。
ニュースやネットで右から左に流しているので詳細は知らない。名前だけくらいしか知らない。
それと似たような国の機関もあった気がするが。
円死光研究庁とか円死光調査省?だっけ?
あまり記憶にない。
これもまた読み流し聞き流ししているので分からない。
「あれ?これでもピンっ!!ときてないようだね〜」
前言から間が空いたからそう言ったのだろう。
うん。正解ではあるが。
あまりピンとはきていない。
詳細が分からない。
「よし。ちゃんとこの程缶さんが懇切丁寧に一部始終を教えて差し上げましょーう」
やや五月蝿い人みたいな声の張りで言う。
気分上々なのだろうか。
だとしたらそのせいで運転が荒くなっているなら直様止めるべきだと思う。
ガタンと揺れて痛みが広がっている気がする。
まぁいい。
いちいち訴えるなんてしたら話が進まないだろう。そう判断し、言わずに
「お願いします」そう話を進めてもらおうと誘導するのだ。
それに対して程缶さん?(この呼び方でいいのかな?まぁ良いか。以下これで。)は、
「OK。任されたぁ。」
と言うものだから以前の、とは言ってもこの日中の利医紗ちゃんとの会話を思い出させる返である。
いや、あの時あの人は「お願いされたわ」と言ったのだっけか。
研究員はそんな感じな人が多いのだろうか?とも思わされた。考えなくても戯言でしかない。
程缶さんはなんか「んーとねぇ」と唸っている。
多分話すことをまとめているのだろう。
別に「OK」ではなかったのではないのかと思った。
面白かったならブックマーク、評価お願いします




